7 ラムルファ・リード
「君は……もしかして、エルフなのか?」
俺はラムにたずねた。
呆然としながら彼女の尖った耳を見つめる。
と、その耳が次の瞬間には先端が丸くなり、人間と同じような形に戻っていた。
「……普段は魔法で隠してるんです。印象を変化させる魔法なんですけど……」
と、ラム。
「魔法を使えるのか? 印象操作とか、あとは生活魔法程度でーす。戦闘用のはからっきしで……あはは」
ラムは照れたように笑った。
「エルフは魔法が得意な者が多いんですけど、あたしは本当に駄目で……だから剣を鍛えて騎士団に入ったんでーす」
「なるほど……」
「あの……あたしがエルフだっていうことは秘密にしてもらえませんか?」
ラムが言った。
「もともとエルフの森からこっそり抜け出して、ここにいるので……万が一、故郷の森に知られたら、あたしは連れ戻されてしまいます」
「分かった。誰にも言わないと約束するよ」
俺はラムを見つめた。
「ありがとうございまーす!」
礼を言ったラムは、ふいに遠い目をして、
「あたしが人間の町に来たのは、エルフの森では落ちこぼれで……居場所がなかったんです。だけど、ここに居場所を作ることができた。あたしは、ここで暮らしたいんです」
「居場所か……」
俺はしみじみとつぶやいた。
「俺も実家を追放されて……フレアがついて来てくれて、この国に来て……今はここが『居場所』だと感じられるようになってきたよ」
そういう意味で、俺とラムには共通点があるのかもしれないな。
なんだか以前よりも彼女に親しみを感じる――。
「エリアルも故郷から離れてきたんだね」
「ああ、実家は自分がいていい場所じゃない、って突きつけられた。けど、ここは違うんだ。俺はここにいていいんだ、と思わせてくれる――」
俺は大きく息を吐き出した。
「だから、俺もこの国のために何かしたい。『希望の盾』に入ったのも、騎士団や魔法師団を強化するのはその一歩だ」
「お互いに居場所を作ることができてよかったでーす」
「まったくだ」
俺たちはうなずき合う。
うん、本当によかった。
だから――この素晴らしい居場所を守るために、もっとがんばるんだ。
翌日、俺は魔法師団にやって来た。
次は魔法師団の強化だ。
がんばるぞ――。