2 居場所
フレアはミレットの元にいるらしい――。
で、当のミレットにそれとなく聞いたところ、
「うん、あたしのところに居候したいって」
とあっさり返事が来た。
「ただ『お兄様にはしばらく会わない』って言ってるよん」
ミレットは俺をジッと見つめる。
「ねえ、彼女と何かあったの……?」
「いや、まあ、その……」
俺は口ごもった。
二度もキスしたとか、兄妹関係がちょっとこじれているとか、なんとも言いづらい話だ……。
「ま、向こうも兄離れしたいお年頃なんじゃない?」
「そう……なのかな」
まあ、フレアが俺から離れて自立するなら、それはそれで――兄として喜ばしい話だ。
ただ、もしかしたら俺たちの関係がどんどんこじれて、元の正常な兄妹関係にもどれないんじゃないか、なんて心配もあったりする。
フレア……どうしちゃったんだ。
俺はうなだれながら、執務室に入った。
「ん、エリアルが元気ないでーす」
ラムが声をかけてきた。
「どうした。具合でも悪いのか?」
と、これはゼルス。
「お、ゼルスがエリアルを心配してる。珍しい」
「……ち、ちょっと気になっただけだ」
「おお、これはデレの兆候でーす」
「誰がデレだ誰が」
「ふひひ」
「変な笑い方をするんじゃない。僕はただ、いちおう仲間としてだな……」
「あ、仲間って言った!」
ラムが嬉しそうだ。
「なんでそんなにニヤニヤするんだ」
「ゼルスって前は誰かのことを『仲間』なんて言わなかったでしょ」
「……そうだっけ」
なんだろう……二人とも、前より和気あいあいとしているような……?
ラムはエルフの森から、ゼルスはかつて所属した魔術結社から、それぞれちょっとしたいざこざがあった。
そのときに二人は異口同音に言っていた。
ここが自分の居場所だと――。
そういうこと、なのかな。
なんだか、ちょっと嬉しいな。