9 作戦
『使徒を討つ者』の称号の効果は、その名前から連想される通り、対使徒戦において俺の攻撃や防御スキル全般を強化してくれる――。
ランバートの言葉に、俺は腑に落ちるものを感じていた。
確かに――今までの使徒戦でも、そう感じることが何度かあったからだ。
「ただでさえ『極』ランクのスキルを連発してくる上に、対使徒用の称号まで持ってるんじゃ、とても勝てない……はは、降参だ」
ランバートが両手を挙げる。
「じゃあ、もう戦わなくていいんだな?」
「そういうこと。俺を煮るなり焼くなり好きにしてくれ」
言って、その場に胡坐をかいて座りこむランバート。
そう言われても……俺としては、どうすればいいのか分からない。
もちろん殺すつもりなんてない。
いくら相手が使徒といっても、やっぱり仲間なんだ。
かといって、無条件に『今まで通りに過ごそう』なんて言えるわけでもないし……。
「うーん、困った……」
「はは、使徒すら圧倒するほど強いくせに、底抜けにお人よしだな、お前」
ランバートが笑う。
その笑みがふいに消え、
「――いくら強くても、そういう隙があると長生きできんぜ」
「えっ」
「作戦通り、そいつの隙を作ったな。よくやったぞ、エシュディオル」
突然、どこからか声が響いた。
同時に、俺の四肢に何かが巻き付く。
「えっ……!?」
気配も魔力も、何も感じなかった。
気が付けば、俺の両手両足に触手が巻き付いている。
「動けない――」
「無数のスキルと称号まで持つ超戦士――まともに戦えば、我ら使徒といえども苦戦は必至」
ずずず……。
床から何かがせり上がって来た。
身長3メートルほどの、のっぺらぼうの人型。
その全身は水色をしている。
「使徒……!?」
ランバート以外に、もう一体いたのか。
「クランヅェーリだ」
水色の使徒が名乗った。
「さあ、やれエシュディオル」
と、促す。
「こいつは私が抑えている。トドメはお前がさすのだ」
「……!」
ランバートの動きが止まった。