2 引き続き、騎士団と魔法師団を強化する
「ラシーヌは【下段斬り】を、アニィは【稲妻突き】、イーファは【双剣乱舞】をそれぞれ最上級ランクまで成長させたよ」
俺は三人に言った。
もとはいずれも中級だったスキルである。
全員が自分の得意スキルを2ランクアップしているから、以前よりも格段に強くなったはずだ。
「すごーい!」
「あたしのスキルが……! ありがとうございます、エリアル様!」
「エリアル様、最高です!」
三人が口々に感謝の言葉を言った。
「お役に立てたなら何よりだ」
俺はにっこりと笑った。
「お役に立つも何も……」
「以前にエリアル様が騎士団や魔法師団の人たちのスキルを鍛えてから、隣国から仕掛けてきたり、国境付近での小競り合いも激減しているそうです」
「きっとエリアル様の御威光です」
三人娘は妙に俺を持ち上げるなぁ……。
まあ、喜んでもらえて何よりだ。
「あたしたちも何かお返しできるものがあれば、ぜひ!」
「『希望の盾』であたしたちにもお手伝いできることがあったら言ってくださいね!」
「そうだ、今度一緒に飲み会でも……うちの団の若い子たちと一緒にどうですか?」
「あ、それいいかも。エリアル様って独身?」
「ねえねえ」
「ねえねえ」
うわ、いきなりグイグイ来られてるんだけど――。
――結局。
妙に押しの強い三人娘に、なぜか飲み会の約束を取り付けられてしまった。
なんでも、騎士団の女性陣に俺のことがひそかに話題なんだとか。
『希望の盾』での戦いぶりとか、スキル鑑定のこととか、俺の評判はじわじわと広がっているらしい。
そういうことを全然意識してなかったから、本当に意外だった。
考えてみれば、けっこう目立つことをしてるんだよな、俺……。
その後も、同じような調子で次々に騎士や魔術師のスキルを最上級まで成長させていった。
午前中でちょうど150人に対応し、いったん昼休憩に入った。
と、
「おつかれさまでーす、エリアル」
ラムが紅茶や軽食を載せたトレイを運んできた。
「少し休憩したらどうですか?」
「ありがとう、ラム。いただくよ」
「えへへ」
ぴたり、と彼女が俺に寄り添う。
この間、別れ際にされたキスのことを思い出し、頬が熱くなった。
あれは――ラムにとって、どういう意味合いなんだろう?
正面切って聞くのは恥ずかしいし、彼女の方もあれから何も言ってこない。
「あ……」
ちょうど目が合い、俺たちは同時に視線を逸らした。
うう、恥ずかしい……。