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アンチソーシャル・ロア  作者: 消毒マンドリル
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第4話 初狩猟

いよいよ主人公の初戦闘だ!よぉ~くその雄姿を焼き付けておくが良いッ!

昨日の一件以来、柳田はバイトで新雅の研究所で荷物運びなどの雑用とバトルスーツ「ライ・フルード」を装備して戦闘訓練を行うようになっていた。

最初はあまり上手く行かずに一番弱い訓練用無人バトルアーマーに逃げている所を追いかけ回され、そこから捕まってタコ殴りされていたが、逃げている時の動きをヒントに、「相手の攻撃から逃げつつ、相手の急所を撃ち抜く」という肉薄戦法を編み出し、例の無人アーマーに見事リベンジを果たしたのであった。

さらに柳田の快進撃は止まらず、あの日以来、練習相手にする無人アーマーのレベルを徐々に強いものにしていき、ついに一番強いものを相手にして勝つようになっていたのである。


「ググゥッ!」


二足歩行の巨大な耳のないイヌの様な機体、世界で開発された無人バトルアーマーの中で最強との呼び声が高い「ヘルハウンド」がライ・フルードに向かって上半身の剛爪を振り下ろす。


「遅い!」


柳田が身に付けているライ・フルードはその一撃を咄嗟に避け、ヘルハウンドの脇腹に数発の光弾を撃ち込む。

撃ち出された三つの青白い閃光は暴れ狂う鉄の獣の左脚を見事に撃ち抜き粉砕した。


「グガァァァァァゥッ!?」


轟音を立てて、片足を失いバランスを崩したヘルハウンドが地面に転倒した。

ライ・フルードはその一瞬を逃さず砲口の照準をを倒れた対象の頭に合わせて放つ。


「グググッ・・・グァガッ!?」


倒れたヘルハウンドは再度立ち上がりライ・フールドに襲い掛かろうとするが、頭を撃ち抜かれ、短い断末魔を上げて機能を停止した。

ライ・フルードはその最期を見届けると、光の塊となり、装備者である柳田の持っている、USBメモリーのような形をした機器、デバイスに吸い込まれて行く。

そして、完全に吸い込まれた光の跡には余裕そうな顔の柳田が立っていた。


「ブラボーだぜぇ!かっちゃん!」


訓練の一部始終を見ていた新雅が拍手を柳田に送る。


「全くすげぇ成長ぶりだな!」


ドーベルは感心したように腕を組んで何度も頷く。


「無人機の中で一番強いヘルハウンドをたった二週間の訓練でブッ倒しちまうとはなァ!こんな優秀な甥を持って俺は鼻が高いぜ!」

「そんなことないよ。叔父貴。叔父貴のアドバイスとドーベルさんの指導が上手いお陰でここまでできた様なものだよ。」


肩を叩かれた柳田が謙遜ぎみに二人の称賛に応えていると、大変なものを見つけたような様子の研究所の所員が訓練所の扉を開けて現れた。


「所長!ハイクリーチャーが出現した模様です!」

「何だと?ソイツの詳しい場所と様子は分かるか?」

「ハイ!セントラルジャパンの七番街で破壊行為を行っております!」

「そうか、分かった!かっちゃん!最速出撃命令だ!」

「国には試用運転という形でこういう事が起きた時に出撃しても良いっていう許可も出ているぜ!」


興奮気味に新雅とドーベルが柳田に言い放つ。


「おっと!出撃について言い忘れてた!訓練所の隣にある出撃ベースでスーツを装備しな!」

「そうすりゃそれに反応してエレベーターが動いて屋上まで行くから、そこからスーツ内のコックピットにターゲットの情報が表示される!そして後はその方向に行けばオッケーよ!」

「ありがとよ!叔父貴!ドーベルさん!」


足音を立てて柳田は訓練室を飛び出して行った。

彼が完全に去ったのを確認すると、新雅は拳を握りしめ、甥の勝利を強く願い、ドーベルは期待するかのようにニヤリと笑った。


「せっかくのお披露目なんだ・・・!上手くやってくれよ・・・!かっちゃん・・・!」

~~~~~~~~~~~~~~~~


ドッグァーンッ!ドッゴォォォォンッ!


「う、うわぁぁぁ!な、なんだぁ!?」


きらびやかなありとあらゆる装飾で彩られたセントラルジャパンの七番街。

ここはゲーセン、映画館、キャバクラ等といった娯楽施設が集まった世界有数のエンターテイメント都市である。

そんな都市の真ん中を二足歩行のシマウマの様なハイクリーチャーが暴れていた。


「オラオラオラァ!逃げろ逃げろォ~!」


シマウマの様なハイクリーチャー「ローグ・ゼブロイド」は流暢な日本語を喋りながら、逃げ惑う人々を追い散らし、周囲の建物を殴り倒して破壊していた。


「ひ、怯むなァッ!撃てェッ!撃てェッ!」


市からの要請を受け、駆け付けた警察官達がゼブロイドに向かって一斉に発砲する。


「豆鉄砲で俺を殺そうだなんてナメられたモンだなァ!オラァ!」


ガァンッ!バゴォォォン!


ゼブロイドの狂暴な脚がパトカー群を宙に蹴り上げて粉砕していった。


「うわぁぁぁぁッ!そ、総員退避ーッ!」


粉砕されたパトカー群を見て戦意を喪失した警察官のリーダーが退却命令を出す。命令を受けた部下の警察官達は慌ただしい様子で逃げ去って行った。


「ギャハハハ!国家の犬だけに尻尾を巻いて逃げていやがるぜぇ!ざまぁ見ろォ!さぁて、邪魔者は居なくなった訳だし再びここいらをブチ壊してやるとするかァ!」


ガッ!ドン!バガァンッ!


鮮やかできらびやかな歓楽街の建物が次々と破壊されてゆき、ほんの数十分程度で完璧に残骸の山となった。


「ハッハッハッハ!手抜き工事のモンばかりで殴り応えがねぇなァ!脆すぎて話になんねェよ!」


ガレキに変わった歓楽街を見てゼブロイドは高笑いする。


ーやべぇ、やべぇよ・・・最高だ・・・!ー


ゼブロイド、雨崎馬太郎はこの上ない快感を覚えていた。

マンドリルに連れられ、ライフメタルパーツの影響で高い身体能力が付与され、ハイクリーチャーに変身できるように改造された彼はまず、自分の弱味をダシにしてカツアゲをしてきた同クラスの不良をボコボコにして、今まで奪われた金を取り返し、逆にATM代わりにした。

次は、自分を今まで卑下してきた両親と弟を殴って今までの事を謝罪させ、奴隷のようにコキ使った。

力を得たことで彼の人生は大きく変わったのだ。

今までずっと虐げられる側だった彼が虐げる側となった時の勢いは凄まじく、今まで押さえつけられていた反動も加わり、彼の性格は激変した。

気に入らない物は暴力に訴えて破壊し、自分に逆らう人間がいれば恐怖で従わせる。

それが彼の新たな生き方となった。

そして今、自分が変わるきっかけを担ったマンドリルの忠実な手駒となり、命じられた破壊活動を行っている。

全ては、自らを理不尽な目に遭わせた社会をこの手で破壊するために。


「ヒャーハハハハハ!最ッ高だなァー!壊れろォーッ!もっと良い音立てて俺を喜ばせてくれよォ!さァてお次は・・・・」


ゼブロイドは瓦礫の山にまだポツンと残っているゲームセンターを見やると、悪意を孕んだ凶悪な笑みを浮かべた。


「あのゲーセン、確か陰キャのクズ共の溜まり場だったよなァ?俺も「アイツ等」と「同類」だった頃幾らかお世話になってたモンだ・・・。だが!」


ゼブロイドは助走をつけ、ゲーセンに向かって突撃していく。


「俺はもう「アイツ等」とは違うんだ!生まれ変わったんだ!もう俺は「同類」じゃねェ!忌々しい過去の記憶なんざァ破壊するに限るぜェェェェーッ!」


拳を思いきり降りかざし、ゼブロイドゲーセンを破壊しようとする。


「ヒヒィーッ!喰らいやが・・・が、がぐあっ!?」


だが、どこからともなくゼブロイドの蛮行を阻止するかのように、左肩を青白い光弾が貫いた。それによる痛みにゼブロイドは怯み、地面にもんどうり打って転がる。


「がぁあぁあぁぁっ!?なっ、何だぁっ!?」

「おい!そこの馬面野郎!」


患部を押さえて立ち上がったゼブロイドの前に現れたのは、右手の砲口を構えたライ・フルードであった。

自身に注意を引かせるためにマイク機能を全開にしている。


「これ以上の街の破壊を止めろ!大人しく投降・・・・」

「ケッ!意地でもするかよ!カスが!」


迅い音を立て、ゼブロイドの拳がライ・フルードの腹部に撃ち込まれる。

不意を突かれたライ・フルードはそのまま一撃をモロに喰らってしまった。


「グハァッ!?」


攻撃を喰らったライ・フルードが短い苦悶の声を上げてよろめく。


「ぐっ、うぅぅうぅっ・・・」

「もう一発サービスしてやらぁッ!」


ヒュンッ!


ライ・フルードは顔面に拳を炸裂させられる寸前の所で身体をよじり回避する。


「テメェ、せっかくの人様のサービスを受け取らねぇとはいい度胸してるじゃねぇか!」


コックピットでは、柳田が歯を食い縛り、腹の痛みに耐えていた。

バトルスーツはパイロットの動きと連動して動く様にするために、神経とスーツの回路をリンクさせる仕組みに作られている。

その為、機体が受けたダメージはパイロットにも伝わってしまうのだ。


「テメェが休んでいるのをずっと見てられる程俺様は気が長くねぇんだよ!」

「ッ!」


なんとかダメージを堪えて次々と唸りを上げて放たれていく拳をかわし、ゼブロイドに光弾を撃ち込むが、圧倒的なスピードの差があるため全く当たらない。


「そんなヘタクソな撃ち方で俺を倒せるかよォ!いい加減サンドバッグになれやぁッ!」

「(くっ、なんて速いんだ・・・・!訓練所のヘルハウンドのがまるでただの木偶人形だ・・・!)」


ライ・フルードは攻撃を始めは余裕で避けきっていたものの、次第に避け方もどこかぎこちないものとなっていく。

バトルスーツとパイロットが共有するのはダメージだけではなく、疲労もある。

激しい動きを繰り返した柳田はほぼ疲れきっているため、それが現れたのだ。


「ヒャーッハッハッハァーッ!どうしたァ?もうバテてきてやがんのか~?」

「・・・・・ッ!」


柳田の体を激しい倦怠感が襲う。指一本動かすのが精一杯な程だ。

 

「(ハァ・・・ハァ・・・体中の至る所が・・・動かない・・・もう・・・限界だ・・・すまない・・・叔父貴・・・ドーベルさん・・・あれだけ期待させておいて・・・俺はもう・・・ダメかもしれない・・)」

「オウオウオウオウッ!限界みてぇだなァ~!それじゃいっちょトドメといくかぁ~!」


ゼブロイドが拳を大きく振り上げた。全体重を乗せた打撃でライ・フルードを叩き潰すつもりだ。


「死ねやぁぁぁぁぁぁッ!」

「!」


振り上げられた拳を見たライ・フルード、柳田の頭に閃きの閃光が走った。


「(あの動きは大振りでかなりスキがある・・・!イチか、バチか・・・いや、確実に成功させなければいけない・・・!)」


ぐったりと上体を下ろし、膝をついていたライ・フルードは渾身の力を振り絞って立ち上がる。

そして、右手の砲口をゼブロイドに向けた。


「また豆鉄砲でも撃つつもりかァ~?んなもん簡単に・・・・」


どうせ当たりもしない豆鉄砲でも撃つのだろう。そんなゼブロイドの思慮は一秒足らずで裏切られることになった。


ヒュンッ!


「え?」


ズドンッ!


「ガアッ!?」


右手のキャノン砲は、光弾を撃つことなくゼブロイドの腹を深々と突き刺さしていた。

スキを見つけた柳田は最初、この姿勢から光弾を撃って攻撃しようとしたが、撃つのにやや時間がかかる上にキャノン砲を構えた時点で光弾で攻撃すると読まれてしまう可能性があるためこの案を廃棄し、その代わりに光弾を放つ振りをして砲身で突きさし攻撃をするという意表を突いた攻撃で怯ませ、さらなる攻撃チャンスに繋げることにしたのだ。


「こ、ここで終わってたまるかよ・・・・!」


メキメキと音を立ててゼブロイドの腹に砲身が突き刺さっていく。


「グ、グアアアア・・・・!」


ゼブロイドは必死になってもがくが、余計に痛みが増す。


「ハァッ・・・!うっ・・・!ハァッ・・・!」

「グオッ・・・な、なぁ・・・待ってくれよ!お、俺の話を聞いてくれ!俺は本当はこんなことしようとするつもりはなかったんだ!」


体を砲身で突きさされている痛みで完全に戦意を喪失したゼブロイドは弱気な本性を現して命乞いをして同情を求めようとする。


「・・・・・。」

「お、俺はいつも社会で理不尽な目に遭ってばかりいてよ・・・それで・・・鬱憤が溜まっていたもんだから、キレちまってよ・・・あ、あんたも理不尽な目にばっかり遭っていたらムカついて、こうしてやりたいって思うだろ?」


ズギギギギッ!ズブンッ!


「グギャアアアアアアアッ!?」

「・・・あぁ。確かに理不尽な目に遭えばムカつくぜ・・・・」


ライ・フルードの砲身が更に深くに突き刺さり外皮を貫き内部に到達した。突き刺さっている根元から灰色の血潮が漏れ出す。


「だがな、お前みたいな真似はしない。」


キィィィン・・・


砲身にバトルスーツ内のエネルギーが集中する。


「お、おい!待ってくれぇ!俺はまだ死にたくねぇ!」


ゼブロイドが悲痛な叫びを上げる。だが、ライ・フルードはそれを冷ややかに頭部のアイカメラから一瞥している。


キィン!キィン!キィン!キィン!


「嫌だ!嫌だ!死にたくねぇ!死にたくねぇ!嫌だ!嫌----!」


バギョォンッ!

ボァァァァァァンッ!


砲身から高出力のエネルギー弾がゼブロイドの内部に放たれた。

逆三角形の体系が徐々に丸みを帯び、真球に近い形となった時に、凄まじい轟音を立てて爆散した。


バラバラバラバラッ・・・・


「や、やったぜ・・・、叔父貴・・・ドーベルさん・・・・」


あたり一面にゼブロイドの破片が降り注ぐのを見届けると、疲労の限界を迎えたライ・フルードは体制を崩し、仰向けに倒れた。


~~~~~~~~~~~~~~~~


この戦いを上空で見物していた者が居た。

あのヒヒの様な顔の男である。


「流石チンケな素材で作っただけのことはある。まったく弱いな。」


男は円盤の中のコクピットに映し出されているゼブロイドの生首を見て呆れた口調で呟く。


「国が向かわせたんだが何だが知らねぇがあのバトルスーツみてぇなのもアレはアレであんな雑魚に手こずってるようじゃまだまだってとこだな。しかし、どうもアレは本来の力を出せ切れていなかった感じがある・・・また調査するとするか。」


男はライ・フルードの画像をデータ化して保存していると、最後の画像のライ・フルードの背面についた小さなマークを見つけた男の表情が一瞬強張った。


「む、このマークは・・・・新雅のヤツ、また俺様にちょっかいを掛ける気だな・・・・まぁ良い。あの「大日本大学の天才」と言われたオマエが作り上げたモンだ。このドクター・マンドリル、期待させて貰うとするか。」


男は最後の画像を保存し、画面を操縦用に切り替えると、円盤は何処かへと飛び去って行った。

五月病を発症してしまい中々更新できませんでした(鼻ホジ)


キャラクター紹介


雨崎馬太郎あめざき またろう

年齢:17歳


性別:男

身長:169cm

体重:52kg

出身国:日本

好きなモノ:特になし

大切なモノ:特になし

嫌いなモノ:いじめ、学歴差別、出来の悪い自分


何やってもダメな落ちこぼれの少年。幼少の頃から周囲に出来の悪さを馬鹿にされ続けたため精神が歪み、社会が自分を虐げているという妄想に取りつかれ、グレて反社会的行動を起こして社会に打撃を与えてやろうと考えていたが、結局実力と度胸が足りず出来ずじまいで鬱憤が溜まっていたが、謎の男、ドクター・マンドリルにそこを付け込まれ、ハイクリーチャー「ローグ・ゼブロイド」に改造される。


ローグ・ゼブロイド


変身者:雨崎馬太郎

身長:650cm

体重:8.5t


スペック パワー:4 攻撃力:4 防御力:3 敏捷性:8 スタミナ:5 知力:2 勇気:1 

特殊能力・武器:スピードを生かした打撃攻撃


雨崎が変身するシマウマ型ハイクリーチャー。

自分が有利な立場にいると強気になるが、不利になると命乞いをしだす小悪党的な性格をしている。

マンドリルの命令を受けてセントラルジャパンの7番街を破壊していたが、ライ・フルードとの交戦の末に倒された。

倒される間際には、同情を得て見逃してもらおうと命乞いをするが、ウサ晴らしという身勝手な理由で街を破壊していたことで柳田の怒りを買い、ライ・フルードの高出力エネルギー弾を体内に喰らい爆発四散した。

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