追憶の欠片a
燃える焚火の前で、老婆は座り込んでいた。ボロ切れのように薄汚れた服を着て、濁った瞳は燃える焚火を見つめている。手には、使い古された手帳が握られていた。
老婆は後悔と欺瞞の渦の中で生きてきた。しかしもうすぐ事切れる。彼女が"最後の一人"なのだ。他の者は何も遺さず、罪を背負ったまま朽ちていった。
――xxは、まだこの世に残っている。老婆が去ってしまえば、xxは独りになってしまう。時間は残酷だ。いつか真実が消え去り、事実が残る。それが老婆にとって怖くもあり、安心でもあり、最後の良心を生んだ恵みでもあった。
老婆は持っていた手帳を眺め、それを地べたに落とした。それから老婆は立ち上がり、焚火を足で乱暴に消す。明かりが消え、煙が闇夜に紛れた。
老婆は去る。月明りは彼女を照らさない。ふと空を見上げると、目の前には暗闇がたっていた。
申し訳ありませんが、あまり読者を獲得できなかったので、事実上、この話をもって完結とさせていただきます。ここまでご愛読ありがとうございました。続きはいつか書くかもしれません。
第二章として続きがありますが、第二章の真っ只中で完結状態にしてしまったため、事実上この話が最終話です。