8 完全勝利への道1
「エリアル殿、サイドス将軍がお呼びです」
食事を終え、小休止に入ってから二時間ほど、一人の兵士が呼びに来た。
「俺を?」
「ぜひ相談したいことがある、と」
「分かった。すぐに行く」
「こちらです」
俺はサイドスの元に案内された。
「エリアル・ウィンド、参りました」
「よく来てくれた」
サイドスが俺の元に歩み寄る。
そこには数人の騎士や魔術師がいた。
この部隊の騎士や魔法使いの隊長クラスが集まっているようだ。
そして、彼らを束ねるのがサイドス将軍というわけである。
「彼がゾナームを実質的に単身で撃退したエリアル・ウィンドだ。その力は報告にあった通り」
「こんなに若いのか……」
「何か、素人のような雰囲気があるが……」
と、彼らは一様に困惑した様子だ。
「だが、いい面構えをしている」
サイドスがフォローしてくれた。
「……いや、私の命令を待たずに独断で行動したことをよしとしているわけではない。ただ、彼の資質は高く評価されるべきものだ、と考える」
「本当にそんな資質があるのですか、将軍」
「私は報告を信じる。彼を実際に見て、その気持ちは高まった」
と、サイドス。
「彼には、内に秘めたものを感じるよ」
「むう……」
将軍の言葉に隊長たちがうなった。
まだ俺を疑うような雰囲気が完全に消えたわけじゃないけど、とりあえず俺を認めようという空気に変わった気がする。
「では、本題に入ろうか」
サイドスが切り出した。
「斥候からの報告によれば、ゾナームの陣に動きが見えるとのこと。おそらく遠からず決戦を仕掛けてくるだろう」
「決戦を――」
息を飲む俺。
「ということは、君の力を知ったうえで、なお勝算があるということかもしれない」
サイドスが言って、小さく笑う。
「あるいは君の力を過小評価して力押ししてくるか……どちらにせよ、我々にとってここが正念場となる」
「もう一度、俺が撃退します」
俺はまっすぐにサイドスを見つめた。
「具体的な戦術はあるのか?」
「高火力広範囲系の魔法スキルを連打して、相手を近づけさせません」
まあ、要するに力押しだ。
「君の戦いぶりについては報告を受けているからな。確かに力押し一辺倒が最善手かもしれん」
サイドスがうなった。
「相手が搦め手で来たときの備えは私の方でやる。君はまず最大火力の魔法攻撃を連発してもらえるか。攻撃開始のタイミングについては私の方で指示させてもらいたい」
「了解しました」
その後、細かい打ち合わせをいくつかして、俺は解放された。
そして、いよいよ決戦が近づく――。