6 討伐クエスト
翌日。
「よし、次は討伐クエストに挑戦するぞ」
俺はフレアに言った。
すでに彼女の【ファイアアロー】は学習済みだ。
さらにスキルポイント3000消費で、フレアと同じく『最上級』にスキルランクを上げている。
この【ファイアアロー】は対多数の局面で、特に力を発揮するスキルである。
というわけで、強力なモンスター一体を討伐にするのではなく、そこそこの強さのモンスターを多く討伐する仕事を選んできた。
「ゴブリン50体討伐……?」
「ああ、けっこう難度が高めのクエストだけど、達成すれば報酬も大きいし、冒険者ランクの昇級点も多くもらえる」
「しょうきゅうてん……?」
フレアがハテナ顔になった。
「冒険者にランクがあるのは知ってるよな?」
「はい、私もお兄様も最底辺のFですよね?」
「ああ。で、そのランクを上げるためには、ギルドの仕事を達成して実績を得る必要がある。具体的には仕事を達成するたびに『昇級点』っていうのがもらえて、この点数が一定期間内に基準を超えたらランクアップするんだ」
説明する俺。
全部、さっき受付嬢から聞いてきた説明のそっくり受け売りだ。
「なるほど。じゃあ、今回のクエストを達成していっぱい昇級点をもらって、二人でランクアップに向けて突き進むわけですねっ」
「そういうこと」
「ランクアップするとどうなるんです?」
「今までより報酬の高い高難度クエストを受けられるようになる。あと、ランクが上がると、なんか格好いいだろ」
「ですね!」
俺たちはにっこりとうなずきあう。
この息の合いようは、やっぱり兄妹だ。
血のつながりがなくても、一緒に過ごしてきた時間が――俺たちを兄妹として育んでくれている。
俺はしみじみとした気分になったのだった。
さっそくゴブリン討伐に向かった。
場所は山間の洞窟である。
「情報によると、あの辺がゴブリンの巣だ」
前方の洞窟を指さす俺。
「何か作戦はありますか?」
「ある。必勝のやつだ」
「必勝……」
「俺とお前で同時に【ファイアアロー】をあの中に打ちこむんだ。逃げられないから、ゴブリンは壊滅的なダメージを受ける」
「おお、すごい……!」
ここでまとめて倒しておかないと近隣の村や町に大きな被害が出ることもあるからな。
心を鬼にして全滅させる――。
「いくぞ、フレア!」
「了解です!」
俺たちは同時に【ファイアアロー】を発動した。
矢の総数はおよそ200。
それをすべて洞窟内に撃ちこむ。
大爆発が起きた。
洞窟はかろうじて崩れなかったみたいだけど、中にいたゴブリンたちは全滅だろう。
「よし、熱が収まったら様子を見に行こう」
俺はフレアに言った。
討ち漏らしがないか、確認しなきゃいけないからな。
と、
るおおおお……んっ。
うなり声とともに、洞窟内から何かが出てきた。
「あれは――?」
生き残りがいたのか?
いや、ちょっと様子が違う――。
「お、お兄様、あれゴブリンじゃないのでは……!?」
フレアの声が震えている。
「――いや、ゴブリンだ」
ただし通常種じゃない。
上位種……それも最上位の個体。
「ゴブリンたちの王――ゴブリンロード」
討伐クエストにこんな奴の情報はなかった。
たぶん、情報漏れだったんだろう。
ゴブリンはFランクモンスターだけど、ゴブリンロードはBランク……本来なら一流冒険者じゃないと戦えないレベルの相手だ。
「お兄様……」
「ちょっとハードな敵が現れたみたいだけど、関係ない」
震えるフレアに俺は言った。
俺たちで叩きのめしてやる――!