表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ジグザグげえむ  作者: MOJO
2/16

ジグザグ2

 赤ぁく咲いた梅の花が、ピンクの桜になったのは二ヶ月少し前のこと。今はすっかり緑になって、赤ぁく腫れたのはあたしの手首だけになった。そんな緑の、桜並木の商店街で薬局にスーパーとハシゴする。

 近くにあった公園のベンチで買ったばかりの湿布と包帯を右手首に巻き付ける。

「ボクサーみたい」

 包帯のバンデージを巻いた右の拳を空に向かってパンチした。無駄に手首が痛くなっただけ。無性に痛くて涙が滲んだ。


 馬鹿だった。今日の夕飯は最悪。だってスーパーで買ってきた鮭と明太子のお弁当。右手が痛くて箸が持てない。割りばし割るのも大変だったけど、まさか食べるのはもっと大変だなんてあんまりだ。

「テーブルくらい買えよお」

 お弁当とあたしの口までの距離はアイツと今のあたしよりも遠く思えた。床の上の鮭と明太子のお弁当は初心者サウスポーを嘲笑うかのようだ。摘まんだオカズもお米も口に運ぶ前に大抵が元来た場所へと溢れ帰っていく。残念なことに今夜の試合は敗色濃厚だ。日本人としては些か不本意ではあるが、背に腹は代えられないとはこういうときの事を言うんだなと実感する。

 あたしはキッチンへとスプーンを取りに旅立った。


「起こしちゃったかな」

「大丈夫。昨日は早く寝ちゃったから」

 仕事から帰って来たケイコからはお酒の匂いとタバコの臭いがした。あたしはケイコの匂いのするベッドから顔だけを出して小さな本棚の上に置かれた目覚まし時計を見る。小さい針が四を指していた。

「そんで、どうするの」

「んー。まだ考えてないなあ」

「そっか。まあ、良いけどね。どうせ寝るだけの部屋だし、あんた一人くらい居たってさ」

「ごめんね」

「いいよ。シャワー浴びてくる」

 ケイコは真新しいスエットを手にバスルームへと向かった。やがてシャワーの音が聴こえてくる。

 バスルームから聴こえてくる水音に耳を傾ける。十分ほどベッドの温もりを楽しんで、漸くあたしは体を起こした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ