表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。

テニスコート

注意!

昔本当に起こった事を、ちょっとフィクションにしました。

@短編その68

お盆になると、ちょっと感傷的になる。


随分前の話だが・・


姉が看護師をしていた。

寮で暮らしていて、同部屋が私と同い年の後輩だそうだ。

妹と同い年ということで、結構可愛がっていた。

実の妹とは買い物さえ行かないのに、買い物や食事に行ったり、映画を見たりしている。

そっちの方が妹じゃん?

なんて思うが、仕方がない。

まず休みが合わない。私は土日が休みの仕事ではないのだから。

それに、姉とはあまり仲が良いとは言えないのだし?

食べ物、趣味、服、etc.・・・好みが何もかも違うのだからね。

ここ数年は、この同じ部屋の子の方が断然一緒に過ごしている。

やきもちなんて、ガキくさい事を思う事は殆ど無いというのが正直な所だ。



その姉が、この同室の『妹』を連れて帰郷した。

おお、なんか・・・胸、おっきいな!たゆんたゆんだ。

少々ぽちゃっとして、我が家はみな160オーバーの高身長だから、彼女のような150センチの子は可愛く見えた。

父は照れ屋なのか、一緒には食事をせずリビングで酒とアテで一杯やっている。

姉はそれはもう、彼女のご機嫌をとっていて微笑ましい。

姉が男だったらいいのに〜なんてしれっと言ったのを聞いて、私は苦笑した。

そうなんだよな。

我が姉妹は165に169の高身長、そしてショートカットでボーイッシュだ。

姉はまだ女らしい部分があるが、私は女に告られることが多かった。

小学生では高飛びで、中学生では体操で、高校では剣道でそれぞれ県大会まで行くほどのスポーツ派、今も腹が割れているし、バク転だって出来るのだ。


「あれ?妹さんって聞いたけど、弟さんなの?」


彼女は私を見て挨拶を省いてこう言ったのだ。で、笑ったのだが、今思い出すが・・私の笑い方は、男前で『ははは』なのだ。

まあ話が横道から逸れたが、姉とはそういう関係ではなさそうだからほっとした。

でもなんだか・・ちらちらと私を見ている気がする。

まあ私がもしも男だったら・・・彼女にするかと言えば・・・しないな、そう思った。そういうこった。



今回帰郷したのは、近所のスポーツ施設のテニスコートが借りられたからで、車を出すのを頼まれた。

ついでにやって行けというから、いい運動になると思い加わることにした。


で。

なにやってんだよ・・・

二人とも下手くそだった。

せめてサーブは入れろ・・・

私はなんたってスポーツ派だからね。オールマイティーさ。なんでもこいって奴。

バスケもスリーポイントも一発で入れられるし、バレーだって男子とゲーム出来ちゃうし。

テニスも軟式公式何方も来いや!ですわ。

なんて自慢してしまったが、サーブからダメではゲームも始まらない。

なので姉と彼女にまずサーブの打ち方から教える事にした。

姉は2、3回打てば弱いながらもサーブが打てるようになったのだけど、彼女は『運チ』だった。

運動音痴ここに極まれり。

それでも私は根気よく教え、ようやく打てるようになったのはレンタル時間終了30分前。


「ガットを面として、ボールに当てる」


ぽこん

ボールは綺麗な弧を描いて反対側のコートに入った。


「やったぁ!」


・・・やったぁ、じゃねーよ。でも私はなるたけ笑顔で褒めた。


「今のは綺麗に入りましたね」


彼女はなんか顔が赤い。

暑いもんね、今日は。姉が飲み物を持ってきてくれた。


「ありがとー!あんたがいてくれて助かった」

「ねえちゃん、もう少し出来ると思ったんだけど、だめじゃん。スクールに入会推奨」

「あはは!ほら、ご飯奢るから」


予定時間も来て終了。

シャワールームで汗を流し、着替えを済ませて外に出るともう夕暮れだ。

晩ご飯を近くのファミリーレストランで食べ、帰宅したらごろりとベッドに寝転がったら・・眠気が来てそのまま眠った。



「!」

「あ。目を覚ましましたか」


なんと薄暗い部屋の中、彼女がベッドそばに座って、私を見ていたのだ。

背中がざわっとして、鳥肌が全身を覆う。彼女は平然としているのが更に不気味だ。


「今日は楽しかったです。ありがとうございます」

「あ、うん」

「かっこよかったです。先輩も素敵だけど、妹くんすごくかっこいい」

「そう?楽しめてよかったね」


いつから居た?

寝ていたからわからないけど・・随分いたのだろう。

そっと壁を見ると、壁掛け時計には夜光塗料が付いているので、時間が分かる仕様だ。

12時22分。

私がベッドに寝転んだのは、9時半ごろだ。

財布や通帳は、戸棚だ。昔泥棒が入ってから、番号合わせで開ける錠を付けている。うん、錠は大丈夫。


「で、こんな夜中に何かな」

「先輩じゃちょっと話しにくくて・・相談なんだけど」

「ねえちゃんじゃ、なんでダメなん?」

「知ってる人だから」

「なる」


これは恋愛相談か?

妙な雰囲気で、かなり警戒しちゃった。でも警戒されても仕方がないよね?

夜中にこんなところにいるんだし。普通ビビるよね?


相談は想像通り恋愛相談だった。


なんでも10くらい年上の男性が、付き合いたいって言ってきたんだとさ。

それくらいの年齢だと、遊びではない、お嫁さんにしたいという人が多いと思う。

だから真剣に考えるべき、まだ遊びたいならお断りをするべき、正直・・よした方ががいい。

私はそう答えた。

この地方では有名企業に勤務していて、お金も持っていそうなんだそうだ。

彼女とデートの時は、バッグも服もぽんぽん買ってくれるし、美味しいものも食べに連れて行ってくれるんだと。


・・なんだ。もう答え決まっているじゃないの。自慢かな?惚気かな?

でもなんか・・やばい気がした。


「やっぱりやめた方がいいかな?妹君はどう思う?」


上目使いで聞いてきた。

本当、可愛いね、君。女の私でも思うよ。

でも私はそういう性癖じゃないからね。

止めてもらいたいのかな?

止めたら、何か言ってくるかな?

不意に、頭の中に変なセリフが浮かんだ。


『止めるから妹君、私と付き合って』


頭がぐらっとして眩んだ。そしてまた鳥肌が粟立った。

だめだ、拙い!!


「友達として、様子をみたらどうかな」

「・・・そっかぁ。ありがとう」


そして彼女は部屋を出て行った。

私は脱力して、ベッドに崩れるように倒れた。

心臓がバクバクしている・・・

私は夜の真っ暗な道だって怖いと思ったことがないのに、今は心底怖かった。

なんだ、あの子は。


ナニカガガツイテル


変な・・・何て表現したらいいんだろう?雰囲気?

とにかく長く居たいとは思わなかった。


翌日、姉と一緒に彼女は帰って行った。





彼女が行方不明になったのは、それから1ヶ月後だった。

姉が私に連絡をしてきたので知ったのだが、どうやら年上の男性と付き合いだしたようで。


「なんで私に聞くんだよ。行き先なんか知らないよ」

「あの子、あんたを気に入ってたみたいだから、もしかしたらと思っただけ」


おい、ねえちゃん。私は女だよ。でも手がかりがあるならと、連絡する気持ちはわかるけど関わりあいたくないな、あの子には。彼女の周りの人間はそれはもう必死で探したようだ。


彼女の実家は県外で、遠く離れているから寮に住んでいた。

休みの日に出掛けて、連絡一つも入れずにそれっきり。

真面目な子で、連絡をしないなんてしたことがなかったから、周りは大騒ぎとなった。



数日後に発見されたが、最悪の結果となった。


なんと、当時の週刊誌に事件が記事になって載った。


犯行現場となった、ラブホテルの一室が撮影されていて、事件当時の部屋の様子が写っていた。

白黒だったけど、この黒い水のようなモノは血だろう?

大人のおもちゃという名の玩具が転がっていて、梱包用テープもあった。


彼女は酷い有様で殺されていたのだ。体にはナイフの切り傷が10数箇所、そしてとどめの絞殺。

犯人は変態だったが、そんな残酷な事をしでかすような男ではない、周りの皆がそう証言した。


あの夜の彼女の雰囲気に飲まれたのかもしれない。

男も『なぜそこまでしたのか分からない。気が付いたら彼女は死んでいた』と言っていたそうだ。


あの時、もし『付き合って』と言われ、いいよと言っていたら・・・

殺したのは私だったかもしれない。

うん、多分殺していた。

あの妙な雰囲気は、もう体験したくないね。



夏になるとテニスコートで笑っている彼女を思い出すけれど、鮮明さは薄れていくばかりだ。


今はぼんやりとしか思い出せない彼女にお悔やみを。


お話の後書き、的な・・・



@どこが本当か(前に書いた文を削除しました)



主人公はわし。マジ当時は鬼畜眼鏡風の顔。

自分の身長。姉がいて、看護師だった。そして同部屋の子の年。

遊びに来た事。

テニスコートレンタル。

事件が記事になった。


@創作の部分

玄関で男と思われた事。「男っぽい!」とは言われた。

父は夜勤でいなかった。思い出したら確か夜勤だったなと。

ファミレスで食事はしなかった。

相談は本当だったが、夜中ではなかった。

ただ、変な雰囲気は本当。


以上。


タイトル右の名前をクリックして、わしの話を読んでみてちょ。

4時間くらい平気でつぶせる量になっていた。ほぼ毎日更新中。笑う。

ほぼ毎日短編を1つ書いてますが、そろそろ忙しくなるかな。随時加筆修正もします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ