5 再会
SIDE ゼルス
『希望の盾』の仕事を早退したゼルスは、ひと気のない路地裏である人物と会っていた。
「久しぶりだな、ゼルス。すっかり役人になっちまって」
ニヤリと笑った青年は、ゼルスより三つほど年上だ。
糸のように細い目に精悍な顔つき。
「役人とは少し違うけどな、ラシッド」
ゼルスは彼……ラシッドを軽くにらんだ。
緊張感はすでに最大限にまで高まっていた。
相手は、かつて自分が所属した組織の一員。
そこで最強と呼ばれていた魔術師なのだ。
彼がその気になれば、次の瞬間にもゼルスは無数の肉片にされてしまうだろう。
「おいおい、表情硬いねぇ~。再会を喜ぼうぜ? な?」
「俺はお前のような楽天家じゃないんだ、ラシッド」
ゼルスは表情を崩さない。
「お、いいね。組織にいたころの口調に戻ってるじゃねーか」
ラシッドは嬉しそうな顔をした。
「なんの用だ、ラシッド」
ばちっ、ばちぃっ。
ゼルスの全身からスパークが弾けた。
半ば無意識に高めた魔力が、放電しているのだ。
「だから、殺気立つなって。俺に戦う意思はねーよ」
「俺にもない」
ゼルスはふんと鼻を鳴らす。
「お前が本当に戦闘の意志を持たないなら、だけどな」
「疑い深いねぇ~。そういうところも懐かしいぜ」
ラシッドが目を細める。
「じゃあ、単刀直入に条件を言おうか。実はな、我らが魔術結社『銀水車』の頭領が――」
「組織に戻ってきてほしいだと? この俺に――」
ゼルスはラシッドからの話を聞き、驚いて彼を見つめた。
「そういうこと。ちっと大きな仕事が舞い込むらしくてな。戦力が足りねーのよ」
「戦力……ということは、戦いになるわけだ」
「だな。組織ナンバーワンの俺とナンバーツーのお前、二人そろえば無敵だぜ?」
「『元』ナンバーツーだ。今の俺は組織から足を洗っている」
「洗えるわけねーだろ」
ラシッドの表情が険しくなった。
「一度でもこっちの世界に身を置いたら、もう戻れねーんだよ。お前だって分かってんだろうが」