第三話 親友と好きな人
「マリアン、心の準備はいい?」
「うん、シーラちゃん」
放課後、シーラとマリアンと複数の女子たちが教室に残っていた。
シーラたちは恋バナをしていた。
シーラとマリアンは、せーの、と声をかけて自分の好きな人を暴露するところだった。
「ニコラス」
「ニコラスくん」
二人は同時に言い、お互いの答えに驚いた。
「え、マリアンも?」
「シーラちゃんもなの?」
二人の好きな人が同じだったという事実に驚くのは当然だ。しかも二人は入学以来の親友なのだから。
「うわー、好きな人被るとかやばくない?」
周りにいる女子たちの一人が言った。
だけど、シーラとマリアンは笑顔で手を取り合って
「大丈夫だよ。だって向こうも私たちのこと好きになるかわからないし、もしどちらかが選ばれたとしてもそれは喜ぶべきことだよ」
「それに、隠し事はしないっていうのが私たち二人で決めたルールだから・・・」
と、言った。
まぁそれもそうか、と周りの女子たちは納得したようだった。
「でも、ニコラスくんかぁ・・・彼のこと好きな子多いよね」
「なんでもできるもんね」
女子たちはさらに盛り上がって二人の好きなニコラス・サックウィルという黒髪の少し影のある少年の話をし始めた。
「でも、この間の飛行魔法学は苦戦してたみたいだよ」
この言葉にはみんなビックリだった。
ニコラスといえばどの魔法学もトップで、天才ではないか、と噂されるほどの実力の持ち主だ。
そのニコラスが苦戦するものがあるだなんて。
「結局、あの授業の間には飛べなかったんじゃないかな?」
「えー、意外ー」
「やっぱり誰にでも苦手なものはあるっていうことかな?」
みんな口々に話をして大いに盛り上がった。
最終的にはニコラスの話で終わってしまったが、やはり女の子。まだ三年生でも恋バナをしたがるものだ。
「ねぇ、シーラちゃん」
帰り道、マリアンはシーラに声をかけた。
「シーラちゃんはどうしてニコラスくんを好きになったの?」
マリアンはずっと気になっていた。
「うーん・・・実は入学するずっと前に会ったことがあるんだよね。まぁ、見かけたって言うほうが正しいんだけど」
シーラはマリアンの問いについて話し始めた。
「すっごいいい笑顔だったのが印象的だったんだよね。でも、入学して同じクラスになってみたら全然笑わなくて。それで、あのときみたいな笑顔を見たいなーって思って気になりはじめたの」
そう言って、マリアンは?と聞いてきたのでマリアンも話し始めた。
「私は入学して間もない頃、まだシーラちゃんとも話したことがなかった頃に、授業で二人組にならなきゃいけないときがあって。私、気が弱いから誰にも声をかけられなくて、それで余ったのが私とニコラスくんだったの」
シーラは、そんなことがあったんだ、と話を聞いていた。
「ニコラスくんってなんかクールな感じで、私すごく怖かったの。怒ってるんじゃないかって。でも、そのとき私が魔術を失敗しちゃってちょっと危なかったのね。それをニコラスくんが助けてくれて・・・なんだ、優しいんだって思って。それからかな、好きになったのは」
二人はそのあとも話続けて帰った。
「はぁー、やっと放してくれたよ、エベ先生。今日のお説教は長かったー」
カキは今日もイタズラをしたらしい。エベラルドに捕まって、休み時間の間ずっと、お説教をされたようだ。
「お前が毎日毎日イタズラしてるからだろ」
ビトの厳しい指摘にカキは、何だよ、と言って大きく腕を振ろうとしたら、人に当たってしまった。
「・・・!何しやがる、このバカ!」
「げ!ニコラス」
ビトは、あーあ、という顔で見ている。
「げ!とか言う前に謝れバカ」
「バカバカうるさいぞ、お前!」
「バカだろ?イタズラばっかしてる」
「はあぁぁぁあ!?」
カキとニコラスは言い争った。ぶつけたのに謝らないカキが悪いのだが。
「ねぇ、シーラちゃん。ニコラスくんってカキくんといるときはその・・・子供っぽく感じない?」
カキとニコラスの様子を見ていたマリアンが口にした。
シーラはマリアンの言葉に一瞬目を丸くして、すぐに
「あはは、私も同じ事を思ってた」
と、笑いながら言った。
カキはある意味、いろいろな人を惹きつけるところがある。
それは、ニコラスも例外ではないのだろう。