12 さらなる強化の予感
「もうちょっと鑑定させてもらってもいいか、フレア?」
「えっ? あ、どうぞ」
フレアが俺に向き直り、目をつぶった。
「いや、別に目を閉じなくてもいいぞ」
しかも、ちょっとキス待ち顔みたいになっている。
「ふふ、どうぞ、お兄様」
フレアはまだ目を閉じたまま、唇を軽く突き出している。
「んー」
いや、だからなんでキス待ちみたいな顔するんだよ?
「とりあえず【鑑定】だ」
すると――、
――――――――――――
名前:フレア・ウィンド
年齢:15
所持スキル:【ファイアアロー・最上級】【集音・下級】【駆け足・中級】【耐久アップ・下級】【集中・下級】【ファイアボール・下級】
取得予定スキル:【ファイアシールド】【回復】【フェニックス召喚】
進化予定スキル:【フェニックスアロー】
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「これは――!」
以前とは表記が変わっている。
今までなら所持しているスキルしか見えなかったのに、今は『取得予定』や『進化予定』というスキルが表示されていた。
さっきの『光の玉』の方は見えない。
もしかしたら、『所持スキルを見る』スキル効果と『取得予定スキルを見る』スキル効果がこのテキストメッセージ内に集約され、さらに『進化予定スキルを見る』効果まで加わったんだろうか?
だとすれば、俺のスキル効果は明らかに成長している――。
「進化予定スキルっていうのは、なんだろう? 取得予定スキルとは分かれて表示されてるな……」
俺は何気なく【フェニックスアロー】と書かれた部分に触れてみた。
すると、
ぴろりん♪
音が鳴って表示が変化する。
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【フェニックスアロー】進化条件:『最上級』まで進化させた【ファイアアロー】【フェニックス召喚】を取得していること。
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スキル名に触れると、その詳しい説明が出るのか?
うわ、今まで気づかなかった。
いや、あるいは俺のスキルが進化して、そういう能力が加わったのか?
どちらにせよ、今までよりも使いやすくなったのは確かだ。
「お兄様、んー」
フレアはまだ目を閉じたまま唇を突き出している。
……と、いつまでも鑑定してばっかりだと疲れるな。
このスキルはあまり長時間発動しっぱなしだと、体力と集中力を消耗する。
この間の騎士団や魔法師団のスキル強化のときも結構疲れたのだ。
「よし、いったん解除だ。いろいろと新発見があったよ。ありがとう、フレア」
「んー」
「いや、それはもういいから……」
「……もう。残念」
フレアはなぜか拗ねていた。
「フレア?」
「でも、いつかきっとお兄様と……ふふ」
「?」
なぜか頬を赤らめているフレアに、俺は首をかしげたのだった。