表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔術師たちのカナデアイ~交錯する想いと戦い~  作者: 衣月美優
第一部 魔法学校の日常
5/657

第四話 カキとニコラス


 カキとニコラスはクラス内では知らない人がいないほどの犬猿の仲である。

 普段は冷静沈着でクールなタイプのニコラスもカキといるときは少々感情的になる。

 だが、この二人の言い争いは実にくだらないものばかりである。

 たとえば授業中。ニコラスは天才と噂されるだけあって、基本的に何でもすぐにうまくこなす。

 カキはそんなニコラスをあまりよく思っていないようだ。それはカキがニコラスと対照的だからだろう。

 カキはどちらかといえば落ちこぼれているほうだ。何をやらせても、できるようになるまでものすごく時間がかかる。

 〈神の子〉〈救世主〉と呼ばれるような存在であるにも関わらず、そのような落ちこぼれであることにカキは少なからずコンプレックスを抱いている。

 カキが〈神の子〉〈救世主〉であるというのは周知の事実である。それだけにカキは自分の実力に思うところがあるのだろう。

 カキがニコラスに対して抱いているのは、あんな風に何でもできるようになりたい、という憧れと、あいつに比べてオレは・・・という劣等感だ。

 だからカキはニコラスに対してすごく敏感なんだろうと思う。

 だけど、ニコラスがカキになぜそこまでつっかかるのかは誰もわからない。

 べつに放っておけばいいのに。言わせるだけ言わせていたって、ニコラスはなんてことないだろうに。




 今日はカキはイタズラはせず学校を出て、誰もいない広い場所で飛行魔法学の練習をしていた。

 何度も何度も失敗して、それでも何度も何度もチャレンジした。

「はぁー、くそ。何でできねぇんだ」

 小言を言いながらも頑張っていた。

 そして、やっと五分間浮かぶことができた。

「よっしゃ!」

 と思ったのもつかの間、あっという間に地面に叩きつけられた。

「うわぁ!」

 気を抜いたらすぐに落ちてしまう。トラヴィスの言うとおりだ。

 今度は気を抜かないように、ともう一度チャレンジした。

 そして、今度は五分を越えても落ちることはなかった。

 カキは少し飛んだまま移動してみようと試みた。

 慎重に、慎重に、集中しながら少しずつ進んでいった。

 そうしてさらに十分ほど経ってから、また落ちてしまった。

「くそー、またはじめからか」

 そう思ったとき、少し向こうにニコラスがいるのが見えた。

 どうやらニコラスも飛行魔法学の練習をしているようだった。

(あいつもまだできていないのか・・・?)

 カキは意外だと思った。

 あの天才と噂されるニコラスがこんな風にできないものがあって練習しているなんて、カキにとっては衝撃だった。

 しばらく様子を見ていたカキだが、突然ニコラスが消えた。

「え?」

 そして、うしろに気配を感じたが、足を引っかけれて派手に転んだ。

「うおっ!?」

「何コソコソ見てんだ」

 ニコラスが瞬間移動でカキの背後にやって来たようだった。

 カキは起き上がって

「べつにコソコソなんか見てねぇよ!」

 と、言った。

「誰にも言うなよ」

 ニコラスの言葉に、カキは頭にはてなマークが浮かんだ。

 それを感じ取ったのか、ニコラスはカキのほうを見ずに答えた。

「オレが飛行魔法学の練習をしてたことだよ」

 カキにはわけがわからなかった。

「は?何で?」

 ニコラスは相変わらずカキのほうを見ずに

「オレがこんな風に練習してるなんて知られたらカッコ悪いだろ」

 と、言ってきた。

「何でだよ?お前、できる魔術だってよく練習してるだろ?」

 カキのこの言葉にニコラスは目を丸くして、カキのほうを振り返った。

「は?何でお前がそんなこと知ってんだよ」

「え、だって、たまに見かけたし」

 ニコラスは唖然としていた。

 カキはカキでニコラスの反応にタジタジだった。

 しばらくの沈黙のあと

「そんなことよりさ、オレと競争しねぇか?そのほうが上達するような気がするんだけど」

 と、カキが沈黙を断ち切るために言った。

 ニコラスはしばらく考えたあと、少しだけだぞ、と言ってカキに付き合うことにした。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ