9 ランバート
「ゼルスも一緒だ。話したいことがある」
ランバートに誘われ、俺は魔法師団のスキル強化を終えた後、ゼルスも一緒に場所を移動した。
魔法師団用の鍛錬場だ。
十個ある闘技場のうちの半分近くが使用中で、それぞれ魔術師同士が模擬戦闘を行っているのが見えた。
闘技場の結界内で炎や雷などが弾け、輝く。
それを横目で見ながら、俺はランバートと話していた。
「あんた、剣も魔法もかなりの腕なんだってな。他人のスキルを習得して、しかもそれを最上位まで引き上げられるんだって?」
「……ああ。目覚めて日が浅いスキルだけど、いくつも習得したから、以前よりも戦闘能力が随分上がったと思う」
ランバートの問いに答える俺。
「ちょっと手合わせさせてもらってもいいか? あんたの力を確かめたい」
ランバートが身構えた。
「……エリアルは強いぞ」
と、ゼルス。
「話には聞いてるけど、実際に戦ってみないとな」
好戦的なタイプなんだろうか?
まあ、同じ『希望の盾』に所属する者として、戦闘能力を知っておきたい、ってことかもしれないな。
「分かった」
俺はランバートと一緒に空いている闘技場の一つに入った。
「……ふう。だいたい分かった。いや、大したもんだ」
ランバートは苦笑交じりに俺を賞賛した。
「俺もいちおう魔法師団じゃエース格なんだがな……形無しだ、はは」
「いや、ランバートも強いよ」
と、手を振る俺。
正直、スキル差で無理やり抑えたけど、戦い方の上手さは相手の方がずっと上だった。
歴戦の猛者って感じがする。
「じゃあ、そろそろ話の本題に入らせてもらう。あんたの力を試させてもらった理由も含めてな」
言って、ランバートは語り出した。
「俺は以前とある魔術結社に所属していたんだ。そこを抜けて、このティルト王国に来たってことさ」
「魔術結社……?」
「ここは今の俺にとって大事な居場所だ。けど、奴らは――そんな居場所を壊そうとしている」
「えっ」
ランバートは沈痛な表情だった。
「奴らがちょっかいをかけてきたんだ。このままじゃ、俺はせっかくできたティルト王国って居場所を失っちまうかもしれない……」
「居場所……」
俺は先日のラムとの会話を思い出した。
俺にとっても、ラムにとっても、ティルトは大切な居場所になっている。
そしてランバートにとっても――。
それを壊そうとする連中がいる、というのは見過ごせない話だった。
「奴らは俺をもう一度結社に連れ戻そうとしている。けど、俺は戻りたくねーんだ」
ランバートが首を左右に振った。
「俺の魔法はこの国の人間を守るために使いたい。奴らのように私利私欲で人を殺すために使うのは――もう嫌なんだ」
その言い回しから察するに、以前は『私利私欲で人を殺すために』魔法を使っていたということだろうか?
「……そうだ。俺はいくつもの罪を犯している。そいつを償う意味もあって、魔法師団に入った」
と、ランバート。
罪――か。