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アンチソーシャル・ロア  作者: 消毒マンドリル
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第5話 新たな能力!DNAバレット!

俺ちゃんこと作者は初戦闘の後に勝利を修めた主人公を褒めたりパワーアップアイテムを貰えるのはお約束だと信じているぜ!

「うん・・・・・。」


柳田は研究所の治療室にあるベッドで目を覚ました。


「かっちゃん。気がついたみたいだな。もう1週間も意識が無かったんだぜ?もう死んだんじゃないかって心配しちまったよ!」

「そ、そんなに!?」

「お前の学校にはちょっとした事故っていうことで話をつけてきたから心配すんな。」

「新雅のヤツからは話を聞いているぜ。初めての戦闘、なんとか勝てたってよ。」


意識を取り戻した柳田の最初の視界に入ってきたのは神雅とドーベルであった。


「叔父貴・・・。ドーベルさん・・・。」

「かっちゃん、まずは俺から礼を言いたい。お前があの戦闘で頑張ってくれたお陰で国から俺たちの研究が認められたんだわ。」


新雅は嬉しそうな口調で国の上層部に成果をベタ誉めされ、更に高級料亭で接待を受けた事を自慢げに語っていたが、ドーベルに肘で脇腹を小突かれると、一瞬身を震わせ、話を中断した。


「さて本題に戻すぞ。そのお陰で、今研究所に資金援助がされて研究がすげぇ捗ったんだ。ついこないだまで雀の涙程度のチンケな予算でやりくりしてたから感動はデカかったぜ。そうだ!その捗った研究の成果をかっちゃんに見せてやろうと思ってたんだよ!」


神雅は半透明のタブレットのような端末を取り出し、柳田の前に置く。

起動音を立てて端末が映し出したのは、ライ・フルードのキャノン砲の砲身だった。


「叔父貴、このキャノン砲がどうかしたのか?」

「実はな、例の研究成果でコイツに新たな機能が加わってパワーアップしたんだよ!」


キャノン砲の画像が、無機質な壁に囲まれた研究所の実験室をサムネイルにした動画に切り替わった。

部屋の中心にはクレー射撃等で使われる円形の射撃ターゲットが数体配置されている。

その前に、機械に固定されたキャノン砲の砲口が射撃ターゲットに向けられていた。


「始めぇっ!」


研究員のものと思わしき通った男性の声がすると、濃い青色のキャノン砲の砲身が蛍光色の緑色になり、キャノン砲と同じ色の球状になった液体が撃ち出された。


ジジュウッ!!!


緑色の液体が命中したターゲットが溶けてグニャリと変形し、グズグズになった。

今度はキャノン砲が緑色から白と黒のカラーリングになり、鉄色の弾丸が撃ち出される。


バァン!バゴン!


乱暴な轟音が鳴り響き、ターゲットに大きな風穴が開けられた。


「こ、これは・・・」


普通はエネルギー弾しか出ない筈のキャノン砲から異質な物体が撃ち出されているのを見て柳田は驚く。


「ハイクリーチャーにはDNAタンクといって、ソイツ自身の形質や付与された能力についての遺伝子情報が入っている器官があるんだ。それで、そのDNAタンクから抜き出した攻撃方法に関する遺伝子情報を元に弾薬を開発したのさ。まぁ分かりやすく言うと、ハイクリーチャーの攻撃手段を自分のモンにできるってことだな。」


動画が切り替わり、二つのマシンガンの弾倉のようなものが表示される。


「弾薬はライフメタルで出来ていて、この二つはソレが入っているモンだ。今現在、俺たちがDNAタンクを回収したハイクリーチャーであるアシッド・フロゲロスとローグ・ゼブロイドの2種類があり、それぞれ、強酸、徹甲弾の能力を持っている。」

「俺の意識のない合間にそんなモン作ってたのか・・・」

「パワーアップくらいしとかないとこの先ヤバいと思ってな。かっちゃんのあの苦戦のしようからして絶対必要だと確信したぜ。それに、せっかく頑張ってくれた甥っ子に対する礼もしとかないといけないしよ。」


神雅は端末を仕舞うと、柳田に全てやり切ったような顔をして見せる。


「叔父貴にしちゃ意外とマトモなこと言うじゃん。見直したぜ。」

「日頃からちょいとフザけて生きてりゃそう言われるのも無理はねぇか!ギャハハハハ!」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


所変わって三録学園の空手部の部室の一角。


バァンッ!


「オラァ!もっと強く打てェ!」


パイプ椅子に座っているジャージを着た体育教師、生田活戒(いくた いけかい)の指示のもと、リングの上で数組の部員が大量の汗を流して組手に励んでいた。


「ハァ・・・ハァ・・・」


一人の部員が肩で息をしている。かなり疲労がたまっているようだ。


ブウン・・・


一人の部員、鈴木の拳が相手の部員の胴に当たるとゴキリと嫌な音を立てた。


「ぐぁっ・・・・!」


鈴木が正拳突きを繰り出した手首を抑えて地面に膝を着く。


「お、おい鈴木!大丈夫か!?」


膝をついた鈴木に部員達が駆け寄ってくる。


「おい!何をしている!試合を続けろ!」

「先生!鈴木が拳をやってしまったみたいです!」

「何?拳をやっただと・・・?馬鹿野郎!そんなもん根性で治せ!一週間後には大会が控えているんだ!」

「し、しかし・・・先生・・・!」

「ケガなんてもんは基本的に耐えれば治るもんだ!そんなもんごときで何手間取っている!」


生田が鈴木の周りを囲んでいる生徒に向かって怒鳴り散らした。


「で、でも・・・もし悪化したら・・・・」

「そんなことなんて無い!全ては根性でどうにでもなる!今すぐに練習を再開し・・・・」

「すいませんが、先生。鈴木のことについては俺に任せて頂けますか。」

「あ?」


生田と部員たちの間に一人の小柄な少年が割って入ってきた。

空手部の主将、大山達連である。


「大山、これはお前が口出しするまでもない問題だ。さっさと部員の指導に・・・」

「いえ、お言葉ですが、これは部長として部員の安全を守るために口出しせざるを得ない問題です。」


大山は鈴木を連れ、部室の出口へと歩いて行く。


「おい!大山!部活中に抜け出す、それも部長であるお前にそんなことが許されると思っているのか!」


生田が怒鳴り声を上げている時には、大山は部屋の外に出ている頃であった。


「部長、ありがとうございます・・・俺なんかの為に・・・」

「良いんだって!気にするなよ!」

「すいません・・・元は俺が根性無いのが全て悪・・・」

「だーっ!もう鈴木!これ以上自分をディスって責めるのはもう止めろよ!お前はどこも悪くねぇ!」

「・・・・。」

「それに、根性で全て何とかなるっていうのはたまたま何とかなったんであって必ずそうなるとは限らねーんだ!もっと自分を大切にしろ!」

「は、はい・・・」

「さ、とにかく保健室に着いたぜ。ゆっくり休んで来な。」


大山は鈴木を保健室の前まで連れてくると、ドアをノックして中へと入った。


「失礼します。空手部主将の大山ですが、部員が拳を痛めてしまったので手当ての方を頼みます。」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


~放課後 夕方 三録学園食堂~


「てな事があって大変だったんだよな~!」


学生食堂で大山は柳田と今泉に今日の出来事についてこぼしていた。


「大山・・・相変わらずすげぇ行動力だな。」

「部長として当然のことをしたまでよ!なのに生田の野郎ときたらさー!あんなもん根性で治せたものをとか言いやがるんだぜ!」

「怪我を気力で治せなんて、なんて時代錯誤な考えなんだ・・・。」


柳田は生田の制止を振り切って部員を保健室に連れ込んだ大山の行動力に驚き、今泉は生田の考えに呆れていた。


「ま、それはともかく今日は部員を救った大山の行動力に乾杯だな!おい、大山好きな飲み物頼んでいいぞ!」

「おう!それじゃお言葉に甘えて・・・リンゴサイダーとコーラ、ジンジャーエール・・・あとそれから・・・」

「一本だけって付け足しときゃ良かった・・・」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「畜生が!ったく最近の若い奴はどうして聞き分けが悪いんだ!」


地元の居酒屋で、生田は今日の件のウサ晴らしで酔い潰れていた。

自分のコミュニケーション能力の低さと指導力の無さ、常識の無さを棚に上げて大声で愚痴を吐く彼に周囲の人間は眉を潜めていた。

こんな面倒くさい酔っ払いに関わりたくないのか、注意する者は誰もおらず、遠巻きからヒソヒソと文句を言ったり目を逸らしたりしているだけである。


「うるせぇぞ!このオヤジが!ブチのめすぞ!」


ぼやきのうるささに我慢できなくなった一人の若いサラリーマンが生田に怒りの声を上げた。


「なんだとテメェ!」


サラリーマンのぼやきが耳に入った生田は怒りの形相で彼に掴みかかる。


「す、すいませんっ!」


体格も良く力も強い生田に全力で胸倉を掴まれたサラリーマンの顔からは怒りの色が消え失せ、怯えの色一色に染まった。


「おいコラ!さっきの態度はどうしたんだよ!俺をブチのめすだと?やってみろよオイ!」

「い、いや・・・その・・・」

「俺はなぁ!全日本高校空手大会で1位取ってんだ!テメェみたいなモヤシなんざ一発ぶん殴るだけブチ殺せるんだよ!」


サラリーマンは戦意を完全に喪失し、ただ一方的に生田に情けなく揺さぶられるだけの木偶の坊と化した。


「お、お客様!店内での乱暴行為は・・・」

「邪魔すんじゃねぇ!教師としてこの若造に礼儀ってもんを教えてやってるんだ!」


店員や近くの人間が止めに入ろうとしたが、怒れる生田の勢いは誰も止められなかった。


「す、すいませぇん!先ほとどの無礼は謝りますからぁ~!」

「いや、テメェを完璧に躾けるまでは許さねぇ!一発愛のムチをぶち込んで・・・・」


サラリーマンの顔面に正拳突きを叩きこまれようとしたその時、外を巡視していた警察官が店の騒ぎに気付き店内に入り、生田の拳を掴んで止める。


「ちょっとそこのお父さん、署で詳しく話を聞かせて貰ってもいいかな?」

「うるせぇ!テメェにとやかく言われる筋合いはねぇ!」


バキィッ!!!


「グェブッ!」

「ケッ!こんな所で捕まってたまるか!」


生田はサラリーマンから離した手で警察官を殴り倒し、その場から逃走した。


「俺は、悪くねぇ・・・!俺は・・・!」


夕闇に染まる歓楽街を生田は走り抜けていく。途中で何人かとぶつかったが御構い無しに、自分の犯した罪から逃げる為に。

体育教師と言えど流石に中年の体に激しい運動はきつかったのか、居酒屋からかなり遠ざかってくると、休憩がてらにダッシュからウォーキングにチェンジする。

だが、運の悪いことに人通りの少ない橋の下に差し掛かってすぐに、運悪くガラの悪い若者の肩にぶつかってしまった。


ドンッ!


「おい、オッサン。肩の骨が折れちまったよ。病院代よこせや。」

「やかましいわボケ!テメェみてぇな社会のゴミにやる金なんざ一円もねぇわカスが!」

「上等だァ、この老害が!力づくでも奪って・・・」


若者が拳を振り上げて生田に殴り掛かろうとしたその時、突如後ろから赤い光線が若者に浴びせられた。


「あばぁぁぁぁぁぁ~!?ばばばばば!ばぶぅ!ばぶぅっ!おっ!かあさんっ!」


ドサッ


光線を浴びた若者は全身を痙攣させて地面に倒れこむ。


「ど、どうなってんだ・・・こりゃあ・・・」


生田が呆気に取られていると、倒れた若者の後ろからサングラスを掛けた小柄な男が現れた。

片手には銃のような武器が握られており、おそらくそれから光線を発射したのだろう。


「あー、まったく。重要なターゲットに万が一のことがあっちゃ困るっつーの・・・」


男はヒヒのような顔を生田の方に向けると、その方向へと歩み寄る。


「よう、そこのアンタ。」

「あん?」

「さっきから随分とお怒りみてぇ~だな?」

「なんだテメェ、シバキ倒されてぇか!コラ!」

「まぁまぁ、落ち着いて聞いてくれよ。・・・そのキレっぷりだとアンタ、思い通りにならん事があったんじゃねぇのか?」


再び殴り掛かりそうな勢いの生田を男は手で制する。


「ああそうだ!だがそれがどうしたんだよォ!」

「俺はなァ、アンタみたいに理不尽な目に遭ってムカついてる連中を見るとよォ・・・どうにも助けてやりたくなっちまうのよ・・・」


男が刃物のような犬歯を見せてニヤリと笑う。


「思い通りにならんこと、気に食わねぇ奴をねじ伏せられる力が、欲しくねぇか?俺様なら、その力をアンタにくれてやれるぜ・・・」


ー思い通りにならんこと、気に入らないヤツー


生田の頭の中に、一人の人物の顔が浮かぶ。

自分の命令を無視して、部員を保健室に連れ出した大山の透かした顔、反抗するような目。

殴り倒して根性を叩き直してやりたくて仕方がないアイツ。

奴をギッタギタに打ちのめしてどちらが上かを分からせられるのならどんなに怪しい誘いにでも乗ってやる。

憎き大山を叩き伏せたい思いで一杯になった単細胞な彼の心は、葛藤することなく目の前の男の誘いを受諾した。

 

「おうおう、何でぇそのツラはよぉ。大丈夫だ!大金払えとか何かを犠牲にしなけりゃならねぇってことなんざちっともねぇよ!ノーリスクでデカい力が手に入るんだぜ?コイツぁビッグチャンスだろうがよ!」

「・・・分かった!俺にその力をくれ!気に入らねぇあのクソガキに身の程を分からせてやれる力が欲しい!」

「契約成立だなァ!ガーハーッハッハッハァーッ!」


夕闇に染まる橋の下で、男の不気味さと豪快さが入り混じった高笑いが響き渡った。

学園物で教頭やPTA会長みたいな管理職に並んで嫌な役に大抜擢されてる体育教師とか見るけど、ああいう脚本作る人体育教師に恨みでもあるのかなって思う。

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