本題
アキトは砂漠での暮らしとか食べ物とか魔物の事とかを久しぶりの家族と屈託の無い会話をした。
突然、玉座の前に立つアキトの真後ろに置かれた椅子に無言のまま座った。
「ぺぺ。居たのか。久しぶりだな。」
「アキト様。お久しぶりでございます。」
スっと玉座のシルフィードの側に現れた紳士服をきた初老の人物。
アキトに椅子を準備した人物。
初代魔王の右腕。旧魔王城の執事長。
ぺぺロンチーノ・ギルダース。
『影の主』との異名を持つ。闇魔法の使い手だ。
アキトが帰って来たので、家族水入らずの再会の邪魔をしない為に出てこなかったのである。さすがは執事長。
実は、このぺぺはププの実兄である。
ププに容姿は似ており、ププを老けさせたらぺぺ見たいになるはずである。
ゼノが魔王を引退してからも真摯にゼノに仕えている魔人。
この旧魔王城には20名ほどの執事やメイドが働いている。
皆、初代魔王を慕って?付いてきた者達ばかりなのだ。
しかし、その実力は皆折り紙付きでSSランク以上の猛者ばかり。
その取りまとめ役。どれほどの実力が有るのかは言うまでもない。
「ププは真面目に仕えていますでしょうか?」
「相変わらずだ。」
「そうですか。帰って来たら少しお灸を据えますかな。」
「そうしてくれ。」
どちらかと言うとアキトの方がププを困らせているのだが、今は置いておこう。
「申し訳ございません。ゼノ様。身内の話をしてしまいまして。」
「かまわん。」
「ゼノ様。本題の方を。」
「うむ。アキト。結婚はいつだ?早く曾孫の顔が見たい。」
バコッ!!!
シルフィードが回し蹴りでゼノの顔面を王の椅子にめり込ませた。
「話がぶっ飛んでいますわ、アナタ。話しになりませんわよ。」
「。。。」
ゼノは王の椅子に頭がめり込んでいるので、聞こえているのか定かではない。
どうやらこの妻達は足技が得意みたいだ。
「アキト。ゼノじゃ無理そうだから私から話しますわね。」
アキトはあんたがしたんだろ?って心でツッコミをしながらシルフィードの言葉に頷く。
「3年前にアキトが帰って来た時も言った話よ。アキトも分かっているとは思うけど、貴方はもうすぐ20歳になるわ。この世界では16歳から結婚は出来るの。少しは候補は出来たかしら?」
そう。この世界では男女共に16歳から結婚は出来る。
魔族にはこの世界の常識と言うものが無いのだが、アキトに早く結婚をさせてあげたいと祖父母は思っているので、わざわざ人族やエルフ族の常識を言ったのだ。
まー。本当は曾孫の顔が見たいと言うのが本心だろうが。
「あー。1人いる。」
アキトのまさかの言葉にシルフィードは目を見開いて驚いた様子である。両親は「フンっ。当然だな。」見たいな顔をしている。
「ど!ど!どこのどいつだ!アキトをた、たぶらかした女狐は!」
バキっ!
いつの間にか復活したゼノに再度回し蹴りを見舞ったシルフィード。
「アナタ。言ってる事が支離滅裂なのよ。黙ってなさい。ところでアキト。その候補の女性は誰なの?」
「あー。メアルって言う女だ。本名かも分からん。」
「そー。。。」
シルフィードは期待していたのだが、アキトの答えに少し愕然とする。
「でも、アキトはその女性の事が気になってるんでしょ?」
「まーな。一目惚れだ。」
アキトに想い人が出来た。これだけでも進歩だと思わないといけない。
3年前にアキトに話した時は、女性に興味があるかどうかさえ分からなかった。
「あー。なんかめんどくせーな。」とか「女ならセリーでも良いだろ?」とか適当な事を言っていた。
セリーは顔を赤くしていたが、女性は物じゃないとその時は教えてあげたぐらいだ。
「一目惚れなのね。安心したわ。アナタが普通の男の子で。どんな女性なの?」
「うーん。ばーちゃんとかーちゃんと足して2つに割った感じだな。中央の王国で総帝ってのをやってる女だ。」
「「え?」」
シルフィードとミユキは2人して突拍子のない言葉に驚いた。
自分達の名が出て来て嬉しいのだが、総帝と言う言葉に信じられない顔をしたのだ。
「ア、アキト。総帝と言うのは知ってる?」
「あー。知ってるぜ。ほらあの現魔王軍と戦ってるって言う世界ギルドの帝達をまとめる役だ。」
「「。。。」」
シルフィードとミユキは固まった。
アキトは現在の魔王軍では無いにしろ魔族は魔族だ。見た目は人族なのだが計り知れない魔力量と魔族の土地、北の赤の大地に住み尚且つ初代魔王と2代目魔王の血を引く者。
到底、この恋が成就する事は叶わないと2人は思う。
「「さすが、アキト!」」
ゼノとジルの声が初めて重なった。
バコッ!ズガッ!
初代魔王と2代目魔王は妻達によって倒された。