18 災厄の王を討つ者
「お前を討伐する――災厄の王」
「人間ごときが我を――笑わせるな!」
災厄の王の体が膨れ上がる。
さらに巨大化し、全長100メートルを超える巨人と化した。
「【フェニックスブラスト】!」
俺は剣を掲げ、火炎の鳥を連続して撃ち出した。
ちゅどどどどどどどどっ!
連鎖的な爆発が災厄の王を襲う。
「ぐうっ……」
よろめきながらも、災厄の王はまだ立っていた。
が、明らかに体勢が崩れている。
「これで――!」
俺はさらに【フェニックスブラスト】を放った。
連打だ。
連打だ。
さらに連打だ!
奴に反撃の隙を与えず、一気に押し切ってやる!
「人間が……これほどまでの力を……!?」
災厄の王は愕然とした様子でうめく。
「なぜだ――貴様の力は確かに巨大だ。だが、我を圧倒するほどとは――」
「これまでの戦いで、俺は成長してきたんだ。仲間たちの力を借りながら、一つ一つ称号を集め、スキルを使いこなして」
俺は災厄の王に言った。
「仲間、だと――」
「それだけじゃない。俺はこれからの人生を共に歩んでいける相手を見つけた。彼女のためにも、俺は勝たなきゃいけない」
剣を、振るう。
オレンジ色の衝撃波がほとばしり、災厄の王の巨体を切り裂いていく。
「勝って、幸せな人生を歩むんだ。その思いが、俺の闘志の源だ!」
俺は【フェニックスブラスト】を連発する。
撃てば撃つほどに、攻撃力が増していくような気がした。
実際、災厄の王は完全に押されている。
「ぐっ……! これが称号の力か……! おのれぇ――」
少しずつ、災厄の王の体が縮み始めた。
まるでダメージを与えるごとに、それに比例して縮小化しているかのように。
いや、きっとそうだ。
なら、さらにもっとダメージを与えれば――。
「うぐぐぐ……」
俺の前方で災厄の王が悔しげにうなっている。
その体は今や全長1メートル程度にまで縮んでいた。
まるで小さな子どもだ。
俺が【フェニックスブラスト】を限界まで連打し、ダメージを与え続けた結果だ。
これなら勝てる……か?
「なぜだ……なぜ我を滅ぼす……」
「何……?」
俺は災厄の王をにらんだ。
「お前たちが人間を襲うからだ。お前はそのボスだろう」
「我は……力を与えた……だけ……」
苦しげな様子で、それでも災厄の王は毅然とした態度で告げる。
「お前たちが求めたのだ……力を……お前も、そうであろう……」
「えっ」
俺は驚いて災厄の王を見つめた。
「人知を超えた力……それは我のような超存在が与えたもの……人は、力を求める存在だ……だから、我が生まれた……」
「な、何を言って……」
「我もまた、人の望みから生まれた『力』にすぎぬ……『力』を望む者にそれを与える『力』――それが、我だ……」
「お前は誰かが生み出したっていうのか?」
「そうだ……」
災厄の王が俺を見つめ返す。
どこか憐憫を含んだ目で。
「力を得た同士が戦い合う……我を滅ぼしても、お前たちは戦い続ける……互いを滅ぼすまでか、それとも――」
「……平和を作るためだ」
俺は王に告げた。
「大切にしたい場所がある。大切にしたい人がいる。だから、俺は戦う」
ボウッ!
俺の手に巨大な炎の鳥が現れる。
「戦い続ける! いつか、その先に――きっと平和な未来があると信じてるから……!」
その炎の鳥を――最後の【フェニックスブラスト】を放った。
「それが……」
災厄の王は抵抗しなかった。
両腕を広げ、まるで炎の鳥を迎え入れるように――。
「それが人間の……選択、か……」
どこか諦めたような、あるいは憐れむような――そんな悲しげな顔で【フェニックスブラスト】を受け、そして静かに消滅した。