14 災厄の王の出現
少し間が空きましたが再開です(当面、週一くらいになりそう……)
「ランバート、『災厄の王』は魔術結社から生まれた、って言ったよな?」
「そうだ。俺がかつて所属した魔術結社『黄金連鎖』――そこで行われた実験が、災厄の王を呼び覚ましてしまったんだ」
ランバートの表情に暗い陰がさした。
「災厄の王は結社のメンバー全員に言った。『我が手駒になれ』ってな」
「手駒……」
「『従うなら人として最上位の栄耀栄華を、従わないなら死を』――奴はそう言って俺たち全員に迫った。従わない奴はいなかった。まあ、当然だよな……」
うつむくランバート。
「全員が恐怖に支配され、同時に奴がいう『最上位の栄耀栄華』ってのに惹かれた奴も少なからずいたはずだ。そして俺たちは奴の配下として『力』を受け取った。『災厄の王の使徒』としての力を――」
ランバートの話を、俺とゼルスは呆然と聞いていた。
「じゃあ、『災厄の王』っていうのは、もともと人間が――」
「そうだ、あれを『創った』のは人間だ」
ランバートがうなずく。
「そして、使徒とは……王によって作り変えられた人間」
俺はランバートを見つめる。
「ランバートっていうのは、俺が純粋な人間だったころの名前さ。使徒として転生した際、『エシュディオル』という新たな名を与えられた。当然、クランヅェーリも同じだな。あいつは、かつての同僚だよ」
と、ランバート。
「王に逆らえば生きていられない。改造される際、すべての使徒にはその呪式が埋め込まれているのさ。当然、この俺にもな」
「じゃあ、ランバートは――」
「王がその気になれば、すぐに俺は死ぬ。はは、怖い話だねぇ」
ランバートが肩をすくめた。
「ま、そうはいっても改造自体は俺の意志で受け入れた。人間を超えた力を得たくてな……まあ、欲望に負けたわけだ。ははは。自業自得ってね」
冗談めかして言っているが、もちろん冗談ではすまない。
ランバートだって本当は怖いんだろう。
その証拠に、顔はわずかに青ざめているし、額には汗が浮き出ている。
「大丈夫だ」
俺は彼を見つめた。
「ランバートは俺が助ける」
――その後、俺はランバートやゼルスと一緒に次の話題に移った。
「なあ、ランバートが使徒だっていうのは、ここだけの秘密にできないかな?」
「なんだと?」
ゼルスが眉を寄せた。
「いや、だって使徒だって分かったら、ランバートは処罰されるんじゃないか? というか、その……」
「まあ、たぶん死刑だろう」
ランバートが肩をすくめた。
「その前に魔導研究所に送られ、生体解剖でもされるかな?」
「いや、そんな気楽な口調で言われても……」
「ランバートを救うために、この重大事実を隠すというのか、君は」
ゼルスが俺をにらんだ。
「嘘も方便というか、ランバートは現に使徒と敵対しただろ。自分が殺されるだろう危険を承知で」
「それは……そうだが」
ゼルスの表情は険しい。
「だが、それも僕らを油断させるための演技かもしれないぞ?」
「もし、罠だったら――」
俺はゼルスを、そしてランバートを見つめた。
「俺がランバートを倒す」
「へへ、ゾクリと来たぜ。やっぱ怖いね、あんたは」
ランバートが俺を見つめ返し、肩をすくめた。
「まあ、いいだろう。ランバートの存在は貴重だ。敵軍の情報を聞き出したり……使徒側の情報を持っているのは、彼だけだからな」
ゼルスはため息交じりにうなずいた。
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