6 小休止
……が、その笑顔も一瞬のこと。
「話はそれだけだ、エリアル殿。では失礼する」
すぐにサイドスは厳めしい顔つきに変わり、去っていく。
「なーんか、嫌な感じですよね~」
ラムが怒ったような顔で言った。
「エリアル大活躍だったのに」
どうやらサイドスの笑顔を見たのは、俺だけだったらしい。
彼も立場上、俺を表立って褒めるわけにはいかない……ということなんだろう。
ただ、最後の言葉……『多くの兵の命が救われたことへの感謝』こそが、将軍の本音なんだということも、十分に察することができた。
「はは、将軍には将軍の立場があるんだよ」
だから、俺はサイドスのフォローをしておいた。
「優しいんですね」
「いや、将軍の言うことは正論だし。ただ俺たちには俺たちの理があって行動した。それも事実だよ。結果的に勝利できたわけだし」
俺は小さく肩をすくめる。
「それぞれに言い分があって、お互いの意見をすり合わせた――今のはそういうことだ」
「あたしには嫌味を言われたようにしか感じられないでーす」
ラムが口を尖らせた。
それから微笑み、
「でも、エリアルが気にしてないならよかった。あたしも、これ以上言うのはやめますね」
「ああ。今は勝利の喜びに浸ろう」
「さんせーい」
こうして、戦闘はティルト軍の大勝利に終わった。
とはいえ、これは緒戦。
敵国がこのまま本国まで引き上げるのか、それともふたたび攻めてくるのか、それは分からない。
俺は戦場にとどまることにした。
ラムやゼルス、ランバート、シャーリーも一緒だ。
俺たちは集まって食事をとっていた。
スキルを連発したせいか、けっこう腹が減っている。
「とりあえず……おつかれさま、エリアル~」
「まあ、今回はすごかったと言っておこう」
ラムとゼルスが言った。
「いや、本当にすごかった。あんたの活躍……英雄クラスだろ」
「だね。私も血がたぎったぜ」
ランバートとシャーリーは興奮しているようだ。
「はは、どうも」
一方の俺は何とも言えない気持ちだった。
彼らのような高揚感は、あまりない。
あるのは安堵感。
人を殺さずに済んだという安心だ。
そして同時に不安も感じている。
ゾナームがこのまま引き下がってくれればいいけど、もしまた攻めてきたとしたら――。
今度は殺さずに追い返せるだろうか?
今度こそ彼らを殺さなくてはいけないんだろうか。