10 守るための戦い
「なるほど、さすがに強いな」
使徒たちの中からひときわ巨大な個体が進み出た。
見た目は赤い体毛を備えた牛のような感じだ。
その体毛には炎が宿っており、向かい合っているだけで汗が噴き出す。
「王の使徒ヅェルガス……相手をしよう」
赤い牛が名乗った。
「エリアル・ウィンドだ」
名乗り返す俺。
と、
「奴は上級使徒だ。俺も加勢する」
ランバートが隣に並んだ。
「エシュディオル……」
ヅェルガスがうなる。
「裏切り者が」
「悪いが、俺はもともと王に忠誠なんて誓ってない」
ランバートが言った。
「俺は人間として生きたい。その願いをずっと抑圧されていた」
「……ほう」
「だが、それを解き放ってくれる奴に出会えたんだ。だから俺も、もう一度闘志を持てた」
ランバートは俺を見てニヤリと笑う。
「もう二度と心折れたりしない。一緒に戦わせてくれ」
「心強いよ」
俺は笑みを返す。
「貴様!」
そんな俺たちのやり取りを見て、ヅェルガスが激高した。
「望んで使徒になっておきながら、今さら王を裏切るつもりか!」
「確かに俺は人を超える力を欲した。理由は違えど、お前たちと一緒さ。人間を超越したいと願い、王はそれを叶えてくれた。俺を使徒に改造することで――」
ランバートが語る。
「けど、その『先』が俺には見えていなかった。いや……本当はぼんやりと分かっていたはずなのに目を逸らしたんだ。強大な力に、目先の欲望に……逃げ込んだ」
「ランバート……」
「いつ王に殺されてもおかしくない……今の状況はその報いなのかもな、へへっ。だけど……それを挽回するチャンスが来た。俺の過ちを払拭するために力を貸してくれる奴が現れた」
と、俺に視線を向ける。
「ランバートが過去を取り戻したいと願うなら――俺がそのための力になれるなら、力を貸す」
うなずく俺。
「仲間だからな」
「はは、ありがたいこった」
「何を戯言を!」
使徒が向かってきた。
長大な牛の角が俺たちに迫る。
「ランバート、奴を人間に戻すために、最後の一撃は俺が加える。協力してくれ!」
「ああ、まずは連係して奴を無力化するぞ!」
使徒の天敵となった俺と、使徒の力を持つランバートの共闘が――今、始まった。
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