16 最終決戦
空から降りてきた、身長100メートルはありそうな巨大なシルエットは、
ばしゅんっ!
一瞬にして弾け散り、小さな人影となって再構成された。
黒いローブとフードをまとった人影だ。
身長はかなり小柄で、俺の腰くらいまでしかなさそうだ。
そう、まるで子どものようなシルエット――。
「お前が、災厄の王の本体……!?」
「いかにも。我こそが王」
そいつ――災厄の王が告げた。
ついに、ラスボスとの対峙か。
緊張感が一気に高まる。
「我は……かつて人間であった」
王が語り出した。
「三流の魔術師でしかなかった我は、とある魔術結社に所属していた。そこで『神を現世に降臨させる実験』が行われた――」
「神を、現世に……」
「計画は失敗した」
王がさらに語る。
「神の力の片鱗は実験メンバーの一人であった我に宿り――我は人間とは異なる生命体へと変質した」
「それが……災厄の王か」
以前、ランバートに概略だけは聞いたことがあった。
そう、彼自身も所属していた魔術結社『黄金連鎖』の実験によって災厄の王が呼び覚まされた、と。
そして他のメンバーは、いずれも王によって――」
「我が力は『使徒』を生み出すことができる。その力で、我は結社に所属していたメンバー全員を使徒に変えた。手始めに、な」
「手始め?」
「我はいずれすべての人類を使徒に変える。そして、我は絶対の王となる。三流の人間でしかなかった我が、世界を統べる至高の王となる……九九く、その夢は間もなく実現する――」
言って、王は嘆息した。
「だが、あまりにもイレギュラーな存在が現れ、我の夢は崩れ去った。使徒を、そして王をも屠る異能者――お前が、な」
「異能者……」
「称号の力を持つお前は、王である我すらも超える異能者だ。だが、我は負けぬ」
と、
「お兄様!」
フレアが駆け寄ってきた。
「私も一緒に!」
「フレアはそこにいてくれ。奴とは俺が一人で戦う!」
俺は彼女を制した。
「ですが――」
「大丈夫だ」
俺は彼女に微笑む。
そう、今の俺は使徒が何十体できても、一瞬で退けられるだけの力を得ている。
いくら相手がその王でも――。
――俺たちの戦いは、まさに死闘だった――。
「くっ……強い!」
俺は大きく押し切られ、空中で態勢を立て直す。
さすがに『災厄の王』の力は抜きんでていた。
他の使徒たちとは次元が違う――。
「お兄様!」
と、背後から声が響く。
「フレア!?」
「私も一緒に!」
「駄目だ、君は――」
「愛する人の側で、一緒に戦いたいんです! 私だって――」
ごうっ!
フレアの周囲に炎が燃え上がる。
これは――!?
今までの十倍……いや、それ以上の熱量だ。
「【フェニックスアロー】――」
炎の鳥が一直線に『災厄の王』へと向かう。
「すさまじい火炎攻撃だが、しょせんは人間の――」
「【分身】!」
フレアが重ねて叫んだ。
「何っ……!?」
火の鳥が無数に分裂し、四方八方から『災厄の王』を襲う――!