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魔術師たちのカナデアイ~交錯する想いと戦い~  作者: 衣月美優
第一部 魔法学校の日常
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第十六話 二人三脚


 カキがニコラスのもとへ戻り、採ってきた食料を見せると、案の定文句を言われた。

「お前は食料探しすら満足にできないのか。・・・もういい、お前は何もするな。オレ一人でやる」

 やっぱりカキは邪魔者扱いのようだ。

 カキは何も言い返すことができず、その日は終わってしまった。


 次の日、ニコラスは完全にカキはいないものとして動いていた。何もかも自分でしだしたのだ。

 カキは何をするわけでもなく、ただ森の中をさまよった。

「今日も食料探しか?」

 ビトがカキに声をかけてきた。

「いや・・・」

 と、カキが言葉を濁すと、ビトはそれで感じ取ったらしい。

「ニコラスとうまくいってないのか」

 ビトはそう言ってきた。

 カキは複雑そうな顔をして少しうつむいた。

「どうしたんだよ。いつもならもっとニコラスにぶつかっていくじゃねぇか」

 ビトはカキの様子を見てそう言った。

「そうだけど・・・」

 カキは言葉に詰まっていた。自分で自分の気持ちがよくわからないのだ。

「オレ、何でこんなに落ちこんでんだろ」

 カキはため息混じりに呟いた。


「認められたいんじゃねぇの?」


 ビトが言った言葉にカキは強く心を打たれた。

 そうか。認められたかったんだ。こんな自分でもちゃんとやれるんだぞって。

 そう思うと心がスッと軽くなるような感じがした。

「オレ、ニコラスに認められたい。飛行魔術のレースのときの借りを返したい」

 カキはそう言葉にした。

「じゃ、頑張れよ。あと、一個だけアドバイスしてやる」

 ビトはそう前置きして言った。

「このサバイバル合宿はペアとの協力が必要だ。だから、お互いに信頼関係を結ばないとやっていけないぞ」

 カキはビトのアドバイスを聞いて、ニコラスのもとへと戻っていった。




「ニコラス、協力しよう!」

 カキは力強くニコラスに言った。

 だけど、そんなことをニコラスが受け入れるわけがない。

「は?お前なんかと協力できるわけないだろ。食料も満足に採れないお前と」

 案の定、すぐに拒否された。

 でも、カキだってそんなことは想定済み。こんなことくらいで諦めるわけがない。

 ビトのおかげでいつもの調子が戻ってきた。

「けど、一人でやるのだって限界があるだろ?足手まといかもしれないけど、二人でやれば多少はやりやすくなるはずだ」

 カキはとにかく納得してもらうために言葉を並べる。

「オレ、頑張るからさ。サポート程度でもいいんだ。何かオレにもやらせてくれ」

 最後は頼み込むように言った。

 ニコラスはカキの言動に驚いていたようだったが、やがて口を開いた。

「────・・・火、つけろ」

「へ?」

 カキはすっとんきょうな声を出した。

「その薪に火、つけろって言ってんだよ。飯作るために」

 ニコラスはそう言ってきた。

「火ぐらいならつけられるだろ」

 カキはパッと笑顔になって

「おう!まかせろ」

 と、答えた。


 その後は二人で協力しつつ、うまくやっていた。協力と言っても、カキは本当に雑用のようなものばかりだったが。

 ニコラスはカキにでもできる簡単なことしか頼まなかった。それでも、カキは満足だった。邪魔者扱いされるよりはずっといいからだ。

 二人なりの協力の形だから、お互い楽に動くことができる。

 だけど、やっぱりニコラスの役割のほうが多くなるから、ニコラスはカキに簡単だけど役に立つ魔術を教えた。

 カキのレベルに合わせてくれたので、カキはスムーズに覚え、すぐに実行した。

 二人はやっと足並みを揃えることができたのかもしれない。


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