12 VSクランヅェーリ1
「解き放つ、だと? 愚かな……エシュディオルはもともと我らの陣営だ」
「…………」
笑うクランヅェーリの側で、ランバートがうつむいた。
「どうした、エシュディオル?」
「…………」
「どうした、と言っている! 貴様、まさか……!?」
「俺は――」
ランバートが何かを言いかけて口ごもった。
「エシュディオル! 貴様――」
クランヅェーリが激高した。
「裏切るのか!」
「俺は……」
ランバートはまた何かを言いかけてやめる。
まだ――迷っているのか。
あるいは怖いのか。
『災厄の王』を裏切ることが。
「この裏切り者がぁっ!」
怒り心頭のクランヅェーリが触手を繰り出す。
ランバートに向かって。
「ぐっ……!?」
鞭のようにしなりながら襲いかかる触手は、その軌道を読むのが難しい。
いくらランバートに人間を超える能力があっても、反射神経でこれを避けたり防ぐのは限界があるだろう。
「ぐうっ……」
やはり避けきれず、まともに食らってランバートは崩れ落ちた。
「ランバート!」
「うう、効いたぜ、今の――」
「当たり前だ。私は王の側近の一人! お前と同じく、な!」
勝ち誇ったクランヅェーリがふたたび触手を伸ばしてきた。
「ちいっ!」
俺は剣術系のスキルで、それらを斬り払う。
さすがの使徒も、俺の『極』ランクの剣術スキルを受けては、迂闊に近づけないはずだ。
「まだまだぁっ!」
だけどクランヅェーリはまたもや触手を繰り出してきた。
しかも、さっきよりも数がずっと多い!?
「くっ……」
【三段突き】や【唐竹割り】、【旋風斬り】など、取得しているスキルを駆使して、それらの触手を斬り払っていく俺。
「【王の領域】!」
さらに切り札ともいえるスキルを発動する。
奴の能力を大幅ダウンさせ、その隙に一気に勝負を決めてやる――。
「ぐっ……!?」
クランヅェーリの表情が歪んだ。
すべての能力をダウンさせるデバフスキルだ。
これなら――。
「があっ!」
だが、次の瞬間、クランヅェーリの全身から黄金の光がほとばしった。