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6話 王都の現実

 襲撃されている馬車を助けるイベント発生中!


 俺は馬車の少し手前で空中から降り、収納から木の棒を取り出すと馬車へ向かって駆ける。

 地面を走るのも木の棒を使うのも目立つのを避けるためだ。目立つのはいつでも出来るので、今んとこ自粛なのだよ。あと殺すのもしたくない。


 別に良心が咎めるとか不殺主義というワケではない、馬車の護衛で路銀を稼ぎたいのだ。

 生かして追い払えば、また襲ってくる可能性があるので護衛に雇ってくれるかもしれないという計算なのだ。

 護衛に雇われれば、ついでに馬車に乗れるかもしれないしね。ぶっちゃけ徒歩は飽きた。


 馬車を襲っているのは白い被り物をして顔を隠した白装束の7人、それに相対しているのは護衛っぽい5人。倒れている5人も馬車側の護衛のようだ。

 襲撃側の腕を見るによほど上手く5人の奇襲をしたのだろうが、残りの5人とほぼ互角で襲撃側の7人は馬車に近付けずにいる。


 今助けますよ~。

 馬車にはきっとお金持ちとか偉い人が乗っていて、美少女の娘が一緒に乗ってたりして、ありがとうございますナミタロー様、なんて言われて惚れられちゃったりするんだ~。

 じゃなかったら王族とか貴族の有力者で、俺の強力な後ろ盾になっちゃってくれたり、有力者とのパイプ役になってくれたりするんだ~。


 などとアホな妄想をしながら、襲撃者へホイホイ近づく。護衛の人への一言も忘れない。

「助太刀します!」

 この一言が無いと、新手と間違われるので実は大事だ。返事が無いのは、たぶん頼りなく見えたからなのか、助けが入るとは思ってもみなかったからだろう。 とりあえず近くの敵2人の腹と右肩をそれぞれ木の棒で突く。ん? ちょっと強かったかな? すっ飛んで倒れしまった。足は無事なんだから、ちゃんと逃げろよ。


 つーか、良く見たらこいつら盗賊っぽくないなー、政治がらみの襲撃とかかな?

 まぁ、それはそれで……もう介入しちゃったし。


  残り5人。弓矢を射ているヤツがいるな、セオリー通り先に潰しておこう。『光学迷彩』と『存在撹乱(ジャマー)』を使用して近づく。


『光学迷彩』は光を操作できる聖属性の魔法で、自分を中心とした周囲の空間背景の光の屈折を変更し自身の後方を見せる事で、あたかも透明になったかのようになる魔法だ。


存在撹乱(ジャマー)』は相手の周囲にある、音・光・匂い・魔力・気・振動などの感知系情報を掻き乱すスキルで俺のオリジナルなのだが、効果としてはちょっと豪華な目眩ましだ程度だ。魔法として創ったはずなのだが、なんでだかスキルとして定着してしまった……解せぬ。

 あとスキルの効果が名前負けしてる気がするが、変更できない仕様らしい。今度からもっと良く考えて名前付けよっと……。


 と、長々と説明したが、別に矢など当たってもどうということは無いので、実は無意味だ。

 ええ、そうです。やってみたかっただけです。

 だって初めての対人戦だったんだもの、それっぽいコトやってみたいじゃん! ギャラリーだって見てるし!


 で、何が起きたのか解らず止まってしまった相手の弓を棒でへし折ったところで、目的達成。

「全員下がれ!ここは退却だ!」

 襲撃者達のリーダーらしき男が指示を出す。統率のとれた動きで退却する。きれいな引き際だ。

「そこのお前! 人助けをしたつもりだろうが、そいつを生かしておくと大勢の人が不幸になるのだ! 悪いことは言わん! 次は助けるなよ!」

 堂々と捨てゼリフを残して去る襲撃者のリーダー。そんなコト言われても普通馬車が襲われたら助けるでしょうが。テンプレなめんなよ。

 あとその捨てゼリフ、自分を正義だと思い込んでるテロリストにも使い回しできるヤツだかんな。


「あんた強いな、助かったよ」

 護衛の人が話しかけてきた。

「まあ、助けられる時は助け合わないとな。それよりケガ人の具合はどうだ? 実は俺、薬士なんだがポーションは要らないか? 店売り価格で売ってやるぞ?」

 話しかけてきた護衛の人が、そうきたかという苦笑いを浮かべる。


 と、馬車のほうから、重々しい声で返事がした。

「悪いですが、あなたの助けたこの馬車は、エゴキン商会の馬車でしてねぇ、ポーションは間に合っているんですよ。すみませんねぇ」

 ふぉっふぉっふぉっと笑いながら、黒光りする巨体が馬車から出てくる。細い眼は眼光鋭く唇はブ厚い、耳たぶの大きさがやたら目立つふてぶてしいおっさん……。


 アレ? ひょっとしてこの人、エチゴヤ系?

 え~と、王族貴族系の偉い人は? 感謝されて恋に落ちる美少女は?

 てか、さっきの襲撃してた人達、テロリストじゃなかったみたいだね……。


「代わりと言っては何ですが、王都までこの馬車を護衛してもらえませんかねぇ。もちろん護衛料はお支払いしますよ。 あぁ、名前も名乗ってはおりませんでしたねぇ、私はエゴキン商会の会頭でダクア・エゴキンと申します」

 ねっとりと偉そうな感じで自己紹介される、少しは頭下げろよエチゴヤ。


「俺はナミタローです、護衛の件は承りましょう。こちらも目的地は同じですし、やつらがまた来ないとも限りませんしね。それにしてもエゴキン商会の会頭さんは、あなたのような方でしたか」

 エゴキン商会の名は、片田舎のノバ村でもちょっとだけ聞いている。もっともいい噂は無いが。


「おや、私共の事を御存じでしたか。ええ、私がエゴキン商会の会頭ですよ。どのような人物を想像なされてましたので? あまり良い噂は流れていないようですので、鬼のような人物とでも思われてましたかな? エゴキン商会は正直な商売が信条ですから、もちろん偽物ではありませんよ」

 ふぉっふぉっふぉっと笑って話すが、ニセモノとは思わんよ。いかにもな感じだし。


「片田舎に住んでたもので、それほどの話は耳に入りませんでしたけどね。もっと厳めしい方かと思ってたんですよ、勝手な想像ですが。それと本物かどうかは……そうですね、助けた謝礼を含めた護衛料の金額で判断させていただく事にしますよ」

 プライドをちょっとだけ刺激し、護衛料の上乗せを狙う。向こうにも意図はバレバレだろうが、態度からして自分の力(=金)を他人に見せつけたいタイプだから、乗ってくるはずだ。


「ふぉっふぉっふぉっ……いいでしょう。無事王都に到着させていただけたならば、あなたの思う以上に本物だという事を証明してさしあげますよ。楽しみにしておいて下さいねぇ」

 さすがエチゴヤ、乗ってくれやがったよ。 こりゃ相当荒稼ぎしてるな。

 俺は、ちょっと驚き見直した風の表情でニヤリと笑みを浮かべながら……できてるよね、表情。鏡が欲しいわー。

「そういう事なら、楽しみにさせてもらいましょう。道中はゆっくりなさって下さい、先程のような連中が来ても、お騒がせはさせませんよ」

 デキる男の声で言いきってやる。 俺は声は良いのだよ、声は……。


 ほう、言いやがったなという顔で目を細めると

「それでは、お願いしますねぇ……ところで、それはミニチュアドラゴンですか? よく懐いているようですねぇ、売る気がおありでしたら高く買い取りいたしますよ?」

 ドラ吉の存在をすっかり忘れてた、戦闘中から今までずっと肩の上……寝てるし。いい度胸だな、おい。

「こいつは売る気ありませんよ、大事な相棒ですからね。一人旅には丁度いい相手なんですよ」

 色々と重宝するしね。つか、ドラ吉のこと狙ってるんじゃなかろーな……一応、役に立たないペットのふりをさせとくか。

「そうですか、残念ですねぇ。気が変わったらお知らせください。さて、ここで長話をするのも時間の無駄ですし、そろそろ出発しますか」


 こうして俺はエチゴヤ達と王都へ向かうコトとなったのであった。

 くそ、馬車には乗れなかったか。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 王都バイリバル・テラルに着いた、城壁がデカい。5~6mくらいかな。街をぐるりと囲んでいるので、作るのはけっこうな一大事業だったろう。

 ここまで2日余りで到着したが、襲撃者の再来襲も無くヒマだった。話し相手に護衛の人がいなかったら、またヒマを持て余してたところだ。道中、薬草もほとんど見かけなかったし。


 さすが王都らしく人や馬車の出入りが多いが、門でのチェックを分散して行っているので案外出入りはスムーズだ。

 エゴキン商会の馬車は顔パスらしく、荷物はチェックすらされてない。他の馬車はチェックされてるので、コレは裏で何かが動いてるおかげだろう。


 ノバ村で身分証も作ってたし、俺もついでにノーチェックで入れるかと思ったが、ドラ吉が引っ掛かった。ドラ吉はペットとはいえ魔物枠らしいので、従魔登録が必要だったとのこと。うっかりしてたで済んだのは、エチゴヤの顔のおかげかな?


 本来従魔は繭化(魔物を従魔にするとできるらしい)しないと街中に持ち込めないのだが、特に危険に見えない場合はそのままでも可だそうだ。ドラ吉は当然OK。

 可愛く化けてるもんなー、こいつ。

 あとでドラ吉も繭化できるのか聞いてみたら、野球のボール程の大きさの白くて丸い繭球になった。色が紅白に分けられていないコトに、少しだけホッとしたのは何故だろう?


 エチゴヤの護衛料は、2万ゴルダ。金貨2枚貰った……円換算で20万、さすがに驚いたらドヤ顔された。その上、ドラ吉の登録料500ゴルダもついでに払ってくれた。 よっ太っ腹。

 今のところ俺にとっては、エチゴヤさんはいい人だ。主に金払いが。


 そうだ、ついでにこの世界の通貨について説明しておくと

 1ゴルダ=10円程度というのは以前説明したが、銅貨=1ゴルダ 青銅貨=10ゴルダ 銀貨=100ゴルダ 大銀貨=1000ゴルダ 金貨=10000ゴルダ となっている。ちなみに大銀貨には金が一定量含まれているので、銀貨の10倍なんて嵩張る大きさではない。

 こういう事はおつかいする為に、ちゃんと師匠達から教わっている、お金は大事ですから。


 さて、エチゴヤさんとも別れて、これからどうするべ。 実はノープランな俺。

 本当はしばらくの間ポーション売りをしながら王都観光のつもりだったのだが、王都の周りにポーションに使える材料がほとんど無いのでアテが外れてしまったのだ。


 魔道具でも作ろうかなー、それとも冒険者登録して魔物退治でもするか。

 ただ、魔道具も王都じゃどんなモノが売れるのか判らんし、相場も知らん。それにうっかり規格外のモノを作って目立つと、後々うっとおしくなるし。近場の魔物退治のほうが、無難かな。


 そう考えて観光がてら冒険者登録をするのに、ギルドというモノを探したのだが見つからない。

 まぁ。異世界に来て初めての大都会はあまりに物珍しく、まじめに探してないから見つかるワケもない。

 ドラ吉もあっちこっちキョロキョロ見廻してる、こっちも見られてるみたいだけど。見られているのは主にドラ吉だ。

 そりゃそうだよね、おっさん見ても面白くないもの。


 街中の印象は、都市の広さそのものは城壁で囲む必要があるからかさほど広くは無く、人口密度もそれほどではない。

 だが道幅が狭く馬車・馬・人が一緒に使うので、やたらとゴチャゴチャしている印象だ。


 さっきから街の商業・職人区を観光しているせいか、活気はものすごく感じる。例えるなら地元の商店街の年に一度のお祭り、といった感じだろうか。洗練されてはいないが、賑やかなのは確かだ。

 風情のある街並みをちょっと期待していたのだが、ほとんどの建物が俺の目にはありきたりに見えてしまっている。建築に特別興味があれば、別だったのかもしれないけど。


 途中大きな教会を見つけたので入ってみる、さすがに建築物としても観光する価値のありそうな建物だ。

 こんちはー、造物主さんいますかー。


 ………………


 結論:造物主さんは居ませんでした。


 教会の中には神様の像が7体あったのだが、どれも造物主とは違うみたいだ。

 他の像とは大きさの違うのが2体あったが、ひとつは主神の女神『アルミトゥシュ』もうひとつは、この地域の神様『ドルァポタ』だそうだ。主神を除いた6神はそれぞれ同格で、それぞれの地域を管轄してる。

 と、教会の説明書きに書いてあった。地域制なんだね、この世界の神様。


 観光に夢中になってる間に、日が傾いてきた。やべ、早く宿確保しないと……その前に何か食うか。

 ちょっとした広場にラーメンの屋台が出てる、アレにすっか。地元民らしき客が途切れてないし、たぶん不味くはないだろ。


 ちなみにこの世界の食はとても充実している、ぶっちゃけ日本にいた時の基本的な食べ物は全部ある。

 ラーメン・カレー・味噌・醤油・カツ丼・牛丼・ケーキ・チョコレート・スナック菓子……etc.

 食に関した知識チートをやりたい人には、決してオススメできない世界なのだ。

 造物主さん、聞いてますか~?


「塩ひとつ、あと煮玉子2つ乗っけて」

 注文完了~。

「あいよ、見ねえ顔だが観光かい?」

 おやっさんが手を止めずに話しかけてくる。


「まぁね。やっぱ王都は違うねー、珍しいモノも多いし。観光するのにも目移りしちゃってるよ」

「やっぱりそうかい、ちなみにどっからだい?」

「クジャの大森林から」

 そう、師匠達の塔がある森は、クジャの大森林というのだ。


「ほう、そりゃずいぶん遠くから来なすったな。クジャの大森林と言やぁ、確か賢者様達が住んでるんじゃなかったか?」

 さすが師匠達は有名人、賢者の称号は伊達じゃない。

「ええ、その賢者様達のところにいたんですよ」

「するってーと賢者様達の弟子かい?こりゃ大した客が来たもんだ、賢者様達の弟子なら大魔道士だな」

「んなわきゃないでしょ。弟子と言う名の使いっ走りが、駆け出しの魔道士に看板替えただけですよ」

 笑って返すと

「それでも賢者様達の弟子だろ? その辺の似非魔道士なんかよりよっぽど稼げそうだ。ほい、お待ち」

 塩ラーメンが出てきた、スープは澄んでる。香りは魚貝系だな。煮玉子のうち1つがお椀で別に出てきているのはドラ吉の分だ、おやっさん解っていらっしゃる。


「俺もそうは思ってるんだけどねー。一番得意なのがポーション作りなモンだから、観光しながらだけど王都でやるのは難しいなーと思ってたトコなんだよ。ホラ、王都の近くって素材少ないから、売るのはともかく作るのには向かないでしょ」

 ドラ吉に麺とスープをちょっとだけ分けながら、おやっさんに愚痴る。


「あー、そうかもしんねぇな、この辺は魔物も少ねーし。素材は無さそうだな」

「なるほど、ズルズル、やっぱ魔物も少ないんだ、ズズー」

 美味いなこのラーメン。ドラ吉も俺の左腕の上で、喜んで食べてる。おやっさんは別にかまわねーよと言ってくれたのだが、屋台のカウンターにペットを乗せるのはさすがに気が引ける。


「ごっそさん。美味かったわー」

 代金72ゴルダを置く。

「まいど、気に入ったんなら毎日食いに来てもいいぞ」

 おやっさんが代金を数えて笑う。

「イヤ、他に食ってみたいのもあるし、さすがに毎日は来れないから。でもまた来ますね、ごっそさん」

「ありがとよ」

 屋台を離れようとして、思い出した。


「そうだ、ここら辺で適当な宿知りません?」

 宿のコト忘れてた。

「なんだ、まだ決めて無かったのかい。呑気なやつだな」

 呆れられてしまった、だよねー。


「観光してるうちについ、うっかりしちゃって。どっか無いかなー?」

 すっかり気安い俺。

「だったらそこの裏の通りに『薄曇り亭』って宿屋がある。大した宿屋じゃないが、狭い通りにあって目立たないからたぶん空いてるぞ。宿賃も、確かそこそこのはずだ」

「ありがと、助かるわ~」


 本当に助かる。さっさと宿へ行こう。


 ………………


 薄曇り亭は、確かにそこそこでそれなりの宿だった。

 一泊朝食付きで400ゴルダ、ドラ吉も持ち込み可だった。

 原則従魔は繭化するのが普通らしいんだが、爬虫類の類は繭化しなくてもまぁOKと言われた。

 なんかいいな、この融通の効く感じ。他に探すのも面倒だし、しばらくここに泊まって観光しよう。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 翌朝、それなりの朝食を食べ、宿の人に冒険者ギルドの場所を聞いてから出かける。良さげな依頼があればそのまま冒険者になって、王都を楽しむ予定なのだ。

 今のところ期待できなさそうな情報しか無いが、


 適当に観光がてらブラつきながら、冒険者ギルドに到着。意外にもキレイな建物だ。

 お邪魔しまーす。おや、中もキレイ。冒険者の人も人品のまともそうな、おっさんおばさんが多い。荒くれ者の溜まり場なイメージだったのに。


 さて、依頼の紙が掲示板に張られてるイメージを勝手に持ってるが、実際はどうかなっと……あった。

 入口のすぐ横の壁にでっかい掲示板が据え付けてあって、依頼の紙がいくつか貼られている。


 採取依頼も討伐依頼もあるにはあるが……遠い、しかも滅多に見ないのばっかし。

 主な依頼は……何だ?パーティー募集?


「冒険者ギルドに、何か御用でしょうか?」

 後ろから若い女性に声をかけられた、20代半ばくらいかな? ちょい美人なデキる系。この世界の人の年齢は、まだイマイチ見た目で判断しづらい。

 てか、これが噂の王都のギルド職員というヤツか、紺色の制服がバッチリ決まっている。ノバ村にもギルドはあったが、職員はおっさんおばはんで、格好は普段着。制服なんか無かったぞ。


「あ、すいません。実は王都には初めてで、王都の冒険者ギルドではどのような依頼があるのか気になってしまいまして。ホントすいません、用も無いのに。」

 恐縮した田舎者をアピールして、仕方無い感を醸し出す。

「構いませんよ、当ギルドは開かれたギルドですので、一般の方も歓迎いたします。何か興味を持たれるものは、ございましたか?」

 うん、できた嫁……じゃない、できた職員さんだ。じゃあせっかくなんで質問。


「えっと、だったら質問いいですか? あのー、このパーティー募集というのは依頼なんですか?」

 ふつうパーティー募集って、冒険者が仲間を集める時にするんじゃなかったっけ?

「それですか……はい、依頼ですよ。 王都以外の方にはあまり一般的ではないかもしれませんが、ここ王都では貴族の家や大きな商家の親御さんが、成人が近いお子様への教育の一環とレベル上げを兼ねて、冒険者として依頼と旅を経験させることが普通にあるのです。 パーティー募集というのは、そのお子様の為に仲間と教育係を兼ねた冒険者パーティーを探している、という意味ですよ」

 ほう、要は旅という人生経験とパワーレベリングを同時にやるワケか。


 うんうんと頷いていると、職員さんが続けて解説してくれる。

「ですからこのような依頼は、皆様素行に問題の無いベテランの冒険者を募集されますね。中には契約先に気に入られて、そのまま貴族の家や商家に就職される方もいらっしゃるんですよ」

 ふむ、レベルが上限まで上がって、先が見えた冒険者には丁度いい依頼というコトか。 雇う側にとっても家を継ぐ子供に信頼できる使用人を付けてやれるコトにもなる。


「なるほど、すごく良い仕組みですね。知らなかったので、正直驚きました」

 素直に感心して、俺は周囲を見廻し気付いたコトを言う。

「ここ王都に人柄のよさそうな冒険者が多く見えたのは、きっとこのせいだったんですね」

 職員さんは良くぞ気が付いたという笑みで、胸を張って答えてくれる。

 うむ、胸を張っている……。視線がついつい……いかん、溜まってきたかな?


 俺の視線を知ってか知らずか

「そうですね、王都冒険者ギルドの自慢です。 ベテランである程度人品が優れておりませんとパーティー募集の依頼は受けられませんし、この辺りには強い魔物はもちろん魔物そのものも少ないですから、強さが自慢の冒険者はみなさん辺境へ行かれるせいもありますね」

 はきはきと答えてくれる。

「あぁ、なるほど、そういうのもありましたか」

 やっぱ魔物も少ないのか、冒険者も王都ではとりあえず無しだな。

 ポーション作りか魔物退治で小銭稼ぎながら観光のつもりだったんだけど、これが現実かー……。


「とても解りやすかったです、本当にありがとうございました」

「いいえ、お役に立てて良かったです」

 互いにお辞儀をしてから、そういえばと気が付いてついでの質問をする。


「そうだ、ポーションの類を買い取りしてくれる店など知りませんか? 実は薬士でして、旅の道中に作ったものを売りたいんですよ」

 そう職員さんに聞くと

「それでしたら、ここ冒険者ギルドでも買い取りしてますよ。どうぞ、こちらが買い取りカウンターとなります」

 あらま、灯台もと暗し……。


 ………………


 担当はメガネのおっさんだった。

 普通の回復ポーションをメインにいろいろ売ったら、全部で22万と少しのゴルダになった。

 俺、小金持ち。

 うん、道中ポーション作りばっかりやってた甲斐があった。


 ………………


 まとまったお金が入ったので夜に、宿にドラ吉を置いて出かけた。

 その道のプロのおねーさんにお世話になるために。

 昼の間にリサーチしておいたお店へGo! 軍資金は1万ゴルダ。はたして高いか安いか。


 朝帰りしたらドラ吉がジト目で見てきやがった。お前も大人になれば解るよ、うむ。

 つーか、どこでそんな目つき覚えた?


 それにしても……さすが王都、なかなか……。

 まだ朝だけど、余韻に浸って寝ようっと。

会話の描写が下手なのを自覚しつつある今日このごろ…。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 面白いので続けて読ませてもらってます。 [気になる点] 金貨2枚で20万と書かれた数行後に金貨は10000と書いてあるので1桁足りないかも?
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