12 使徒撃破記念パーティ
宴は盛況だった。
大臣や貴族、富豪、そして王国騎士団や魔法師団の上層部……そんな面々が楽しそうに歓談している。
俺はフレアと一緒に並べられた食事を口にしていた。
ミレットは忙しそうに様々な相手に挨拶をしている。
スカウト部署に所属していると、そういう『人脈作り』みたいなのが大事なんだろうか?
一方のラムは騎士団のお姉さん数人と話していた。
そういえば、騎士団の遊撃部隊に所属しているんだっけ、ラムって。
俺たちは彼女たち以外には知り合いがいないので、ひたすら『食べ』モードだ。
うん、美味い。
「これ、おいひいですよ、おにいひゃま」
「食べながら話すのは駄目だぞ、フレア」
「あ、ごめんなさい……もぐもぐ。あまりに美味しくて……」
「美味いよな。さすが宮廷のパーティだ」
「ですね」
俺たちはにっこりと笑い合う。
と、
「宴を楽しんでくれているか、エリアル殿」
一人の男が歩み寄ってきた。
ん、この人って――。
「こたびは王都の危機を救ってくれて礼を言う。若き英雄、エリアル・ウィンド」
彼が微笑んだ。
「私はティルト国王、グロリアス・ティルト」
「お初にお目にかかります、エリアル・ウィンドです。ありがとうございます、陛下」
俺は深々と一礼した。
「エリアルの妹でフレアと申します、陛下」
フレアも俺の隣で同じく一礼する。
グロリアス王は二十八歳という若さだ。
爽やかな容姿で好青年という印象を受ける。
「はは、あまり堅苦しくならなくてよい。無礼講だ」
王が笑う。
「ところで、君のことはミレットが熱心に推薦していたのだが」
それから俺にたずねた。
「なんでも、他者のスキルを強化できるとか?」
「はい。無制限というわけではありませんが、一定条件下で他人のスキルランクを引き上げることができます」
「では、国を守る騎士団や魔法師団の各員のスキルを強化できる――と考えてよいのか?」
「はい。ただ制限があり、一度に大人数を強化するのは無理です」
――今は、まだ。
「より多くの人間を強化できる方法を探してみます」
「そうか。期待しているぞ、エリアル」
王が嬉しそうに言った。
「ところで、君はもしや――ウィンド伯爵にゆかりの者か?」
「ええ、まあ……ウィンド伯爵は俺の父です」
言いづらいなぁ、と思いつつ説明する俺。
「大国のエルメダから、わざわざティルトに来てくれたのは本当にありがたい――」
「いえ、俺は……実家を追放されたんです」