7 最強国家への道のり
「騎士団や魔法師団全体を強くする……か。そこまでは考えてなかったな」
ミレットがつぶやいた。
「それができるなら、すごいことだよ」
「スキルポイント15万くらいじゃ全然足りないから、どんどん溜めていかないとな」
俺はにっこりと笑って言った。
「あたしも協力するね」
と、ミレット。
「次の討伐からは、あたしも呼んで。スカウトより、今はそっちに力を入れた方がいい気がしてきた」
「やったー。私たちのパーティにまた一人加わるんですねっ」
フレアが嬉しそうだ。
「あ、でもお兄様にちょっかいかけちゃ駄目ですよ? お兄様はフレアのお兄様ですから」
「お兄ちゃんっ子ねぇ」
ミレットが苦笑する。
「ほんと、フレアはエリアルにべったりでーす。ふふ、そこが可愛いんですけど」
ラムが笑った。
――どんっ!
突然、大気が激しく震えた。
「な、なんだ……!?」
身長は10メートルくらいだろうか。
のっぺりとした肌をした白い人型モンスター。
顔には目も口も鼻もなく、頭部に炎を思わせる紋章が輝いている。
その紋章が光を放った。
ごうっ!
放たれた火球が大通りを爆破する。
悲鳴と苦鳴が響き渡った。
たちまち周囲は大混乱になる。
「ま、まさか、あれは――」
ミレットが震える声でうめく。
「あのモンスターを知ってるのか?」
「モンスターじゃない……」
ミレットの顔は青ざめていた。
「あいつは、あたしにこの傷を刻んだ相手……」
右腕を見せる。
そこにはむごたらしい傷跡が……そう、一度見せてもらったことがある。
そして、ミレットはこう言っていた。
『使徒』にやられた傷だ――と。
「じゃあ、あいつが」
「ええ」
俺の言葉にミレットがうなずく。
すでにその声は震えていなかった。
キッとした顔で空中の怪物を見上げている。
「『災厄の王』直属の配下――『使徒』よ」
使徒はふたたび紋章を輝かせた。
火球発射の体勢だ。
まずいぞ。
このままじゃ、王都がめちゃくちゃにされる。
なぜ、突然使徒が現れたのか。
奴の目的はなんなのか。
分からないことは色々あるけど、今はどうでもいい。
まず、この町を守ることだ――。
俺は使徒に向かって走った。
「【王の領域】!」
スキルを発動し、奴の動きを鈍らせる。
ぐ、ぎいぃっ……!?
うなるような声を上げ、使徒は火球の発射を中止したようだ。
のっぺらぼうの顔を俺に向ける。
「【ファイアアロ―】!」
俺は100本近くの炎の矢を生み出し、使徒に叩きつけた。