『ハッピーエンドのその後検討会』~表と裏?~
(へー、本当に上手いじゃん。)ど素人の紅にも分かるほど、黒斗は、自分で豪語した通りに、バスケの試合で大活躍をした。
試合後。観客や選手たちもアリーナを後にする。
「しっろー!俺勝ったよぉ!!」白斗に褒めてもらいたいのか、ユニホームのまま黒斗が駆け寄ってきて、観客席を見上げる。
「…って、しろいねーじゃん!」途端に態度が悪くなる黒斗。つまりは、いつも通りだ。
「………。」緩慢な動作で、空いてる横の座席を見つめる。涙が零れそうになった。その時、
「お前なぁ、何メソメソしてんの?」めんどくさそうに黒斗が言う。
「め、…メソメソなんてしてない!!」キッと黒斗を睨む。
「ふーん。ま、どうでもいいけど?…それよりコートに下りてこいよ。」とん、とんとドリブルをしながら黒斗が言う。
「なんでよ?私はもう帰りたいの!」今日は何もしたくない。
「いいから、こい!」切れ長の目が鋭く紅を射抜く。
「……っ。」黒斗に気圧され、渋々コートに下りる。
「コレ。ここからあのゴールに入れてみろ。」先ほどのボールを紅に手渡し、ゴールを指差す黒斗。
「ちょ…ちょっと待ってよ!あ、あたしバスケなんて、ほとんどやったことないし、第一ここ、3Pシュートの線じゃない!!アンタはは簡単に入れてたけどっ…!」慌てて抗議する。
「簡単なんかじゃない。」黒斗がボソッっと呟く。
「…え…?」きょとんとする紅を他所に、
「いいか?…力まず、ゴールをしっかり狙って打つんだ。」黒斗は紅の背後から紅の手を自分の手で包む様に指導をする。
(たくっ…横暴なやつ…。)
しかし、黒斗が普段とは反対に真剣な態度だったので、口に出せない。
ボールは高く弧を描き、ゴールへと吸い込まれる。
「やっった!」我知らず口に出す。
「今のは、ほぼ俺が打ったようなもんだけどな。」紅の呟きを聞き逃さなかった黒斗が釘を刺すかの様に言い、見下す様に笑う。
「うっ…うるさいなぁ。」正論だか、悔しい。
「いつもひとりで残って練習してんの?」コートから出て、なんとなく疑問に思ったことを聞く。
「……そ。」練習の手を止めず、そっけない返事をする黒斗。しかし、返事は期待していなかったので少し驚く。
「へー…。」
不意に白斗先輩と彼女のことが頭を過ぎる。体育座りをして、うつ向く。
「あ゛ぁー…っんとに面倒くせー女だなぁ!!」焦れったそうにドカドカと紅に近寄ってくる黒斗。
「んなっ…!?」言い返そうとして立ち上がったが、言葉が見つからない。
「他人を妬んだり、自分はダメだとか思ってる暇があるなら前を見ろ!!」黒斗が、ビシッと指を差し、紅を見据えくる。
「……っ。」蟠っていたものが無くなり、心が軽くなるのを感じた。
(私は朱璃さんとは違う。私は私らしく頑張ればいいんだ。)
アリーナのから帰り道。
「コレ、明日行こうぜ。」当たり前の様に黒斗が出したのは、遊園地のチケットだった。
「は!?意味わかんない、何でアンタと一緒に遊園地行かなきゃのよ!」黒斗と行く理由がない。
「俺の勝利祝い!!」愚問だと言わんばかりの黒斗。
「それで…なんであたしなのよ…。」ふぅと溜め息をつきながら問う。真剣に会話するのが、バカらしく思えた。
「俺、彼女いねーし。男同士で遊園地ってのもなぁ…。」黒斗がうーんと考え込む。微妙に会話が噛み合っていない。
「ま、どうせお前も暇なんだし…いいだろ?」皮肉を込め、ニヤッと嫌な笑みを浮かべる黒斗。
(こいつ…最っっ低!)
それでも黒斗の言葉に元気づけられたのも事実なので、気分転換も兼ねて、行くことを了解した。