ジグザグ13
「見付かった?」
「同棲前に住んでたとこが空いてれば良かったんだけど」
あたしは首を振った。
何度目かの日曜日。午前中を部屋さがしに出ていたあたしは、お昼に食べようとお肉屋さんでメンチカツとコロッケを買って帰ったところ。ケイコは幾分早起きで、珍しくキッチンでパンケーキを焼いていた。スウェットのパンツにTシャツのラフな格好が似合っている。バニラのような香ばしい匂い。
「時期が悪いのかな」
「そうね。二、三ヶ月早ければね」
まあるく不揃いのパンケーキが四つ。大小重ねてお皿に乗せた。バターと蜂蜜。チューブを搾って、たっぷりのホイップクリーム。カロリー爆弾。ダイエットの敵だね。
「たまにさ、無性に食べたくなるんだよ。甘いのが」
ケイコは嗤った。いいじゃない、気にするような体型でもないし。あたしは買ってきたコロッケとメンチカツをお皿に開けてから、ソースが無いことに気が付いた。
「私はいいよ、別にいつまででも」
「ごめんね。でも見付けなくちゃね」
パンケーキとメンチカツとコロッケ。変な組み合わせだけど、食べたらどれも美味しかった。
ケイコの部屋に少しずつ、あたしのモノが増えてきた。あたしの居場所が増えてきて、きれいだった場所が汚れたみたい。
生きるって何かを吐き出してる。独りよがりな欲望を。諦めがちな情熱を。独りだったら、それなりに上手く付き合える感情が、二人になるとなんでだろ、上手くいかないね。だから早く見付けなくちゃ。あたしの、あたしだけの居場所。