7 ゼルスVSラシッド
「なら、力ずくで屈服させる」
ラシッドの全身から魔力のオーラが立ち上る。
「っ……!」
さすがにすさまじい魔力量である。
宮廷魔術師クラスの数倍はあるだろうか。
「ついでに、今のお前の実力も見ておこうか。まあ、お前じゃ俺には勝てんが――」
互いに詠唱に入った。
そして、
「「【アイスブラスト】!」」
きんっ……!
二人の放った氷系呪文は互いの中間地点でぶつかり合い、砕け散った。
「……ほう。この俺と同等の攻撃魔法を放つとは」
ラシッドが驚いた様子を見せた。
「お前の魔法は『上級』だったはずだが……進歩したようだな」
「ああ、今の俺は『最上級』の魔法を使える」
と、ゼルス。
「仲間が、俺を強くしてくれたんだ」
「仲間……ねぇ」
ラシッドが口の端を歪め、笑った。
「【アイスブラスト】」
ふたたび同じ魔法だ。
「くっ……!」
ゼルスも【アイスブラスト】で対抗する。
だが――、
ごうっ!
今度は押し切られた。
ゼルスの生み出した氷はことごとく砕かれ、ラシッドの氷が降り注ぐ。
「うううっ……」
とっさに防御魔法の【アイスシールド】を発動するが、遅い。
右腕にいくつも氷の塊を受け、嫌な音を立ててへし折れた。
「少し威力を強めたぜ」
ラシッドがニヤリと笑う。
「同じ『最上級』魔法でも、使い手の魔力量に応じて威力は異なる。ま、攻撃魔法の基本だが――俺の魔力量はお前の数倍はあるからな」
「ぐっ、ぅぅぅ……」
ゼルスは折れた右腕を治癒魔法で治しながら後退する。
痛みで上手く集中できず、なかなか治癒が進まない。
「言っただろ。お前は俺には勝てない、って」
ラシッドが言った。
「もう一度だけ聞くぜ? 組織に戻ってくるか、ゼルス。戻ってくるなら許してやる」
「断る……」
ゼルスはラシッドをにらんだ。
恐怖はあったが、それでも譲れない一線がある。
「俺の居場所は――『希望の盾』だけだ」
「何がそんなにいいんだ? 俺には理解できないな」
「『希望の盾』の連中は……俺を仲間だと認めてくれている」