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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

約2分で読み切る小話集

愉快な動物たちと送る農民ライフRPGというキャッチコピーに惹かれた俺は今日も畑仕事に精を出す

作者: 北園

「なろうラジオ大賞2」応募作品その4。

 ノルマ達成のためスケジュールを埋め尽くす膨大なタスクに気の抜けない苛烈な順位争い。

 体力(スタミナ)を考慮しつつ、時に司令塔、時に監督役など数々の役をこなす日々は楽しくはあったが、このところ疲れも感じていた。


 いやあ、ゲームの掛け持ちって大変だね!


 癒しを求めていた俺の目に「愉快な動物たちと送る農民ライフRPG」という広告が、まるで神の啓示のように映った。

 そうだ、スローライフしよう。




 午前五時。

 今日も元気に畑に向かうと、朝日よりも鮮やかな赤色のトマトが出迎えてくれる。ステータスを確認するともう収穫の頃合いだった。

 一つ一つ丁寧に、しかし手は休めることなく実を軸から切り離す。手袋(デバイス)越しに感じる重みについつい口元が緩んだ。


 ユーザ登録した当初の想定とは異なり、農作業は結構シビアだ。

 このトマトも収穫を明日に延ばせば質が落ちてしまうだろう。

 始めた頃だって苦労した。株を枯らしたり、根が細いままうまく育たなかった。けど、そんな手間暇かかったことも今は愛おしい。

 たとえ虚構(ヴァーチャル)でも、頑張った成果はこの手の中にある。




 ちなみに、愉快な動物たちだが——


『スズメどもが来たぞ!』

ゴーレム(カカシ)作成! 一斉攻撃用意!』


『イノシシが出た!』

『雷鳴魔術をぶち込め!』


『源五郎どんの所に熊が!』

『大丈夫だ! あいつ武道家皆伝してるから一人でもやれる!』


 基本討伐対象として出現するので、対抗手段として副業ジョブの取得が推奨されている。

 ボイチャは殺伐としていた。

 思ってたんと違うけど、かわいい作物の為だ。慈悲はなかった。






 そんなある日、悲劇は起こる。






 運営からレイド開催の予告がされていた日だった。

 警鐘が絶えず鳴り響くが、それ以上に自分の心臓がうるさかった。


 レイド発生のメッセージ。


 一番近い発生場所は、俺の、かぼちゃ畑だった。



『クソッ! 素早すぎて物理攻撃が当たらねぇ!』

『デバフもレジられてんぞ!? どうやって倒すんだよ!』


 怒号飛び交う間にも、俺のかぼちゃは踏み潰されていく。

 攻略法がわからず焦燥感が募る中、俺はただ一刻も早くこの悪夢が終わることを祈るしかできなかった。


『別の場所で討伐報告あがったぞ!』

『最上級の火炎魔術をありったけぶち込んだってよ!』


 一斉に沈痛な面持ちが俺に向けられる。


『あ、待て。他にも……』


 俺はすがるようにその声の主を見やった。



『海水魔術をジャブジャブ浴びせれば素早さ落ちるって』






 そしてかぼちゃ畑は焼き払われ、灰が虚しくひらひらと舞っていた。


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