5 王国騎士団を強化する1
この国の戦力を俺の【スキル鑑定・極】で強化する――。
その相談を、俺はティルト王グロリアス陛下としていた。
「まずは騎士団からですが――」
話を切り出す俺。
ティルト王国騎士団。
話によれば、他国の騎士団に比べるとかなり力が落ちるという話だった。
「やはり大国と比べると、どうしても戦力で……な」
と、騎士団のことを説明してくれたのは、爽やかな青年――グロリアス王だ。
「それは能力の話ですか? それとも人数の?」
「人数だ」
王は断言した。
「正直、ここの能力ならむしろ大国を上回っていると思う。ひいき目かもしれないが……」
「確かにみんな、気迫のある面構えという感じですね」
「だろう! 頼もしいんだ」
王は嬉しそうに語った。
まるで無邪気な少年のような顔にほっこりした。
「……っと、すまない。つい『素』が出てしまった。王として、もっと威厳のある態度を心掛けねば」
グロリアス王は苦笑した。
「いえ、王のお人柄が伝わってくるので、俺はむしろ嬉しいです」
「そう言ってもらえるとホッとするよ。話を本題に戻すが、人数で劣る分、個々の力をより強くしたい――というのが私の考えだ」
王が言った。
「人数がいきなり増えるというのはあり得ないが、能力がいきなり上がるというのはあり得るだろう? 君の力なら」
「はい。そのためにスキルポイントを溜めてきました」
王の言葉にうなずく俺。
「現在のポイントが100万あるので、騎士団と魔法師団で単純に二等分して使うなら、50万。対象となる人間のスキルを『最上級』まで上げるなら、一人につき3000ポイント消費します」
「ん? 『最上級』の上の『極』まで上げないのか?」
王がたずねた。
「実は――俺以外の人間のスキルを進化させるときは『最上級』までしか上がらないみたいなんです。何度か試してみたんですが」
答える俺。
そう、これまでの間に【スキル鑑定・極】については色々と実地で検証している。
その中で、他者のスキルを進化させる場合は『最上級』までしか上げられない、という事実が明らかになったのだった。
「一人につき3000ポイントを使った場合、約166人のスキルを進化可能です」
俺は王に説明する。
「不測の事態に備えて多少のポイントを残しておきたいので、まずは騎士団150人、魔法師団150人のスキルをそれぞれ『最上級』まで進化させる、という計画でどうでしょうか?」
「よし、それでいこう」
王は快諾してくれた。
「ここまでの尽力、心から礼を言う」
と、一礼するグロリアス王。
「君がこの国に来てくれて、本当によかった」
「いえ、そんな――」
俺は照れてしまった。
……というわけで、さっそく騎士団の詰め所にやって来た。
様子を見たい、ということで王も一緒だ。
と、
「あ、エリアルだ。こんにちは、でーす!」
ラムが笑顔で駆け寄ってきた。