ピラミッド
アキトは6歳となった。
あれから1年。来る日も来る日も魔物と戦った。
そのお陰でアキトは急激に成長した。
魔力も10倍以上となり、この一帯に出てくる魔物では全く歯が立たない。
今では魔物もアキトの強さが分かったのか、この砂漠に来た当初より襲ってくる数が少なくなっていた。
「なんか最近暇になったよなー。」
間の抜けた声で砂漠に寝転がっている。
「ちょっと遠くまでこの砂漠を探索してみるか。」
この赤の砂漠は広い。
地球で言うアフリカの砂漠以上の広大さがある。
アキトは南へ南へ移動した。
この砂漠の中心部へ向かって歩いている。
見渡す限り砂、砂、砂。変わり映えのしない景色。
3時間近く歩いただろうか。
「ん?なんだあれ?なんかあるぞ?」
遠くに微かに見える物。魔物では無さそうだ。
人工物?形からしてその様に見える。
アキトは歩く速度を上げた。だんだんソレが見えてくる。
「でっけー。なんだこれ?」
そこには地球で言うピラミッドの様な三角の建造物。
天を突くような高さだ。
明らかに、人工的に造られた物。しかし、ここは死の砂漠。赤の砂漠なのだ。SSSランクの無類の強さの魔物達が徘徊する場所。
人がいるなんてこれっぽっちもアキトは想像していなかった。
「でけー家だな。魔王城ぐらいあるんじゃねーかな。でも、入り口がねーな。ぐるっと回ってみるか。」
警戒心の欠けらも無いアキト。建物の周りを調べてみる。
「おっ!犬みたいな石像が2体あるぞ!ここが入り口見てーだな!」
テンションが上がってきた。
巨大な石の扉の前には2体の石像。犬の様な形をした人の顔にも見えるソレは不気味な威圧感がある。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴー
「な、なんだ?なんだ?」
『我等はこの墓に眠る王を守護する者なり。ここに立ち入ることは許されぬ。立ち去れ。』
突然、2体の石像は動き出した。デカい。
四足の足で立ち上がった石像の背丈はおおよそ20m。全長30m以上のバカでかい犬だ。
コイツらの話から要約すると、おそらくこの建物の中の王を守っているのだろう。番犬ってやつだ。
アキトは番犬から瞬時に距離を取り、『タロウ』をボックスから呼び出した。
「立ち去れって言われたら、逆に興味が出て来ちゃうんだよ!」
雷王級魔法「キングコングボルト」
雷を纏ったゴリラが上空に現れ、その巨木の様な両腕を2体の番犬に叩きつけた。
ドッゴーン!
地面が揺れる衝撃だ。
魔法で先ずは率先する。アキトの戦いの友好手段。先手必勝だ。
『ぐぬっあっ!聞かぬと言うなら駆逐するのみ!』
2体は同時に動き出す。全く同じ動き。一糸乱れぬ動き。
アキトの左右に別れた2体は、同時に口から黒い玉を高速で飛ばしてきた。
ドッカーン!ドッカーン!
砂漠の地面が破裂する。アレはまともに食らったらヤバい。
アキトは空高く舞い上がって冷静に判断した。
先ずは1匹。
膨大な魔力を込めて構えた『タロウ』を横薙ぎに払う。
異様な魔力を纏った紫の音速の斬撃が1体の番犬に襲いかかる。
しかし、仕留めたと思ったアキトは舌打ちをする。
なんと番犬は寸前のところで音速の斬撃をかわしたのだ。
奴らのスピードは尋常じゃない!っと気付いた時に背後から殺気を感じた。
シュッバッ!
背中を切り裂かれた!もう一体が上空にいるアキトの背後に跳躍し爪で切り裂いたのだ。
「くそっ!油断した!連携も半端ねー!」
アキトはくるっと身を反転し、再度『タロウ』を構えた。
「くらえ!」
斬撃の嵐。
空中にいる番犬と地上にいる番犬に、数え切れない斬撃を放つ。
それは、まさに紫のカマイタチ。
「オラオラオラァ!オラオラオラァ!オラオラオラァ!」
最初の斬撃よりも魔力を少なく『タロウ』に注ぎ、連続で斬撃を放つのだ。致命傷にはならないだろうが、かなりのそっ制になるだろう。
「へっ!以外に脆いな!犬っころども!」
そこには、ボロボロで石の外壁の剥がれた番犬が2体フラついている。
『ここは通さん!我等は砂漠の王の守護者!』
「言っとけ!これで終わりだ!」
闇神級魔法「ダークネスフェアリークイーン」
死を予感させる無数の黒い蝶が辺り一面を飛び交う。
そこに、人間大の黒い妖精が現れた。その表情は不気味な笑顔で血の気が引くほどだ。
突如、守護者の番犬達はもがき苦しむ。
「何が起こっている?」番犬達は理解が出来なかった。
我等は砂漠の王より造られし存在。絶対の守護者。この砂漠の魔物どもに、ここを幾千年通した事は1度もない。
それが、この人間無勢に、小童に一方的にやられている。
不気味な武器に神級魔法を使う童子。
守護者達は眠る王に謝罪をした。
『我等の王。絶対の主、砂漠の王。申し訳ございません。。。』
ボロボロと崩れる巨体。赤の砂漠に守護者の身体は倒れるのだった。




