19(最終話) 称号と終局
「ふうっ……」
俺は大きく息を吐きだした。
――称号【災厄の王を滅ぼした者】を獲得。
頭の中で声が聞こえた。
災厄の王を倒したことで、新たな称号を得られたものだ。
そのまんまな名前だけど、一体どういう効果があるんだろう?
「まあ、災厄の王を倒したんだし、もうこんな強い敵と戦う機会はないだろうな……称号の効果なんて、もう気にする必要もないか」
――称号【災厄の王】を獲得。
さらにもう一つ、称号を得たようだ。
「ん……?」
俺はその内容が気になった。
称号が【災厄の王】……!?
どういう、意味だ――。
俺は首を傾げた。
何かが引っかかる。
災厄の王を倒した高揚感がスーッと醒めていくような、嫌な感じだった。
と、
「お兄様」
と、フレアが俺の袖を引く。
「終わりましたね」
微笑み交じりに俺を見つめている。
「ああ、これでやっと――」
俺は万感の思いを込め、最愛の妹を抱き寄せた。
そのまま唇を重ねる。
「帰ろう、フレア」
「はい」
それから、三年が経った。
「いってらっしゃいませ、お兄様――いえ、あ・な・た」
「はは、行ってくるよ」
俺はフレアの唇に軽く唇を触れ合わせると、家を出た。
これから公務だ。
あの後、俺はフレアと正式に夫婦になった。
だけど――。
『我に……従え……』
額が、熱い。
そこからときどき不気味な声が脳内に響くんだ。
『災厄の王』を討ったことの代償――。
俺は称号によって絶大な力を手に入れ、災厄の王を倒したけど、その際に新たな称号を得た。
そして、その称号によって、俺の力もまた大きく上昇した。
今や、俺に勝てる者はいない。
俺は、世界最強の存在になった。
まさしく――王の力を得たんだ。
けれど、その力は俺を蝕み始めている。
俺を――新たな『災厄の王』にしようとしている。
「俺は、負けない」
脳内に響く声を打ち消した。
この先も、俺と俺の力との戦いは続くだろう。
この力に精神を乗っ取られないように。
これから先もフレアとずっと愛し合っていけるように。
俺は生き抜いてみせる――。
【終わり】