2 初めての戦場
「フレア、お前はここに残るんだ」
「お兄様!」
「モンスター討伐と違って、相手は人間だ。習性通りに動くことが多いモンスターなら行動も読みやすいけど、人間相手だとそうはいかない。どんな作戦で来るかも分らないし、裏をかかれる危険だってある」
「それはお兄様が危険にさらされる可能性がある、ということでもあります」
フレアが俺を見据える。
分かっている。
俺の言っていることは詭弁だろう、と。
でも、とにかく俺は妹を危険な場所に置きたくないんだ。
モンスター討伐も危険ではあるけど、十分に対処できる範囲だ。
けど、戦場は段違いに危険度が高い……と思う。
「……分かった。じゃあ、フレアは王都の守りの力になってくれ」
俺はフレアの両肩をつかみ、じっと見つめた。
「守りの力……」
「そうすることで、俺もより安心して戦場にいける。俺が力を発揮するために、お前は待機するんだ。いいな?」
「でも……」
「必ず帰ってくると約束するよ。俺がお前との約束を破ったことがあったか?」
「……分かりました」
完全に納得がいった様子ではなかったが、フレアは小さくうなずいた。
俺はフレアや王様に別れを告げ、戦場に赴いた。
「エリアル、来たんですか?」
「エリアル……?」
戦場に到着し、本陣に行くとラムとゼルスがいた。
「俺も加勢に来たよ」
「……大丈夫なんですか? エリアルって戦場に来たことあるんです?」
「ない」
ラムの問いにきっぱり答える俺。
「素人は引っこんでいた方がいい」
ゼルスが言った。
「別に馬鹿にしているわけじゃない。君の強さは知っている。けどモンスター討伐と人間相手の戦争はまったく違う」
「二人は戦場を経験してるんだよな?」
「そうでーす」
「当然」
二人ともうなずいた。
「けど、君たちにだって初陣はあっただろ? 俺にとってそれが今なんだ」
俺は二人を見つめる。
「この国のために力になりたい。だから一緒に戦わせてくれ」
言ってから、周囲を見回す。
「戦闘はま始まってないのか?」
「いや、いったん休止中だ」
ゼルスが説明した。
「互いに魔法を撃ち合って、両軍とも魔術師が消耗した状態だからな。ある程度回復したら、また撃ち合いが始まる」
と、ゼルス。
「その後は歩兵や騎兵の突撃に移行すると思う」
「なるほど……俺はまだ魔力全開だから、ちょっと撃ってきてもいいか?」
「えっ」
「ほら、威嚇代わりに」
「いや、それは――」
ゼルスが戸惑っている。
「指揮官に相談してくるよ」
「お、おい、エリアル――」
「上手くいけば、相手を敗走させられる」
言って、俺は指揮官の元へ向かう。
そのとき、背後から爆発音が聞こえてきた。
「これは――」
もしかして、戦闘再開か――!?