1 ゼルスと一緒に討伐クエスト
「今回の討伐はダンジョンの奥に潜むモンスターが相手だ。ダンジョンって何気に初挑戦なんだよな……」
俺はフレアとゼルスに言った。
「マッパーとか、ダンジョン用の人員を用意してないのか」
たずねるゼルス。
「えっ、そういう人が必要なのか?」
「素人かよ!?」
ゼルスが思わずといった感じで叫ぶ。
「ごめん……ほぼ素人なんだ」
「同じくです……」
「い、いや、凹まれるとこっちも罪悪感が……今のはただのツッコミだからな」
ゼルスが俺たちをなだめるように言った。
ん、こいつって意外と気を遣うタイプなのか?
「いったん引き返して追加の人員募集をした方がいいぞ」
「それが無難か――」
ゼルスの言葉にうなずきかけた、そのとき、
うおおおおおおおんっ。
ダンジョンの入り口付近から咆哮が聞こえた。
「モンスターじゃないですか、これ」
「ラッキー。入口付近なら、すぐに行ってすぐに倒してこよう」
俺はすたすた歩きだした。
「あ、待て。僕も行く」
「私も行きます、お兄様~」
と、二人が追いかけてくる。
つい先走ってしまった俺は、前方にモンスターの気配を感じて立ち止まった。
「こいつは――」
巨大な眼球のような姿をしている。
「! こいつはAランクモンスター『ギガントアイ』!」
「あれ、情報と違うな……たしかBランクの『ビッグアイ』が標的だったのに――」
前に『ゴブリンロード』と戦ったときみたいな情報漏れだろうか。
「逃げろ! こいつの得意技は――」
カッ!
ゼルスの警告と『ギガントアイ』が眼光を発するのが重なった。
「う、動けない――」
「同じくです……」
「しまった、不覚だ……」
俺たちは全員、その場に彫像のように固まっていた。
「『ギガントアイ』のスキル【停止・最上級】だ……」
ゼルスがうめいた。
「名前の通り、対象の動きを70パーセントの確率で停止させる……対抗スキルなどを持っていれば、その確率を下げられるんだけど」
「誰も持ってないよな、きっと……で、全員かかっちゃったわけか……」
これは――ピンチかもしれない。
ちなみに現在の俺のスキルは、
【ファイアアロー・極】【集中・上級】【斬撃・極】【刺突・極】【旋風斬り・極】【アイスブラスト・極】【魔力探知・上級】【アイスシールド・極】【高速詠唱・中級】【正拳突き・上級】【耐久アップ・上級】【身体強化・中級】【格闘・極】【投げ技・極】【無我の境地・下級】
となっている。
この【停止】状態を解除できるようなものは持っていない。
「うーん、どうするか……」
『ギガントアイ』がこちらを見ている。
まずいぞ、今攻撃されたら防ぎようがない。
と、そのときだった。
ぱりんっ。
何かが割れるような音がしたかと思うと、俺は体の自由を取り戻した。
「えっ、あれ……?」
スキルを使ったわけじゃない。
そもそも【停止】を解除できるスキルは持っていない。
だとすれば、これは――。
「もしかして、称号の力……?」