42話 勝利の宴
「あれ? おかしいな?」
「ぴゅ?」
「イヤ、なんかな、マキツユリ村に置いてきたゴーレムの通信が、途切れちまったんだよ」
「ぴぴゅぃぴ?」
「あぁ、故障かもな。でもそう簡単に故障するような作りじゃないんだけどなー、自己修復機能も付けてあるし……」
どたどたどた
バタバタバタ
なんか街が騒がしいな……こっちは考え事してるってのに。
「帝国軍がマキツユリ村に攻め入ったそうだ」
「守ってた連中は全滅だってよ」
「そもそもあそこに兵なんて居たか?」
「村の連中が義勇兵やってたって」
「あんな村攻めて何の得が……」
「やっぱり鉄じゃないか?」
街の人たちの話し声が伝わってきた。
まぢかよ、こりゃゴーレムも壊されたかな?
あれを壊されたとなると、けっこうな大軍で攻められたか……。
どんだけ壊されたかなー、データの回収ができればいいんだけど。
壊されていても、まだデータが回収できる可能性はある。
鋳つぶされていなければだけどね……。
良質の鉄が材料だからなー。
…………
そろそろ門番にも顔を覚えられてきたので、以前よりもスムーズに街の出入りが出来るようになった。
わざと荷物に酒やツマミを入れておいて『良かったらおひとつどうぞー』なんてやってみたのが良かったのかもしれない。
マキツユリ村の門から少し離れた場所に、俺の作ったゴーレムの残骸はあった。
村を外敵から守る設定にしてあったので、帝国軍を外敵と認識したのであろう……周囲の大地が荒れているのは、恐らく戦闘の跡だ。
つーか、また派手にぶっ壊しやがったなー……せっかく作ったのに。
まだAIが育って無いのに壊すとか、俺に喧嘩売ってんのか?
買うよ? 敵に回っちゃうよ? いいの?
帝国兵が辺りをうろついているので、興味本位の振りをして近づき、データを記録してあるはずの破片をさりげなくくすねる。
よし、バレてない。
さて、どこでデータの解析しようかなー。
マキツユリ村の近くには帝国軍がまだ居座っているし、村の中も帝国軍の兵士でいっぱいだ。
街まで戻るのも面白く無いし、レジスタンスとやらのアジトにでもお邪魔するか。
…………
「こんちはー、お邪魔するよー」
アジトの中には怒号が飛び交っていた。
「だから俺たちだけでも帝国軍に一矢報いるべきだ!」
「そんな事ができる訳がないだろう! 一矢報いるどころか、全滅して犬死にするだけだ!」
「セビャニ王国の残党との合流が先だろう!」
「あんな奴らなんか当てになるものか!」
「今、我々が何もしなかったら、ゲリラだって我々が頼りにならんと判断して二の足を踏みかねんぞ!」
賑やかだけど、俺の邪魔はしなさそうなんでデータの解析に取り組みましょ。
…………
……駄目か。
ここまで壊されちゃったからなー、データの吸い出しすら出来なくなってるさ。
断片でもいいからデータが欲しかったなー……。
ここでちょっと思案。
ふむ、ルボッチ帝国軍か……こっちのやってるコト邪魔されたんだから、こっちも邪魔してもいいよね?
ちょっとだけ介入しようっと。
「ガワーハくん、いるー?」
そう呼びかけると喧噪の中からガワーハくんがやってきた、彼は怒号の中には混じってなかったようだ。
「すいません、支払いはちゃんとしますんでもう少し待って……」
「うんにゃ、そうでなくてさー……帝国軍って何人くらい?」
「一万を少し超えるくらいですが、いったい何を?」
「ちょっとあいつらの邪魔をしてやろうかな、とか思ってさ」
こいつは何を言っているんだ? という顔をされてしまった。
まぁ、そうだよね。
俺はガワーハ君にとある計画を提案した、あくまで提案である。
計画を主導する気は無い。
それをガワーハくんは取り入れて、仲間に説明。
全員の了承を得た計画は、実行されるコトとなった。
…………
「ナミタローさん、予定通り帝国軍はこちらへ向かってきました。一万の兵がほぼ全軍です」
「別に報告しなくてもいいから、これは君たちの計画なんだし」
「ですがその……やっぱり報告はさせて下さい」
理由になってねーよ。
「あとは帝国軍が、あの地点に素直に来てくれるかどうかだね」
「あれだけの数がここまで攻め込むには、あそこを通るしかありません。来るはずです」
計画というのはこうだ。
帝国軍をこのアジトに向かわせるために、意図的にアジトの情報を帝国軍に流す。
その際、既にセビャニ王国のゲリラ3000と合流しつつあるとの誤情報もセットにしておいた。200人そこそこのレジスタンスの数では、大軍が動いてくれないからだ。
1000や2000の兵を叩くのでは意味が無い、今回はできれば1万を超えるその全軍を叩きたいのだ。
アジトの哨戒活動に多くの人員を割き、食事時の炊事の煙を増やすコトによって数が多いと思い込ませ、討伐には全軍が必要と考えさせてなるべく多くの軍をこちらへ向かわせる。
山にあるアジトに攻め入るためには1万という数を展開できる場所が必要だが、そんな場所は限られている。なので進軍コースは読みやすい。
そうやって帝国軍を誘い込む場所、それが【あの地点】だ。
問題は仕掛けの地点に、効率よく軍が密集してくれるかどうか……。
「来ました! 帝国軍です!」
アジトの中にレジスタンスの一人が報告にやってきた。
ガワーハくんの顔に緊張が走る。
「行きましょう」
「どうなるかなー」
「ぴゅいー」
ちなみに計画が不発に終わった時に備えて、ドラ吉はアップを始めていた。
イヤ、お前が参戦すると、必然的に俺も正式に帝国の敵になっちゃうんだけど……。
帝国軍は、予定通りアジトに向かって山を進軍している。
そろそろ予定の地点だ。
地の利を生かして岩をいくつか転がしておく。何も抵抗しないのも不自然なので。
転がした岩の影響もあり、進軍速度が少し落ちて後ろが少しずつ詰まってきた。
よしよし、いい感じに密集してきたな。
現在帝国軍が進軍している地点は、元のアジトがあった場所。
廃坑の真上だ。
そしてその廃坑は、先日俺が根こそぎ鉱物を掘りまくったおかげで隙間だらけになっており、地盤がかなり弱くなっている。
魔法での根こそぎ採掘をしたのはほんの2日前なので、そんな短期間で廃坑の状態が変わっているコトには、帝国軍も気づきようが無いはずだ。
ここまで言えば何をやろうとしているか想像は付くだろう。
廃坑内部には、俺が売ってやった爆裂魔法玉がごっそり仕掛けられている。
それが一斉に爆発したら?
満を持してガワーハくんが指令を出す。
「爆裂魔法玉、発動!」
ズズズズズ!
ゴゴゴゴゴ!
地下からの爆裂音に少し遅れて、山肌が崩れていく。
崩落に巻き込まれて帝国軍も土砂に巻き込まれて落ちていく。
「うわあぁぁぁ!」
「落ちる!」
「助けてくれぇぇ!」
連鎖的に崩れる山肌。
ある者は土砂に埋もれ、ある者は岩に潰される。
阿鼻叫喚の景色はやがて一面の崩れた大地となり、大勢の兵たちの悲鳴は僅かなうめき声になった。
後方にいた兵も、崩れ流れた土砂に巻き込まれていく……。
盾を構える者もいたが、そんな物が役に立つはずも無く崩れる土砂の一部となった。
…………
やっちまったなー、大量殺戮。
直接やったワケではないが、発案したの俺だしなー。
左右の端に展開していた兵が少し残っていたが想定内だったので、そいつらには見えないよう偽装していた大きな岩を転がしてみた。
さほど命中率は高くないはずなのだが、パニックに陥っている兵がボウリングのピンの様に岩に跳ね飛ばされていく。
終わったな。
帝国軍は引き上げざるを得ないだろう。
レジスタンスの連中が大歓声を上げている、今回は勝ったけどこれからが大変だぞー。
こんなやり方、2度と通用しないだろうし。
大歓声が少しずつ静かになり、だんだんとザワ付き始めた。
みんな崩落した地点を見ている……どした?
見ると崩落に巻き込まれ無力化されたはずの帝国軍の中、一人だけがそこに立っていた。
そしてその一人は、こちらへ向かっている……けっこうな速さで。
「あれ、勇者じゃないか?」
「勇者だ!」
「あの中に勇者がいたのか!」
「勇者将軍だ!」
こちらに走ってきたのは勇者、ルボッチ帝国の将軍をしているという勇者であった。
「ふはははは! 面白い! 面白いぞこの村は! ゴーレムといい、今の崩落といい、随分とやってくれる!」
ん? 今何と言った?
「だが不運だったな! この俺がいなけれけば勝利の美酒を味わえたものを! ふはははは! さぁ絶望しろ! 弱者どもめ! お前たちがいくら知恵を絞ろうと無駄だという事を教えてやる!」
一応確認しておこう。
ドラ吉を左肩に乗せたまま、てくてく前に出る。
勇者が近づいてくる。
「邪魔だ! ザコ!」
勇者の槍が俺に向かって突き出された。
がしっ!
目の前に槍先が突き出されたので、つい反射的に掴んでしまった。
ま、いいか。
さぁ、おはなしをしよう。
「なぁ、村に設置しておいたゴーレムを壊したのって、お前か?」
「それがどうした! くそっ! 放せ!」
放せと言われたので放してあげる。じたばたしていた勇者は急に放されたので、無様に転げてしまった。
「何なんだ貴様は! 俺は勇者なんだぞ!」
イマイチ何が言いたいか解らん。
なので、こっちの言いたいコトを優先しよう。
「お前なー、俺がデータを取るために作ったゴーレムをあんな風に壊すとか、少しは迷惑とか考えろよ。おかげでまた最初からやり直しじゃねーか」
「貴様が作ったのか! あのゴーレムは!」
と叫びながら襲って来たので、とりあえずまた槍先を掴んでおく。
危ねーな、服に穴が開いたらどーすんだ。
「そうだよ、あのゴーレムは俺の作品。お前が壊したんだからちゃんと謝れよ」
「ふざけるな! あのゴーレムのおかげで何百という兵に被害が出たんだぞ!」
て、言われてもねー。
「そんなモンお前らが村に攻め込むから悪いんだろうが。村を外敵から守る設定にしてあっただけなんだから、外敵になったお前らが悪い」
むむうー、と必死になって槍を俺の手から取り戻そうとする勇者。
「貴様ー、この俺と帝国を敵に回すと後悔するぞ!」
何か言ってるし。
「この状況で後悔するぞと言われてもなー」
攻めに来た軍は壊滅、勇者将軍は槍先を掴まれて動けない。こんな状況で後悔するぞと言われても、説得力が無いぞ。
「くそっ! なんでこんな……まさか! 貴様も勇者か!」
そうきたか。
「んなワケあるかい。あのな……勇者でなくても、お前より強いヤツはたくさんいるんだぞー」
俺とかドラ吉とか神様とか造物主さんとかな。
「そんな馬鹿な事があるか!」
「実際お前より強いのが目の前にいるだろーが。言っとくけど、俺より強いヤツは俺の知ってる範囲でも二人いるぞ。しかも俺より遥かに強い」
女神様と造物主さんな。
「そんな馬鹿な!」
おい勇者、お前さっきから同じようなコトしか言ってないぞ。
「お前まさか勇者がこの世界で一番強いとか思ってたのか? 言っとくが違うぞ。勇者のお前もこの俺も、ふつうの人間よりは強いって程度だ。上には上がいるんだよ、認めろ」
「そんな事は無い! 俺が最強なんだ!」
「イヤ、だからお前より強いのが目の前にいるだろ? その時点で最強じゃないから」
だんだん困ったちゃんになってきたな……しゃーない、服を犠牲にするか。
手を放して槍を自由にしてやる。
「ほれ、攻撃してみろ。たぶん傷一つ付かんから」
「なっ!……なめるなぁー!」
コンコン槍が当たる、頭に左胸、目まで狙ってきやがった。
でもやっぱ無傷……イヤ、皮膚とか角膜はちょっと傷ついた感はあったけど、瞬時に修復している。
勇者の武器は聖属性で、俺にダメージが通る唯一の属性も聖属性なのだが、この程度なら薄皮一枚程度しかダメージは無い。
でも服が穴だらけに……お財布のダメージのほうがむしろ大きい。
「ほらな、無傷だろ?」
「化け物め!」
それはよく言われる。
もう相手にするのが面倒くさくなってきたけども、確か女神様が魔王を作って勇者を処分するとか言ってたのを思い出したので、俺が殺っちゃうのはマズいかもしんない。
よし、とりあえず服が破れてしまったので、費用の補填だけはしてもらおう。
腰から神木刀タナカムラクンをおもむろに引っ張り出し、突き出された槍をスッパリと切る。
「ばっ、馬鹿な! 俺のガルニャトルバーが!」
へぇ~、あの槍はガルニャトルバーって名前だったんだ。
続けて鎧のフトコロを切り裂き、金袋を木刀の切っ先に引っ掛けて拝借。
「服が穴だらけになっちゃったから、弁償してもらうね」
「くそっ! 貴様覚えていろ!」
そう言って勇者は、柄の真ん中辺で真っ二つに切られた槍を拾って逃げて行った。
あれ? おい……服の代金分だけ貰って、あとのお金は返すつもりだったのに……。
この金袋、けっこうな額が入ってるんだけど……いいか、慰謝料代わりに貰っとこ。
なんかこれじゃ追剥だな。
違うか? 追剥じゃなくて……カツアゲ? イヤ、それもなんか違うか。
まぁ、いいや。
レジスタンスたちが大騒ぎしている。
あー……結局勇者を撃退しちまったコトになったか。
もう帝国には遊びに行きにくくなっちゃったなー……。
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遠征軍が壊滅して勇者が本国へ戻ってしまった帝国軍は完全に浮足立ち、数を水増しして見せただけのレジスタンスを遠目に見た時点でマキツユリ村から逃げ出した。
帝国から解放された村人は喜びを爆発させて、次はモソーハソの街だと息巻く。
村はお祭り騒ぎとなり、公民館を使って宴会となった。
参加? もちろんしますよ?
「やぁ、飲んでますか? ナミタローさん」
満面の笑顔で近づいて来たのは、村長だ。
「あぁ、村長さん。この間はどうも。飲んでますよ」
「聞けばナミタローさんが、物資の都合をつけてくれたとか。いやいや、本当に感謝です」
気のせいかな? 笑顔がうさんくさい。
「大したコトはしてませんて。それよりも村長さん、笑顔が固いですよ。もっと喜びましょうよ」
村長はちょっとギクっとした様子を見せてこう言った。
「やっぱり判りますか。いやぁ、帝国がこのまま引き下がってくれるのか、実は不安で……」
「あー、なるほど。それで笑顔がちょっと不自然だったんですね。無責任な言い方に聞こえるかもしれませんが、きっと大丈夫ですよ。村の人たちの底力を信じましょう」
「ははは、そうですな。とにかく今日はそれを信じて喜ぶとしますよ」
「お互い、そうしましょう」
こんな挨拶を交わした後、俺とドラ吉はちょっと外へ。
実はドルッポさんに、こちらの情勢をできる範囲でいいので伝えて欲しいと言われていたりする。
なのでドラ吉を、伝書竜として飛ばしてやるコトにしたのだ。
ここまでの流れをザックリと手紙にしたためる、もちろん俺が関与したコトは省略した。
なんか仕事で書いた書面みたいな文章になったけど、半分報告書みたいなモンなんだからこんなんでいいよね?
「じゃあドラ吉、コレよろしく」
「ぴゅいー」
手紙を受け取って収納に仕舞うとドラ吉は上空に向かい、ある程度の高度に達すると一気にグルジンベ方面へと飛んで行った。
マッハ6……7かな? あっちの方が美味い物たくさんあるからなー、気合が入ってやがる。
おっ、飛行機雲が見えるな。
ドラ吉を見送っていたら、声を掛けられた。
「ナミタローさん、宴会に参加しに来たのではないのですか?」
「あー、ガワーハくんか。ちょっと風に当たりにね。ガワーハくんは中で飲まないの?」
「僕らは交代で見回りです。帝国軍が密かに隠れている可能性もありますから。奇襲を受けるのはごめんですしね」
「なるほど、そういう可能性もあるか。本当は君たちが主役なのに、ご苦労さんだね」
「これでいいんです、あの人たちが笑顔になるために頑張ったんですから」
立派なモンだ、どっかの偉い人に聞かせてやりたいよ。
再び公民館の中に入ると、また村長がやってきた。
「やぁ、ナミタローさん飲んでますか?……いや、これは……そういえば先ほども同じような挨拶をしましたね。ちょっと酔ったかな」
「いいんじゃないですか? せっかく飲んでるんですから、酔いましょうよ」
「ははは、そうですな。ところでナミタローさんは全然酔われていないようですが、随分とお酒には強いんですな」
「あぁ、実は毒無効のスキルを持っているんで、酔えないんですよ」
「なんと勿体ない! せっかく飲むんですから、酔いましょう!」
「あはは、こりゃ一本取られたなー。そうですね、スキルはオフにして酔うコトにしますよ」
「だったら向こうにいい酒がありますから、私が持ってきましょう」
「イヤイヤ、村長さんに持ってきてもらうなんて……」
「いやいや、せっかく酔うならいい酒を飲まないと。遠慮なさらず、私に付き合うと思って」
そう言って村長さんは酒を取りに行ってしまった。
けっこうフットワーク軽いね、あの村長。
せっかくだから、毒無効のスキルをオフにしておこうっと。
「これこれ、このワインが美味いんですよ。東にあるトトシャ村の産でね、口当たりがいいんだ」
すっかり酒好きの口調になってるぞ、村長さん。
「じゃあ、遠慮なく頂きますね」
口に含んで香りを楽しみながら、ワインを喉に流し込む。
村長の目が、キラッと光ったような気がした。
うむ、確かに口当たりはいいけど……ちょっとピリつくのは何かな? 香辛料が入ってるとかじゃ無いよね?
もう一口……やっぱりちょっとピリ付く。なんだろ?
村長がこっちをじっと見ている。
あー、感想待ちかー。どう言おうかな、たぶんこのワインは村長の好きなワインなんだろうから……。
そこまで考えた時、急に内臓を掴まれるような痛みが走った。
何だ? 何が起きた?
内蔵だけでなく、頭もガンガン痛くなって……息が……苦…………しい……。
一体何が俺に起きている? 何が?……。
「すまない、こうするしかなかったんだ」
誰かの声が聞こえた……。
そうか……これは毒だ。
毒を盛られたか……。
視界が赤い、血を吐いたか目がおかしくなったのか……。
これは……やられた……な。
倒れる感覚を最後に、俺は死んだ。
鼓動を止めたその心臓は、もう二度と動き出すコトは無かった……。




