8 仲間
「仲間? ぬるいな。お前、そんなものが欲しかったのか」
「……そうだ」
ゼルスが小さく息をついた。
「自分で思っているより、俺は仲間というものを強く欲していたらしい。それに気づいたんだ」
だから、もう『銀水車』には戻らない――。
「……くだらん」
ラシッドが忌々しげにつぶやいた。
「お前のその温い感傷を断ち切ってやろう」
と、右手を掲げた。
「【ブラストボール】」
そこに黒い魔力球が生まれる。
だが、その攻撃はゼルスに向けられたものではなく――、
「そら」
ティルトの王城へと放たれる!
「馬鹿な!?」
ゼルスは思わず叫んだ。
ティルト王城に向けて攻撃魔法を放つなど正気とは思えない。
王族や貴族などにどれだけの被害が出るか……。
もちろん、王城には強力な魔法結界が張られているが、ラシッドの一撃はその結界すら突き破りそうなほどの魔力量である。
「や、やめろ……っ!」
ゼルスは思わず叫んでいた。
組織にいたころの自分なら、なんとも思わなかったかもしれない。
しょせんは他人事だと……戦いに巻き込まれて死ぬ者など、ただの弱者だと斬り捨てたかもしれない。
だけど、今は違う。
今は――もう。
「だ、誰か、そいつを止め――」
ばしゅんっ……!
まるでゼルスの祈りが通じたかのように。
黒い魔力球は王城に向かう途中――空中で消滅した。
「えっ……?」
ゼルスは呆然となる。
「なんだと……?」
ラシッドも同じく呆然としているようだ。
一体誰が――!?
驚いていると、ほどなくして。
かつ、かつ……という足音とともに、前方から誰かが歩いて来た。
「あれ? ゼルスじゃないか」
現れたのは――エリアルだった。