7 強力スキルを得て、俺は強くなっていく
王の名を冠したゴブリン――上級モンスター『ゴブリンロード』。
通常のゴブリンが身長1メートル程度なのに比べ、そいつは優に3メートルはある。
緑色の肌は筋骨隆々としており、きらびやかなローブをまとっているのが、ゴブリンらしからぬ豪華な雰囲気だ。
「我が臣民を……よくも……」
ゴブリンロードが俺たちをにらんだ。
「かなり怒ってるみたいだ……」
「激おこですね……」
「まあ、奴の配下を全滅させちゃったから当たり前か」
「ですです」
などと俺たちが話していると、ゴブリンロードが両手を掲げた。
「スキル発動――【王の領域】」
「っ!?」
奴がスキルを使ったとたん、急に体が重くなった。
これじゃ素早く動くことはできそうにない。
「なんだ、このスキル――」
「【ファイアアロー】!」
驚く俺の隣で、間髪入れずにフレアが炎の矢を放つ。
おお、いい反応だぞ、妹よ。
さすがに戦闘訓練を受けているだけあって、俺よりもずっと反応が早い。
放たれた100の炎の矢は、
ばしゅっ……。
しかし、ゴブリンロードに届く前に消えてしまった。
「なんだ……!?」
防御系のスキルを使ったのか?
いや、そんな形跡はなかった。
まるで、炎の矢が勝手に消滅したような――。
その後、フレアは【ファイアアロー】を立て続けに発動したが、結果はいずれも同じだった。
「無駄だ、無駄無駄……」
ゴブリンロードは余裕を見せているのか、その場で仁王立ちしたまま笑っている。
「駄目……何度やっても【ファイアアロー】が消えちゃう……はあ、はあ」
一方のフレアは荒い息をついていた。
魔法系のスキルは使えば使うほどに体力を消耗するのだ。
「では、こちらの攻撃の番だな……」
ゴブリンロードが大剣を抜いた。
「すぐに終わりにしてやる……」
「くっ……」
俺たちは身をすくませた。
逃げようにも体がどんどん重くなる。
まずい――。
「……待てよ」
ふと思いついたことがあった。
俺の【スキル鑑定・極】で学習&会得できるのは、何も味方のスキルだけじゃないはずだ。
ならば――。
「随分と便利なスキルを持ってるんだな、ゴブリンの王」
俺は奴に語り掛けた。
「何……?」
「俺も学ばせてもらうことにしたよ」
奴のスキル【王の領域】を学習し、会得する。
会得した瞬間、このスキルの情報が頭の中に流れ込んできた。
――――――――――
スキル名称:【王の領域・上級】
スキル効果:スキルが発動したとき、効果範囲内の敵の能力を大幅にダウンさせる。能力の対象は『身体能力』『魔力』『スキルの威力』など。
※効果範囲はスキルランクによって異なる。
――――――――――
なるほど――一種のデバフスキルということか。
さらにスキルポイントを使い、上級から最上級へと進化させる。
「今度はお前が食らう番だ――【王の領域・最上級】発動」
「ぐ、があっ!?」
ゴブリンロードがうめいた。
奴の【王の領域・上級】は俺の【王の領域・最上級】によって打ち消されたらしい。
「あっ、体が軽くなりました!」
フレアが叫ぶ。
「じゃあ、終わりだ――【ファイアアロー】!」
俺はとどめのスキルを放つ。
今度は威力が消滅することなく――。
100の炎の矢がゴブリンの王を焼き尽くした。
メモ:エリアルの残りスキルポイント:9000