表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
NON-ATTRIBUTE  作者: mikuru
始まり
5/11

2-2

時は、それから3日たった頃にやってきた


「そろそろ、使い魔召喚した方がいいんじゃないか?」


エルカさんの唐突な提案に、私達は驚いた。

わたしだけは真面目な顔にもう一度驚く。


「そうね~。そろそろ頃合いかしら?」


セツナ先生も頷くと、用意する書類があるからと外へと出て行った。

足音が聞こえなくなって、レイさんが私に耳打ちしてくる。


「ねぇねぇワカナン、大丈夫?召喚できなかったら最悪魔道士の資格無しで退学だけど……」

「だ、大丈夫…と信じたい、です。」


いつの間にか謎のアダ名を付けられていた。

使い魔召喚に魔力を使う、という話をナルハちゃんから聞いた時はそれはそれは絶望した。

私には魔力が微塵も存在していない。

リアスは「まあ大丈夫なのだ」とかって他人事だったけど…



「あ、そういえば…エルカさんやレイさんは使い魔いるんですよね?」

「あっ、ボク見てみたい…です」


不意に気になり話を振ると、ナルハちゃんが乗っかってきてくれた。可愛い。


「おう?もちろんだぞ!こいつには助かっている!」


待ってました!とばかりに立ち上がったのがエルカさん。

さっきからずっとウズウズしてましたもんね?


「召喚してやろー!『ザ・アペイル』!」


エルカさんが手を前にだし呪文を叫ぶと、綺麗な氷が地面から突き出てくる

教室がたちまち冷気に包まれ鳥肌が立った。

柱のようにどんどん突き出てくる氷は、徐々に人の形へと変化していき…


「呼んだか姉御!」



人の形が出来上がると、氷の塊は砕けて中から小さな男の子が出てきた。


金色の髪の毛。露出度の高い服から見えている胸元の蝶のタトゥー。

鋭い目つきで、顎についたピアスがキラリと光っている。怖い人や。



「こ、この子が使い魔…?もっと妖精みたいにちっちゃいの想像してた…」


身長はだいたい100cm前後だろうか。

羽根の生えた悪魔のような妖精のような…そんな感じを想像していたが、この世界の使い魔はまるで小学生。

ロリやショタが好きなお方には嬉しいかもしれないが…。


「こいつが私の使い魔であり相棒でもある、ジュリだ。」

「姉御の新しい後輩か?よろしくな!」


案外フレンドリーなジュリ君に握手を求められて、迷いながらも手を握る。

つ、冷たい…!

さすが氷属性の使い魔さん…!


「レ、レイさんの使い魔は…?」


小学生…いや使い魔とはいえ異性の手を握ってしまった。

そのことにドキマギしながらもレイさんに話を振った。



「へっ?あ、ああ…ウチもいるよ?」

「?大丈夫ですか?」

「全然?ちょっと寝不足で呆けてただけ。召喚してあげよう!『ザ・アペイル』」



なんだかぼーっとしていたらしいレイさんは腰に手を伸ばし、ポーチから筆を取り出した。


空中に絵を描き始め、一瞬にして描かれたのはネコ。

絵属性って何かと思ったけどホントに絵なんだ。

しかし、なんと言えばいいのか…レイさんのことはこれから異世界のピカソと呼ぼう。

私に見る目がないだけできっと世間的には…うん。


ぐだぐだ考えてる間に描き終わると、そのネコは輝きながら立体的になって…


「……あれ…、ネコ、ですか…?」


普通の猫になってしまった。

所々に青い毛が混じっている黒猫だ

退屈そうに欠伸なんてしているが…まさかこれがレイさんの使い魔…?


「あはは、違う違う。まあ猫みたいなもんだけどさ。

ウチの使い魔って光属性で、強化とか変身が専門なんだけど……めんどくさがりやでたまーにこんな姿になって、本人は猫の中でゆったりしてんだ。

こういうときは…えい、『メタモルフォーゼ』」


どっかの魔法戦士アニメで見たような呪文を唱えて黄色の絵の具を猫に塗る。

するとたちまち煙に包まれた。

煙が晴れると…

こちらもまた、全国のショタコンさんが喜びそうな身長。黒髪。しかも猫耳。

気ダルそうに伸びをして、数ミリも空いてるかどうかという目でこちらを見る。



「うにゃぁ~。…ちょっとマスター…。せっかく紅茶飲みながらのんびりしてたのに召喚しないでよぉ…。」

「はいはいごめんね?これがうちの使い魔のブルー、こんなんだけど割と強い。」

「なに~?……誰?こいつら」

「新しい後輩のワカナンとナルハタン、一応紹介したほうがあとで楽でしょ?共闘する機会もあるだろうし…」

「ふぅん、ねぇもう帰っていい?」


共闘とか物騒な言葉は聞こえないふりをしておく。


「おーブルーじゃん、久しぶりだな!挨拶代わりに拳で語り合おうぜ!」

「うわ、ジュリ…。うっさい。寄んな。香水くさい。めんどくさい。」


この二人は元々知り合いらしい。いや、もしかしたら先輩達と契約した時に初対面だったのかもしれないが…

ともかく仲は良さそうではない。うーん、難しい




「お待たせしました~」


と、そんなやり取りをしてる間にセツナ先生が戻ってきた。

手には何やら書類を抱えている。


「これ、使い魔召喚終わった後に書く契約書よ~。こういうところはしっかりとしておかないとね~。」

「私達は”使い魔”なんて呼んでるけど、つまりは別の世界に住む人間を自分の手下にしてる訳だから……。まるで奴隷の様に扱う奴もいるが、そういうのは契約破棄させられることもあるから気を付けろ」

「けっ、契約……」


先生と先輩方は真面目な顔でそう言った。

浮かれてはいられない案件らしい……

まあ、そりゃそうだよね?私なら突然巨人族とかに「貴方は私の下僕です」とか言われたら、全力で逃げる。

使い魔達の世界は皆小さいみたいだし、私たちは巨人に見えてたりして……?


「まぁ、とりあえずはお二人も召喚してみましょ~?」


先生は杖を取り出し、魔法陣を二つ書き始めた。

試験の時と同じ、黄色…光属性だ。

こういうのスラスラかけるんだ…

私なら100年かけても無理かも…


「え~と、こうで、こう……。は~い、できましたよ~それぞれ魔法陣の中心に立ってくださいね~」


指示された通りに行動する私とナルハちゃん。

足元では魔法陣が輝いていて、微量だが風が吹いていて暖かい。

魔法陣の中心に着いたとき、ニコニコモードの先生に手を取られ……

…………えっ先生?その手のものは何?ナイフ?ナイフじゃないそれっ!?


「ぎゃああああああああああああああああああああああ!?」


スパッと掌を切られた。

すげー血出てる。痛い。死ぬ。もうやだおうちかえる。


「床に血を垂らしたら私の言う事を復唱してね~」


泣いてる私を完全無視で事が進んでいく。

チラリとナルハちゃんを見ると、ちっとも泣いてない。つよい……

とりあえず、言われた通りに血を床に垂らす。

魔法陣の中心部分へ赤い雫が落ちていく…

一滴垂らすとかいうよりはもうドボドボ落ちてるんだけどね!

自分の血を見て少し気が遠くなる。大丈夫?私生きてる?


「いいですか~?いきますよ~?……『偉大なる魔王…』」


うわぁ、ものすごく厨二くさい。こういうの大好きだけど。



「「い、偉大なる魔王…」」

「『我は血を代償とし、同士を求める…』」

「「我は血を代償とし、同士を求める…」」

「『いでよ、我が同士!ザ・アペイル!』」

「「いでよ、我が同士!!ザ・アペイル!!」」



呪文を唱えながら、心配そうな顔でこちらを見つめるエルカさんとレイさんが視界に入った。

何より私が一番不安だ、これでもし何の反応もなければ即退学……行き場のない私は独りで路頭をさまようこととなる

それだけは、それだけは絶対に嫌……!!

復唱し終えた時、辺りはまばゆい光に包まれた。

審査の時のように、魔法陣が光りだしたのだ…



世界は白に包まれていて何も見えないが、ふと私の前に誰かがいるのが見えた。

先生じゃない、エルカさんでもレイさんでも……ナルハちゃんでもない。


……私?

自分のコンプレックスでもある癖の強い茶髪が揺れている

まるでドッペルゲンガー、鏡でも見ているかのようだ

私は優しく微笑むと、ゆっくりと口を動かした


「彼を、よろしくね」


声は聞こえなかったが、たしかにそう言った気がした。









その言葉を告げた後、すぐに私は消えた。

代わりに現れたのは……



「わ…!」


髪の毛は黄色とオレンジと緑とピンクとなんだがいろんな色が混ざってて…

服装はちょっと執事っぽいスーツに短パンの…



「hello!!キミが僕のご主人様かい?ミーはキョウタ、よろしくネ!」


なぜか英語混じりで話す少年だった

その場でクルッと一回転すると、バチコーンとウィンクしてみせる。


「私の……使い魔……!?」

「まあ、おめでとう~!成功したのねワカナさん!」


ホントに、ホントに使い魔?

どうやら召喚の儀式は成功し、無事に契約を結ぶことが出来たようだ


そう、私にも出来たんだ……!!



「えっと、私はワカナ・リビット、です……よろしくお願いします、?」


改まって挨拶をする機会なんてなかなかないものだから、つい疑問形になってしまった

するとキョウタくんは口を尖らせて、指を降った


「ノンノン!ワカナ?キミは僕のご主人様なんだから、敬語はノーだよ!キョウタって呼んでネ!」

「あ、ごめん…えっと、よ ろしくね、キョウタ。」


改めてそう言うと、キョウタは「イエース!」といい笑顔で答える

素直そうな子で良かった、召喚できただけでも奇跡なのに……



「そういえば…ナルハちゃんは成功した?」


ふと隣を見る。

これでもしナルハちゃんの半身がなくなってたら怖いけど、ちゃんと成功したらしくナルハちゃんの隣には小さな少女が立っていた。薄茶色の髪の毛を頭上でお団子にして、ふわっとしたシフォン生地のキャミソール型チュニックにデニムのショートパンツだ。


「へえー、ナルハちゃんのは女の子なんだぁ…よろしくねー」


そう話しかけるが、お団子ちゃんは黙ったまま…

ずっと顔を俯かせている

その目は、少し涙が浮かんでるようにも見えたが……



「……?」

「…さっきからボクも話しかけてるんですけど、ずっとこの様子で…。何かあったんでしょうか…?」


私らが悩んでいると、後ろからひょこっとキョウタが顔を覗かせた。



「ワオ!シンハじゃないか!キミも召喚されたのかい?」

「……(コクコクとうなずく)」

「ああ、ナルホドナルホド…。あれ、そういえばいつものは?」

「……(首を横に振る)」

「忘れてきたのかぁ。全く、キミはオチョチョコイさんダネ!」


多分、おっちょこちょいさんって言いたかったんだとおもう…

そっか、さっきのジュリ君やブルー君みたいに使い魔同士で知り合いなことは少なくないんだっけ。

ということはこの二人も元から知り合いだったのか……

というか、何考えてるのかわかるんだ……



「オーウ…、あ、ご主人様?ペーパーとペンはない?」

「え?…ああ、ノートでいいかな?」


そう命じられて、私はカバンから新品のノートを取り出す。

自分の―詳しくはこの世界の自分の―家に置いてあったものだ。

この世界の『ワカナ』の私物っぽいけど……い、いいよね?怒られないよね……?


「オーケー!彼女は恥ずかしがり屋さんでネ、いっつも筆談なんだヨ!」


なるほど、それで黙ってたのか…

そう言いながらシンハと呼ばれた少女にノートとペンを渡すと、シンハちゃんはノートに何か書き始め…


「……(『シンハです、よろしく』)」


そう小さく書かれたページを、私達に見せてくれた。

その字も、随分控えめで小さなものだった

このぐらいの言葉なら口にできそうなものだけどな…


「あ、えっと、ナルハです…。これから一緒に頑張ろう、ね…!」

「……(『こちらこそ』)」


ぐぅ、癒される光景だ……



「じゃあ契約書に記入、お願いね~」


何やら3ページほど束ねてある書類を貰う。

ちゃんとしっかりしてるんだなぁ…

と言ったら、「他の種族を手下にしてるんだから、そこはきちんとしなきゃ、でしょ?円満な関係をこれからも続けていくために必要なのよ~」ということらしい。


内容もちゃんと一読しなきゃとは思ったんだけど、こういうの苦手なのよね。

ゲームの利用規約とか、バーって飛ばしちゃうし…


とりあえずは名前と、住所…は寮でいいかな?

あとは…………



「右下、拇印忘れないでね~。インクは無いから自分の血でいいわよ~」

「また手切るんですか!?」



本日二度目の出血に、また涙した私であった




***




契約書を書き終えた後は、いつもどうりの授業をせずに寮に帰る。

これからは使い魔を利用しての魔法練習も始まり、大変になるから今日はゆっくり休みなさいとのこと。


ナルハちゃんと話をしながら部屋に戻ると、誰かが床に倒れていた。


「ああ~~~~もう嫌なのだ~~~疲れたのだああああ……」


…正しくはリアスが床に寝そべり唸っていた。


「…どうしたのさ?」


今日は使い魔召喚だ~って朝は元気だったのに…

とんでもない変わりようだ。

付き合いはまだ浅いが、こんなゴロゴロ転がるリアスなんて初めて見た。

………もしかして失敗して半身持ってかれた?


「……お前が考えてるような馬鹿な事にはなってないのだ…。ただちょっと人生に疲れただけなのだ…」

「それかなり重症じゃない!?」


詳しく話を聞くと、どうやら使い魔が生意気なやつだったらしい。

しかもその使い魔は王家の血を引き継ぐ優秀なもので、それを見たクラスメイトが使い魔の交換を迫ってきたという。


「使い魔は一度召喚したら一生だというのに、あいつら馬鹿ばっかなのだ…もう嫌なのだあのクラス…帰りたいのだあああ……」


…リアスは頭が良く、成績もいい。

魔力量もXクラスとまではいかないが上位レベル。

それで親のコネで合格したような奴らが色々と言ってきて、とてつもなくめんどくさいとのこと。

これ絶対私たち以外の友達いないな、大丈夫かよ……。


「ねえリアス!使い魔ってどんな子だったの?」

「はあ?召喚しろと?あいつを?」

「ボ、ボクも見てみたいです…!」


さすがのリアスも、ナルハちゃんに迫られては断れないだろう。


「…………わかったのだ。但しすぐ帰すからな?…『ザ・アペイル』」


重いため息を吐きながら呪文をつぶやくと、地にかざした手から水が溢れ出る

滑らかな手の動きに付いてくる水はとても美しく、つい見とれてしまう

そして前例の通り、水は人の形に変わっていき…



「……ちょっと、何で呼んだのよ」


現れたのは長い水色の髪、そしてエルフのような耳を持つ少女だった

明らかに機嫌が悪い、登場した瞬間主人であるはずのリアスをにらみつけている



「私のルームメイトを紹介するだけだ。…あー、こいつが私の使い魔のマオなのだ。」

「はぁ?何それ、たったそれだけのために私様が呼ばれたわけ?ふざけないでちょうだい」

「私、お前のマスターなんだけど?少しぐらい言う事聞いたって良いと思うのだ」

「良くないわよ!第一、あんたのことマスターだなんて認めてないわ!」

「あああもう!だから呼びたくなかったのだ!!!」



「あ、ああ…なんかごめん……」


どう考えても良きパートナーとは言えない会話を繰り広げる二人

それを見てなんとなく謝りたくなった

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ