その夜1
「お前はO県のカメラマン全員の品位を落とした」
村川さんは続ける。
「お前は2度とカメラに触るな」
村川さんは一口酒を口に含むと吐き捨てるように酒がまずいと言った。
「お前は、本当は占いの方向に行けばいいんじゃないか?」
と、めんどくさそうに後頭部をガリガリと引っ掻いた。
「もう、閉店時間だから、ムラさんそれくらいにしてあげて」
「いいか?カメラには触るな。絶対にだ。お前からは写真への愛情が感じられない。そんな奴が写真やってると、迷惑だ」
真夏の熱帯夜。月明かりの下とぼとぼと歩く。
まだ、所持金はある。次の店行くか。
次の店で、運命の出会いを果たす。
それが、私の人生を狂わせるとは、その時は知らなかった。
バーのドアを開けるとドアベルがチャリン、と鳴った。
すると、4人の男女がタロットカードを見ていた。
「あら、たまちゃん来たの?」
たまちゃんとは私のニックネームだ。
「何してるの?」
「ああ、いま、タロットで遊んでたのよ」
「あ、実は私、占いの資格持ってる!」
「占いって資格あるの⁉︎」
「民間のものだけど……」
と、言って、財布からカードを出す。
それは、簡易的なもので、家には額縁に免状が飾られてある。
「わ、すご。」
「じゃあ、あなたも入る?」
「はい」
「じゃあ、クリスタルチューナーと水晶ありますか?」
「ん?どした?あるけど」
出されたクリスタルチューナーとクリスタルを受け取り、タロットに向かって一度だけ鳴らした。
ピィーーン、と澄んだ音が出る。
「これで、タロットを浄化しました。それでは始めます。まず、だれを占いますか?」
「じゃあ、オレで」
手を挙げたのは隣にいた中年男性。
「よろしくお願いします」