13 俺は英雄として称えられる
「そうか、無遠慮に聞いてしまったな。すまなかった」
「い、いえ」
一国の王があっさりと謝ったので、俺は驚いてしまった。
普通、王族ってそんな簡単に謝罪しないものだと思っていたからだ。
「ああ、ティルトのような小さな国ではいちいち王の面子とか言っていられないのさ。私だって悪かったと思えば謝るし、ムッと来てケンカになることだってあるぞ。ははは」
気さくな王様のようだった。
でも、俺はエルメダみたいに堅苦しいところより、こっちの方が性に合ってるかもしれない。
「あらためて――よろしく頼む。エリアル、フレア」
「よろしくお願いします」
俺とフレアは同時に一礼した。
その後、宴の最中に王から檀上まで呼ばれた。
「今回、王都を救ってくれた英雄、エリアル・ウィンド殿だ。未知の怪物である『使徒』に対する防衛部隊の一員として、今後も永く活躍してくれることを願う――」
と、集まった人たちに俺を紹介してくれた。
万雷の拍手に包まれ、なんだか本当に英雄になったような気分だった。
実家から『役立たず』『無能』と追放された俺が――。
実の子じゃないせいか、虐待されて育ち、【スキル鑑定・極】を得た後も、結局は冷たく二度目の追放をされた俺が――。
救国の英雄、か。
くすぐったいけれど、誇らしい気分だった。
「今日は来てよかったよ」
帰り道、俺はフレアにそう言って笑った。
「私も妹として誇らしいです」
フレアがにっこりとする。
「報奨金もたっぷりもらえたし、当分は生活費の心配をしなくて済むぞ」
「ありがとうございます、お兄様」
「スキルポイントを溜めるのにいっぱい手伝ってもらったからな。この金は二人で得たようなもんだよ」
俺はフレアに言った。
「こちらこそ、ありがとう。フレア」
「お兄様……!」
フレアが抱き着いてくる。
本当に甘えん坊だな、と思いつつ、俺も彼女を抱きしめ返した。
そして、翌日。
「さて、と。今日も討伐クエストなんだけど――」
俺とフレアは冒険者ギルドでモンスター討伐の仕事を受けてきた。
もちろん、スキルポイントをさらに溜めることが主目的だ。
使徒戦で九つのスキルを進化させて、90000ポイント消費したからな。
「今日はお前が一緒なのか、ゼルス?」
そう、いつもはラムが一緒なんだけど、今日は不在だ。
どうしても外せない合同訓練があるんだとか。
で、代わりに魔術師のゼルスが俺たちに同行してくれるという。
「今や君は『希望の盾』の主戦力といってもいい。少々、嫉妬してしまうが……僕もそんな君のパワーアップに力を貸そう」
ゼルスがふんと鼻を鳴らした。
「感謝するように」
「ああ、助かるよ。ありがとう、ゼルス」
「そ、そんなストレートに感謝するな! 照れるだろ!」
キレられてしまったけど。きっとすごく照れてるんだろうな、ゼルス。
さあ、今日も討伐がんばるぞ――!