ジグザグ5
何年かぶりに行った病院で捻挫(仮)からカッコが取れて、あたしは自分の見立てが正しいことを知った。病院であたしが自分で巻いた包帯と湿布を取ってもらったら手首が紫色と黄色になっていてハムみたいに太くなってた。そして先生に優しく怒られた。もうそんなことしちゃダメだよって。ハムみたいな自分の手をみたら、絶対もうしないって心に誓えた。
念のために取ってもらったレントゲン。骨には異常無かったので、痛み止のお薬をもらった。会社に出す診断書を見て何日休めるかなと思ったり。
日曜日の昼下がり。ぶらりと歩く吉祥寺の駅前は人で溢れかえっている。映画館。パチンコ店。ベーカリー。青果店。お蕎麦屋さん。気取ったカフェ。
ぱっと開いたスーパーの自動ドアから子供たちが溢れ出た。後から直ぐにお父さんとお母さん。幸せそうな笑顔。笑顔。笑顔。若いお母さんは多分あたしと同じくらい。お父さんは何をしてる人だろう。アイツみたいなバーテンダーなんかじゃないんだろうな。だってとっても幸せそうだったから。
バス通りをぶらぶら歩いて仲道通り。雑貨屋さんや美容院や可愛いハンバーガー屋さんを通り過ぎ、お洒落なインテリアショップに惹かれて入る。
ポップなプラスチックテーブルはちょっとケイコに合わないな。シックな黒いローテーブル。小さなガラステーブル。タンスをギュウって潰したような引き出しの付いた木製のテーブル。色々見て歩く。
「これいいかも」
大きなお皿を二つも乗せたらいっぱいになっちゃうかも知れないけど、小さな四角い木の枠を横に倒したようなシンプルな作りのテーブルは何故だかとてもあの部屋に似合ってる気がして、あたしはそれを買うことに決めた。
配送の手続きを済ませてぶらぶらと来た道を戻る。惣菜屋さんで何かを買って帰ろう。それからレコードショップでノラ・ジョーンズとアリシア・キーズのCDと、あのアパートに置いて来ちゃったお気に入りを幾つか。ケイコはなんて顔をするかな。呆れるかしら。きっと、しょうがないって微笑ってくれるよね。だって、今日はこんなに陽気な日曜日なんだから。