2 妖しい兄妹関係
「お兄様もそのサミットに招かれるのですね?」
フレアはにっこりとした顔でたずねた。
「ああ、使徒と何度か戦闘経験があるし、どうも世界中を見ても『複数回の使徒との戦闘経験』を持つ者っていうのは貴重らしい」
説明する俺。
「希望の盾の中で、俺が一番使徒との戦闘回数が多いからな。特に重要なアドバイザーとして招く、なんて言われたよ」
「ふふ、さすがですね、お兄様」
「いや、たまたま経験しただけっていうか……」
「私も妹として鼻が高いです」
フレアが微笑んだ。
「それに……女としても」
「えっ」
「お兄様は素敵な方です。もっと自分に自信を持ってくださいね?」
フレアが体を寄り添わせてくる。
しなだれかかってくる妹は『甘えている』というより、まるで『誘惑している』かのようだ。
「なんだよ、急に」
「お兄様はいつも謙虚ですもの。もちろん、それがお兄様の美徳であり人徳であると理解はしていますけど……私としては、もう少し胸を張ってほしいな、と」
フレアが微笑んだ。
「自信がなさそうにしていると、他人もお兄様のことを認めてくれませんよ? 私は……もっと色々な人にお兄様が評価されてほしいのです」
「俺は他人の評価なんてどうでもいいよ」
苦笑する俺。
「……まああまり評価されてしまうと、余計な虫がお兄様に寄ってくるかもしれませんね。やっぱりお兄様を独占するためには、あまり評判が広がらない方がいいのかも……」
フレアがふいにポツリと漏らした。
「えっ?」
「だって私だけのお兄様でいてほしいし……ふふふ」
「えっ? えっ?」
「いえいえ、なんでもありません。ささ、お食事にしましょう」
言いながら、フレアの瞳に妖しい光が浮かんだような気がしたのは気のせいじゃないはずだ。
どうも、この間のキス事件から、フレアとの関係性が変わりつつあるような気がして――。
少し、不安だった。
※
災厄の王と使徒たちが集う異空間――。
「エシュディオルが裏切ったか」
「奴が行ったのは重大な反逆行為――処分すべきです、王よ」
「ふむ……」
クランヅェーリの報告に災厄の王は小さくうなった。
エシュディオルは使徒の中でも最強格の一人だ。
それが人間側についたとなれば、放置しておける事態ではない。
だが、
「……いや、しばし泳がせておこう。奴はエリアル・ウィンドとともにいる……いずれ何かに利用できるかもしれん」
王が言った。
「始末するのはいつでもできる」
そう、すべての使徒には、いざとなれば王に絶対服従させるための『仕掛け』を施してある。
決して逃れることなどできないのだ。
その仕掛けを使い、対象の使徒を殺すこともできる。
とはいえ、まだエシュディオルが自分の元に戻ってこないとも限らない。
あれだけ優秀な使徒なのだから、ギリギリまで様子を見た方がよさそうだ、と判断したのだ。
「なるほど……かしこまりました」
「お前は世界中に散っている使徒たちをこの城に集めよ。最後の戦いの準備に入る」
「おお、最後の戦い――」
「我らは今度こそ世界を制圧する。そのための最終戦争だ」
災厄の王の声に力がこもった。
かつて受けた屈辱を晴らすため。
そして王の悲願を果たすために――。
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