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魔術師たちのカナデアイ~交錯する想いと戦い~  作者: 衣月美優
第一部 魔法学校の日常
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第十一話 ペアになっても犬猿の仲


「みんなペアを見つけたな?それじゃ、移動するぞ」

 エベラルドの言葉でカキたちは教室を出て、魔術練習場へと向かった。

 そこは大きなコンクリート造りの部屋だ。一学年分の数があり、合宿でもそれぞれクラスごとに分かれて使う。

「それでは、とりあえずペアで魔術のぶつけ合いでもしようか。先生が言った魔術を相手に向けて使うんだ」

 エベラルドの言葉で、やっと本当に実技合宿がはじまった。

「タイミングを合わせることがこの練習の肝だぞ」

 そんなことを言われて、さっそく物体を生み出して飛ばす魔術からはじめた。

 カキとニコラスはここからすでに相性が悪い。

 ニコラスはこんな魔術は簡単すぎるのでたくさん飛ばしてくるが、カキは手際が悪いのでニコラスのものがぶつかってくる。

「痛てー!ちょっとストップ!」

「お前がもっと手際よくやれよ、バカ」

 言い争いながらやっている。

 カキはやられっぱなしみたいなものだが。

「ちょっとはオレに合わせてくれる優しさはないのか!?」

 カキはそう叫んだがニコラスは、バカに合わせてたらバカになる、と言って飛ばしまくってきた。

 そんな二人を見てエベラルドは、あの二人はダメだな、と思った。

 だけど同時に、同じ戦闘魔術師を目指す者同士だからこれもいい勉強だろう、とも思った。

 その後、ほかにもいくつか魔術の撃ち合いをした。

 どれもこれもカキはほとんど撃たれっぱなし、やられっぱなしでボロボロだったが。


「初日からひでぇな。ボロボロじゃねぇか」

 昼休み、食堂で昼ごはんのカレーライスを食べながらビトが言ってきた。

「ホントだよ。あいつ、加減ってものを知らないんだから」

 カキはぶつぶつ言いながらご飯を口に運んだ。

「最終日までもつのか?その状態で」

「これが毎日だったらもたないな、絶対」

 ビトの質問にカキはもうどうでもいいという様子で答えた。

 声をかけたのはカキの方だから、もう諦めてやっていくしかない、と腹をくくった。

「何でニコラスに声をかけたんだ?」

 ビトが疑問を口にした。

 それはたぶん、ほかのクラスメイトも思っていることだろう。

 カキは口に運ぼうとしていたスプーンを置いて答えた。

「べつに。ただ、あいつが一人だったから声をかけただけだよ。いいんだ、オレは。ニコラスにいくらやられようとかまわないし。お互い、気を遣わなくてもいい仲だし」

 カキの言葉に、ビトはしばらく間をおいてから言った。

「ま、たしかにニコラスと一番親しいのはお前だろうな。あいつがほかのクラスメイトと話しているところは授業で必要なときしか見たことないし。まぁ、あれは、うわべの姿にも感じるがな。本当のニコラスがどういう人物なのかは知らねぇけど、お前にはけっこう本心を見せてる気がするんだよな」

 相変わらず、人のことをよく見ている、という感じの言葉だ。

 ニコラスは近寄りがたい雰囲気があるから誰も近づかないし、見向きもしないという感じだ。ニコラスに好意を抱いている女子以外は、だが。

 そんなニコラスのことを見ているとは、さすが教師も認める観察眼の持ち主、というところだろう。

 だけど、 少し間違っている。

 ニコラスは本心を見せてなんかいない。普段みんなに見せている姿がうわべの姿っていうのは本当だが。

 ただ、ニコラスらしくいられてるという意味では当たっているのかもしれない。ニコラスらしくなのか子供らしくなのかは定かではないが。


 結局、昼休みのあともカキはニコラスにやられっぱなしでさらにボロボロになってしまった。

「明日はもっとちゃんとやってくれよ、バカ。まぁ、無理だろうけどな」

「んだとぉ?お前こそオレに協力してやろうっていう優しさを見せてくれよ」

「はっ、お前がもっと成長すればいいだけだろ?」

 最後の最後までカキとニコラスは言い争っていた。

 相手のことをどう思っていたとしても、結局のところこの二人はこういう仲でしかいられないのだろう。


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