黒いオーラ
ホテルに着くと、ヒーラーさんが出迎えていた。
咲花さんはベッドに腰掛けて虚空を見つめていた。その目は完全に焦点が合っていない。
この人、咲花さんに何をしたの?
「あぁあぁ〜……ママさん……たましゃん……きたの〜……」
幼児が出すような声になっている。
ヒーラーさんは、フトマニ図が描かれたプリントが入ったファイルと、マニ車を置く。
「じゃあ、鏡を見て……私は誰だと言ってみて……」
それ、アウシュビッツの洗脳のやり方じゃんか。
ママさんはiPadを取り出し、ヒーリング音楽をかける。
無音だと、完全に洗脳に入るから、これでブロック入れてるんだな。
「私は、誰」
咲花さんは咲花さんでしかないでしょう。
術にハマるなよ。
マニ車をクルクル回し、ヒーラーさんは続ける。
「意識の奥深く、忘れている潜在意識にチャネリングするよ」
咲花さんから、黒い蛇みたいなものが巻き付いているように見える。
気持ちが悪くおどろおどろしいものがあたりに漂っている。
吐き気がする。
咲花さんの目から黒い雫が滴り落ちているように見える。
「じゃあ、何か言いたいことはある?」
「私は、」
ママさんがメモ帳を渡した
「これから、あの子が何を言っても逆上しちゃダメよ」
私はゆっくり頷いた。
「私はみんな愚かだと思う。私を頼る人はさらに愚か。占いで相談してくる人はたくさんいるけど、こんなくだらないことで私を頼ってくるなんて馬鹿げている。それくらい、自分で解決しろよ」
咲花さんの口から黒い涎が出ているように見える。
「みんな私のように美しく強い存在になれるのに、そうならないのはみんな頭が空っぽで中身のない人だからだ」
咲花さんからドス黒いものがふよふよと漂って、周りが黒いオーラに包まれる。
それから、咲花さんが何か口にするたびに黒いタールのようなものが空気中を待っているように見える。
だめだこの人。
トントンと肩を叩かれ、ママさんは横に首を振る。
この人、救えない。救いようがない。
私の中で怒りがふつふつと湧いていた。
そのとき、ふ……とある考えが浮かんだ。
YouTuberになろう。
なぜそんな気になったのかはわからない。
ただやらなきゃ、という気になった。




