3話 大いなる加護
灰色の天井だ。
あぁ、俺の新居か。
何があったのか……は、ちゃんと思い出せるな。ちゃんと生きてて良かった。うん。
つーか、酸欠になった割には頭が妙にクリアだ。
「おっ? 目が覚めたか、体調はどうだ? 魔法で完全回復させたから大丈夫だろうが、一応な」
青師匠だ、ずっと付き添ってくれていたのだろうか? なんだかんだで、面倒見の良い人っぽい。
ありがとうございます。内心、若い女の子のほうが良かったなーと思ってはいますが、感謝しております。
「おかげさまで、大丈夫なようです。むしろ頭は、前よりスッキリしてる気がします」
「そうか、ならばよし。 おぉーい! ナミタローの小僧が目を覚ましたぞー!」
声でかいです青師匠、耳に響きまくります。あと小僧は止めて下さい、もう42歳なもので。
黄色師匠と赤師匠も下にいるんだな、気配で判る……あれ? 何で判る?
……そっか、レベル上がったもんなぁ。どれだけ上がったか、楽しみだ。
下からドタドタと師匠達が上がってきた。
「やっと目が覚めたのぅ、良かったのぅ」
「まったく、丸一日も寝ておったのじゃぞ。心配かけるでないのじゃ」
ずっと一人暮らしだったせいかな、心配されるのも悪くないもんだ。相手が爺さんだが。
「おい、そろそろ起きて下へ降りろ。どれだけレベルが上がったか確認するぞ」
「そうじゃのう、確認したら早速魔法の修行なんだのぅ」
「魔法の修行の前にメシじゃがの、丸一日食べておらんのじゃから」
確かに腹減ったなー。 体調も良いし、言う通りにするか。
おっ?起き上がってみたら、体が軽い。というかなんかフワフワして……あれ?なんか体の感覚が……。
ちょっとフラついて壁に手を付く。
体調は良い感じなんだけど、何でだ?
「ほぅほぅ、レベル酔いだのぅ。 これは期待できるのぅ」
「そうか、レベル酔いをするほど上がったか。これは楽しみだ」
あのー、レベル酔いって何ぞ?
俺の困惑顔を見て、黄色師匠が教えてくれた。
「レベル酔いというのはじゃな、急激なレベルというかステータスの上昇によって、前と同じ感覚で体を動かそうとした場合、力が入り過ぎたり早く動き過ぎたりして体が意図しない動作をしてしまうことじゃ。 なぁに心配せんでも、すぐに慣れるから大丈夫じゃ」
「なるほど、そうでしたか」
にしても、歩きにくいなこれは……っとと。バランス取ろうとすると、むしろ行き過ぎてしまうぞ。
「メシの支度はしといてやるのじゃ、慌てずに降りるのじゃぞ」
「ゆっくり降りると良いのぅ、下で待ってるからのぅ」
「先に行っとるぞ、手すりはちゃんと掴めよ」
「そうします。つか普通に降りるのは無理なので」
ゆっくりと、おっかなびっくり階段を下りる。ホントに慣れるのかな、コレ。
………………
おまたせしましたー。
えっちら、おっちら。
まだ足元がおぼつかないので、椅子まで壁づたいに行くのだ。
「よっ、とと」
ようやく椅子までたどり着いた、長い道のりだったぜ……ふぅ。
「それにしても、そうとうな魔力酔いだのぅ。これは相当レベルが上がっておるのぅ」
「よし、早速ステータスを見せろ」
早いよ青師匠、も少し落ち着かせておくれよ。
拒否るワケにもいかんので、ステータス開くか。 自分でも気になるし。
ついでに開示もしとこう。 しないと煩そうだし。
「ステータス、ついでに開示」
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名 前:ナミタロー・ヒラナカ
種 族:人間
称 号:異世界人
職 業:三賢者の弟子
レベル:111841/Max
生命力:17419640
魔 力:23127436
筋 力:1689707
知 力:1825771
頑 健:1511568
敏 捷:1611625
器 用:1627950
精神力:1440874
運 :3261193
スキル:規定数超過により別窓で表示
加 護:造物主の加護
造物主よりお知らせ
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………………
………………
「え~と、勇者でレベル500でしたっけ?」
「そうじゃな」
「勇者のパラメータとかって……」
「1~2万だのぅ」
「なんでこうなったんでしょうねー」
「解らん」
師匠達が固まってる……無理も無い、この世界には本来あり得ない事象だもんなー。
待ってるのもアレなんで、スキルも確認しておこう。 触ればいいのかな?
ぽちっとな。
………………
………………
悲報:師匠の皆様へ残念なお知らせ
えーと、結論から申し上げますと、魔法スキル全般取得済みとなっておりました。
なんか『火属性魔法(極)』とか『聖属性魔法(極)』とか『時属性魔法(極)』とか、おそらく全属性がずらりと並んでおります。 その他にも『魔法威力増大(極)』とか『魔力操作(極)』とか『魔道具製作(極)』とか『魔法創造(極)』とか……。
無効が付いたスキルもたくさんある。『毒無効』とか『精神状態異常無効』とか『物理攻撃無効』とかたくさん……コレ、攻撃の類は全部無効なんじゃ……あ、耐性が1つだけあった、『聖属性攻撃耐性(極)』。
うむ、負けるとしたら神様だけだな、戦う予定は無いけど。
おっと、この大量スキルの原因を見つけたぞ。 『スキル取得(極)』……そういや元々『スキル取得(中)』を持ってたっけ。
こんなスキル持って11万もレベル上げれば、スキルてんこ盛りになるのも無理無いよなー。
『スキル創造(極)』なんてのもあるが、どう使えばいいのか解らん。
まだあるぞ、『武芸百般(極)』……武器スキルとか多すぎるから面倒になってまとめましたー、みたいなスキルだ。
『鑑定(極)』『察知(極)』『直感(極)』『隠密(極)』と、良くあるスキルシリーズもずらり。『音楽』は演奏とかできるスキルかな? 良くあるとか何気におもったけど『(極)』と付いているから本当は凄いスキル群なんだろう、もう感覚がマヒしてるな。
なんか人間としてヤバそうなスキルがあるな、『光合成』とか『全属性ブレス』とか『全状態異常の魔眼』とか『魔物創造』とか……俺に何をしろと。
それに『再生(極)』とか『生命力回復(極)』はまだ良いとして『復活』ってなんぞ? 俺って死んでも生き返るの? このスキルとパラメータだと、どうやっても死にそうにないけど。
俺、人間辞めてないよね……。
一応念のため確認しておく……大丈夫、種族はまだちゃんと人間だ。
気になるスキルに『奇跡』というのがある……新しい宗教の教祖様になれそうだなー。
スキル触ったら説明とか出てきたりは……。
『奇跡:法則を無視した事象を、現象化できる。 内容によって生命力・魔力の消費量が決定する』
うん、もうなんでもアリだな。 アリ倒して増えたスキルだけに。
………………
お、おやじギャグくらいちゃんと言えないと、一人前のおやじとは言えないんだからね!
そうだ!『造物主よりお知らせ』ってなんだろう、パカパカ点滅してるし、き、気になるなぁっと……。
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造物主よりお知らせ
まことに申し訳ございません、私の加護が強すぎてこのような事態となってしまいました。
謹んでお詫び申し上げます。
造物主の加護スキルにつきましては強すぎることが判明いたしましたので、大幅に下方修正致しました。
なお修正後の効果につきましては、おおよそ3倍程度とさせて頂きます。
また取得済みのスキルに奇跡がございますが、少々全能過ぎる性能なので制約を付加させて頂きました。
当方の都合ではございますが、併せてご了承ください。
その他今回の事態に関連致しまして「能力を制限したり調整をしたい」、「現在の能力に見合った魔王を登場させて欲しい」等の御要望がございましたら要相談となりますが別途対応致しますので、造物主までお気軽に御相談下さい。
造物主より
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うん、そうな気はしてたよ……やっぱりお前が原因か! 造物主!
てか造物主の加護ってどんなだっけ?
改めて確認っと。
造物主の加護:造物主が異世界人を召喚した際に付与された加護
レベル20まで、死んでも召喚された場所で復活できる
スキル及びアイテムの効果が上昇する(下方修正済)
これか……下方修正されてるが『スキル及びアイテムの効果が上昇する』……これが原因……。
いったいどれだけ上昇したのか……確か青師匠の説明だと、レベル上限を上げる薬の効果が50前後だったから、俺のレベル上限が人並だとしてざっと計算すると……上昇効果は2000倍以上か。
造物主さん、こういうのは最初から計算しておこうね。 うむ。
あと、奇跡のスキルに制約を付加って……おや、いつの間にかスキルが『奇跡(1日1回のみ使用可)』に変わってる。イヤイヤ、1日1回でも充分反則なスキルだから。せめて月1にしようよ。
……さてそろそろ、師匠達に説明してあげよう。 まだ固まって頭抱えてるし。
………………
「……という事です」
「なるほど、すると加護によってアイテムの効果が上がり過ぎたために、レベルの上限と得た経験値が跳ね上がり」
「レベルを上げるのに都合の良い魔物が大量に襲来して、知力と魔力が大幅に上がったのじゃな」
「そして魔法の威力と範囲をたくさん増やしてたくさん殺したんだのぅ、凄いのぅ」
ええ、凄すぎた結果が今の事態でございます。
あ゛ー、師匠達がパラメータとスキルの窓を見ながら、またタメ息ついてるよ。
「なんかもう教えることが無さそうだのぅ……」
「魔道具作りも極めているんじゃなぁ……」
「これならポーション作りも片手間だな……」
あれ?ひょっとして、タメ息の原因ってそっち?
せっかく弟子ができたのに教えるコトが無くなっちゃったから、それでがっかりしてたり……。
「え~と、いろいろと出来るようにはなりましたけど、俺には経験が絶対的に足りないですし。ほら、どんな時にどんな魔法を使えばいいとか、応用の仕方とか教えていただければなぁ……と。
魔道具やポーションも自分で苦労したことも無く作れるようになってしまったんで、作る時のコツとか注意点とか改良の仕方とか、その他にもほら……アレですよ……」
おかしい、知力は上がってるはずなのに上手くフォローができない……何故だ?
あ、そうか。
パラメータとは人間の言わばハードウェアなんだ。 上手くできないのはソフトウェア、つまり自分自身の考え方や経験がまだまだという事だ。
つまり今の自分はどんな事もできる自分という超便利な道具を、ロクに使いこなせいてないダメユーザーでしかないのだ。
そうだな、やっぱり師匠は必要だ。
「オーキリさん、ゲンモーさん、チャリスさん、改めてお願いします。 俺の師匠になって下さい」
下げる頭に、自然と心が入る。
「俺は素晴らしい能力を得ました、ですがそれだけです。 能力というのは使いこなすことが出来なければ、本物の能力とは言えません。 ですから俺の能力を本物にするために、皆さんの知恵を、経験を俺に教えて下さい。 お願いします、俺には師匠が必要なんです」
三人の顔が花開くように明るくなった。 爺さんだけど。
「なるほど。 わしらが教えれば、お主の能力が本物になるのじゃな」
黄色師匠、顔がニヤけてます。
「そうか、そうだな。 わしらにも教えられることは、あるな」
青師匠、目がウルウルしてますよ。
「やったー!弟子じゃのぅー!」
赤師匠、喜んで頂けて幸いです。
「弟子に……していただけますか!」
「もちろんじゃ!」
「まかせておけぃ!」
「頑張るのじゃー!」
良かった、なんだろう……楽しい。 今の瞬間、この世界に来て良かったと思える。
造物主さん、初めはなんて迷惑な……と思いましたが、ちょっとだけ感謝です。
レベルとスキルてんこ盛りだけど、もうこのままでいいか。
ステータスを開く。
うむ、これが俺のステータスだ。 認めて受け入れて使いこなそう。 この世界を楽しもう。
せっかくの異世界転移なのだから。
おや? 造物主からのメッセージがまた点滅してる。
なるほど、この世界を楽しむ事に決めた俺へのメッセージか。 応援とか激励だな、たぶん。
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造物主から召喚者様へ
この世界を楽しむことに決めて頂き、ありがとうございます。
存分に異世界をお楽しみ下さい。
あ、そうだ、基本自由に楽しんでくれて良いけど、知的生物は1/3以上減らさないでね。
そこまでやると世界観がヤバくなっちゃうから。
んじゃ、良い異世界を~♪
造物主
ps:そうだ、ハーレムって欲しい? なんなら設定しとくけど?
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イヤ知的生物の1/3減らすとか、どんな虐殺者だよ。 やらねーよ。
というか、ハーレムの設定って………………それはちょっと悩むけど。
…………
うん、そういうのは成り行きでいいな……。
とりあえずハーレムはいらない。
スキルは書いてある以外にも、たくさん持ってる設定です。
……ようやくタイトルまでたどり着きました。