4 一か月後
「A級モンスター5体か……二人とも油断するなよ」
「君こそ。いくら強くなったとはいえ、君はちょっと抜けてるところがあるからな」
ゼルスが俺をジト目で見た。
「お兄様はうっかりさんですから。でも、そこがまた魅力なんです」
フレアが嬉しそうに微笑む。
「……大丈夫。【集中】系のスキルを常時展開できるようになったから。気を抜いてミスすることは、まずない――はず」
俺は前方を見据えた。
全長20メートル近い巨大モンスター……『ギガサイクロプス』が5体並んでいるのは壮観だった。
遠距離からは火炎攻撃を、近距離からは頑強な肉体による近接戦闘を仕掛けてくる強敵だ。
けれど、今の俺には問題にならない。
「【雷光一閃・極】!」
魔法の稲妻をまとわせた剣を横に一振り。
輝く光の刃が飛んでいき、5体のうち2体を両断した。
ごおおおおっ!
残り3体が火炎を放ってくる。
「【万能シールド・極】!」
俺はすかさず防御スキルを展開した。
物理・魔法ともに防ぐことができる便利な障壁だ。
「【アイスブラスト・極】!」
今度は氷魔法のスキルで残る3体をまとめて氷結すると、全員粉々に砕け散った。
「すごい、瞬殺です……」
フレアが俺を見て、うっとり顔だ。
「どんどん強くなりますね、お兄様……」
「ここ一か月でスキルもだいぶ増えたし、戦闘用の強力なスキルをさらに『極』に進化させたからな」
俺はにっこりとうなずいた。
「『希望の盾』に入って、二か月足らずでここまで――」
ゼルスが苦笑する。
「恐ろしい男だ、君は」
あまり人を褒めないタイプ……というか、物言いがストレートなせいか、よくけなされるんだけど、今日は珍しく褒めてもらえた。
なんか嬉しい。
と、今の5体撃破でスキルポイントが手に入ったようだ。
モンスターを倒したら毎回このポイントが手に入るわけじゃなく、だいたい3回から5回に一度といった割合である。
で、今回のポイントを手持ちのポイントに加え――、
「よし、これでスキルポイント合計100万突破だ!」
「というわけで、そろそろ騎士団や魔法師団の人たちのスキルを強化していきたいんだ」
王城に帰ると、俺はミレットに相談していた。
「100万ポイントかぁ……随分と溜めたね」
ミレットがにっこりとして言った。
「これでも全員分にはまだまだ遠いだろうけど、騎士団や魔法師団で特に強い人たちを強化していくだけでも、全体の戦力の底上げになるんじゃないかな」
「そうだね。やっぱりエース格がより強くなると、全体的に戦力アップにつながるはず」
俺の言葉にミレットがうなずく。
「じゃあ、行ってみましょうか。最初は王国騎士団から」
いよいよ、騎士団と魔法師団の強化が始まる――。