5 『災厄の王』とは1
「ち、ちょっと待ってくれ! いきなり何するんだよ!?」
「お前を殺しに来た、と言ったはず」
ランバートが静かに告げる。
笑みはない。
冗談を言っている様子はない。
だけど――どうして!?
「ほら、構えろよ。せめて全力の抵抗をさせてやるぜ」
ランバートは口元を歪めるような笑みを浮かべた。
「友だちのよしみで、な」
「俺は……『希望の盾』のメンバーと戦いたくない」
「甘いねぇ」
ランバートの手に光が集まる。
その光は長大な槍へと変化した。
「魔槍【ジュライゼル】――貫け」
俺に向かって一直線に投擲される赤い槍。
「くっ……!」
俺はとっさにスキルを使い、シールドを張った。
ばきいっ!
シールドを易々と貫き、赤い槍が俺に迫る。
「ちいっ……」
俺は攻撃スキルを発動して、その槍を弾き飛ばした。
強い――。
俺は冷や汗をぬぐった。
過去に何度か使徒と戦っているけど、今のランバートが放つ威圧感はどの使徒よりもすさまじい。
そして、その戦闘力も威圧感に比したものがある。
「……前にランバートは言ったよな。魔術結社に所属していたって。望まぬ殺しをさせられたって。そんな身の上話は嘘だったのか?」
俺はランバートをにらんだ。
全部、嘘だったのか。
知り合って日は浅いけれど、俺たちは仲間じゃないのか……?
「嘘じゃないさ」
ランバートの口元が歪む。
「『災厄の王』の軍団は――もともと一つの魔術結社として始まったんだからな」
「っ……!?」
俺は思わず言葉を失った。
「どういう……ことだ?」
そもそも――。
『災厄の王』とは何者なのか。
世界に仇為す存在。
人類全体にとっての敵。
そして、その配下である使徒とは恐るべき魔物たち。
それが基本認識だ。
ランバートの説明は初耳だったし、もし本当に『災厄の王』の軍団が魔術結社から始まったとしたら……。
奴らは思った以上に深く、昔から人間の社会に食い込んでいた、ということなのか――?




