11 俺の役割と王国の危機
「で、その王国の危機っていうのはなんなんだ?」
俺はミレットにたずねた。
「古代からの伝承にある最悪の魔物使い――その名を『災厄の王』」
ミレットが謳うように告げた。
「ん? それって小説とか芝居とかの話?」
「いえ、フィクションじゃないわ。『災厄の王』は――あたしたちが戦うべき敵よ」
ミレットが俺とフレアを等分に見つめる。
「敵……?」
「その敵を戦うためのメンバーを集めているの。この国を守るために」
「えっ、それが俺とフレアってこと?」
やけに壮大な話で驚きだ。
「まあ、実際には『災厄の王』が現れるかどうかは分からないし、ティルトが襲われるかどうかも分からない。けど、備えをする必要があるから」
ミレットが説明する。
「王宮には他にも同じように集められた戦士たちが集まっている。あなたたちもそこに加わってほしい」
言って、ミレットは右腕の袖部分をまくった。
「っ……!」
そこにはむごたらしい傷跡が残っている。
「『災厄の王』の配下――『使徒』にやられたのよ。奴らは並のモンスターとは比べ物にもならないくらい強力よ。あたしも逃げるのがやっとだった……」
A級冒険者のミレットにそこまで言わしめるとは……。
『災厄の王』とその軍団が、王国に危機をもたらすという言葉が納得できた。
「あたしは――この国を守りたいの。この国に生きる人たちの笑顔を、幸せを、命を守りたい」
ミレットが真剣な口調で告げた。
「だから、力になってくれそうな人を探してるのよ。あなたたちならきっと――そう思ったから声をかけた」
「ミレット――」
最初は軽いノリの人だ、くらいに思ってたけれど。
彼女は、真剣に……そして必死にこの国を守れる人材を探してるのか。
まあ、国の危機に立ち向かえ、っていうのは、ちょっと怖い部分もあるんだけど。
「確かに俺のスキルが役立つかもしれないな」
「ですね。お兄様ならきっと」
俺の言葉にフレアがうなずく。
「分かったよ、ミレット。俺も行く」
「私もです!」
と、フレア。
「いや、フレアは危ないから不参加の方向で」
「私、強いですよ」
むーと口を尖らせるフレア。
「そ、それにお兄様に悪い虫がつかないように、妹として監視せねば」
「いや、なんでだよ!?」
「とりあえずエリアルの補佐って役割で一緒に来たらいいんじゃない?」
ミレットが仲裁した。
「では、二人を王宮に招待するわ。明日の十時に王宮の正門前まで来られる? そこであたしと待ち合わせしましょ」
と、ミレット。
「選ばれた戦士たちと引き合わせる。二人とも協力してくれて感謝するわ……本当にありがとう」
言って、彼女は深々と一礼した。
翌日。
俺はフレアと一緒にティルト王宮にやって来た。
「うわー、すごい綺麗な建物だな」
真っ白い宮殿は荘厳で、美しい。
確か観光名所になってるらしいけど、それも納得だ。
「私、前から見てみたかったんです。感激です~!」
フレアも喜んでいる。
「あ、来たわね、二人とも」
ミレットがやって来た。
「歓迎するわ。ようこそ王宮へ。そして――」
にっこりと笑う。
「ようこそ。対『災厄の王』の部隊――『希望の盾』へ」
次回から第2章になります。ここまで読んでいただき、本当にありがとうございました!